220825 峯元先生

ヒアリング:立命館大学 太陽光発電研究所 峯元高志先生 峯元・河野研究室 研究室紹介動画

太陽光発電の経年劣化や温度上昇による効率低下に関するまとめ

  • 太陽光発電の寿命はかなり長いと考えられ、経年劣化による効率低下も20年で1割にすぎない

  • パネルが高温になると発電効率は低下するが、日射が強く当たっているので十分に発電する

  • 太陽光発電が原因の火災は極めて少ない


(前)峯元先生は、よく話題になるペロブスカイト系などの新型薄膜太陽電池の開発や、PVモジュールの屋外評価など、幅広く研究されていらっしゃいます。太陽光発電の専門家のお立場から、太陽光発電の耐久性については、どのようにお考えでしょうか?

峯元)太陽光パネルは、半導体・金属・樹脂など様々な素材から構成され、また屋外の気象の影響を強く受けることから、一概に何年持つ、とはなかなか言えません。パネルの主な故障の原因は、紫外線によりEVA(封止材)が劣化した影響で電極が腐食するものです。とはいえ、多くのメーカーはパネルについて20年、長いものでは40年と長期間の保証をしており、実際に20年以上稼働している物件もあります。立命館大学に設置した京セラ製の太陽光パネルは、これまで一度もパネル洗浄や交換をしていませんが、25年間発電しています。こうした実例からも、太陽光パネルは相当に長寿命といってよいと考えます。


(前)太陽光パネルは、時間がたつと劣化して発電しなくなる、という話も聞きますが。

(峯元)経年劣化により徐々に発電量は減少します。屋外環境の条件で変化するため一概にはいえませんが、1年の劣化率を0.55%や0.4%として保証しているメーカーもあり、それだけ長期の性能に自信があるということでしょう。年間0.5%ずつ低下するとしても、20年間での発電量の低下は10%に過ぎません。実際、立命館大学に設置された太陽光パネルの20年間の低下率は平均0.34%/年でした。

(前)20年も屋外にあっても、発電量の低下は1割もないということですね。夏場に温度が上がると発電しなくなる、という話もよく聞きますが。

(峯元)太陽電池の温度特性は、ざっくりいって、-0.4%/℃。パネルの効率は25℃が基準なので、夏であれば65℃まで上がったとすると16%ほど出力が低下します。つまり、100Wのパネルだと、84Wになります。多少効率が落ちるにしても、発電しないということは全くないので、こういった危惧は数値を用いた理解の不足によるものかなと思います。そもそも、そんなに高温になるということは、日射が強く当たっているということなので、大量に発電することには変わりありません。

(前)夏場に強い日射があたれば、しっかり発電するということですね。太陽光パネルの火災のリスクはいかがでしょう。

(峯元)太陽光パネルは全て難燃性の部品を使っているため、基本的に発火はしません。影がかかった時にホットスポットが発生して加熱される場合もありますが、せいぜいちょっと焦げるかも、程度の話です。消費者安全調査委員会が2017年に発表した資料では、火災事故を含む太陽光発電の事故件数は、2008年03月から2017年11月の約8年間で127件。太陽光発電は193万件も導入されているのですから、事故の現実的な可能性は限りなく小さいことが分かります。また多くはパワコンからの出火で、太陽光パネルからの出火はわずかです。

消費者庁 住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等

(前)東京消防庁のヒアリングでも、太陽光発電関係の火災は、パワコンが焦げた程度というものがほとんどだと伺いました。

(峯元)太陽光発電は世界的に技術開発大きく進んでおり、いまや最も安いエネルギー源になっています。今後ますますの改善と普及が期待されており、今後も技術開発に取り組んでいきます。

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