細菌は,環境に適応して増殖する。金属表面上に細菌が付着した場合,時間経過と共にコロニーが形成し,コロニーの発達によりバイオフィルムが発生する。橋梁や洋上風力発電設備等の海洋環境下にあるインフラには金属が使用されており,金属表面上に発生したバイオフィルムが時間経過と共に発達すると,金属表面から細菌への電子移動に伴う金属酸化や腐食性代謝産物の蓄積が進行し,金属腐食が発生する。
海洋インフラにおける金属腐食の約20%は金属腐食細菌に起因すると推定されており,世界中で年間60兆円以上の経済的損失をもたらしている。本ユニットでは,バイオフィルム形成に作用する細菌を属レベルで解析し,バイオフィルム形成に作用する細菌の簡易評価技術とバイオフィルムの予防技術を創出する。
担当研究テーマ:菌叢解析によるバイオフィルム形成細菌の同定
担当研究テーマ:菌叢解析によるバイオフィルム形成細菌の同定
担当研究テーマ:菌叢解析によるバイオフィルム形成細菌の同定
担当研究テーマ:バイオフィルム形成細菌の簡易同定技術の開発
担当研究テーマ:ファインバブルを利用したバイオフィルムの予防技術の開発
テーマ1:菌叢解析によるバイオフィルム形成細菌の同定
海洋インフラに発生したバイオフィルムを対象に,菌叢解析を実施する。また,種々のバイオフィルムを用いて網羅的に解析することで,バイオフィルムに含まれる細菌の優占種やその傾向を属レベルで明らかにする。さらに,バイオフィルム形成に必要な遺伝子群が優占種のゲノム内に含まれるか解析し,バイオフィルム形成の原因となる細菌種を選定する。
テーマ2:バイオフィルム形成細菌の簡易同定技術の開発
菌叢解析では,細菌群から抽出したゲノムを鋳型に利用してハウスキーピング遺伝子を増幅し,増幅した遺伝子配列の比較解析に基づいて,細菌の種類を明らかにする。本法は,精度が高いことから広範に利用されているが,操作が煩雑かつ解析時間が長いため,大量のサンプルを解析する場合には不適切である。そこで,テーマ1で選定したバイオフィルム形成細菌を対象とした簡易同定技術を開発する。本技術では,平板培養法を利用して,コロニー形成の有無やパターンにより,バイオフィルム形成細菌の有無を判定することを目的とする。また,簡易同定技術の確立により,複数の海洋インフラの保全を目的としたモニタリングを可能にする。
テーマ3:ファインバブルを利用したバイオフィルムの予防技術の開発
バイオフィルムは,阻害剤等の薬品を添加することにより,形成を阻害できる。但し,生態系に影響を与えるため,海洋環境中に形成されたバイオフィルムに対しては薬品を添加できない。そこで,平均滞留時間や分散性の向上等の特性を示し,気泡を微細化することで発生できるファインバブルを用いて,バイオフィルムの予防技術を開発する。本技術の開発では,オゾン等の殺菌能力を有する気体を利用して,金属表面へのバイオフィルム形成細菌の付着や生育を阻害できるか検討する。
<問合せ先> TEL : 047-474-2853, e-mail : akita.hironaga@nihon-u.ac.jp