ファインバブルを用いたグリーンイノベーション技術の構築
地球温暖化とCO2濃度の増加,人口増加に伴う水不足,資源枯渇,土壌汚染など,我々を取り巻く地球環境問題は年々深刻化している.本ユニットでは,これらの地球環境問題の解決に繋がる低炭素化・循環型社会の構築を目指し,ファインバブルを用いた革新的技術の創出を行う.
気泡のマイクロ・ナノサイズへの微細化は,i) 気−液界面積の増大にともなう物質移動・ガス吸収の促進,ii) 浮力の減少にともなう気泡の平均滞留時間の増加,iii) 気泡の負の表面電位による気−液界面での相互作用などの現象・効果をもたらす.結果として,表面電位を有するファインバブルが長時間にわたって液相内に留まることで,微細な気-液界面近傍に創成される局所的な濃度不均一場を様々な環境処理技術に積極的に利活用できる.さらに,ファインバブルの原料ガス種を空気から活性ガス(CO2,NH3,またはO3)に変化させる,またはファインバブルが滞留する液相に外部エネルギー(マイクロ波や超音波)を付与することで微細な気−液界面近傍において特異的な物質移動や反応現象を生じさせることも可能となる.
ユニットメンバー紹介
土木工学専攻M2(土木工学科卒) 水野 翔太
建築工学専攻M2(建築工学科卒) 神原 一翔
建築工学専攻M2(建築工学科卒) 野村 悠斗
応用分子化学専攻M2(環境安全工学科卒) 藤井 太喜
応用分子化学専攻M0(応用分子化学科4年) 黒崎 智弘
松本 真和(教授・博士(工学),応用分子化学専攻)
専門分野:化学工学,反応工学,晶析工学
研究テーマ:海水溶存資源の回収と結晶材料への転換、気-液界面反応場を用いた晶析技術の開発、酸素種ラジカルの生成促進と難分解性有機物の分解
亀井 真之介(准教授・博士(工学),応用分子化学専攻)
専門分野:材料化学
研究テーマ:サステイナブル材料の設計と合成に関する研究,海水資源を原料とした無機塩の回収と高品位化,超音波照射を用いた無機化合物の新規合成
高橋 岩仁(教授・博士(工学),土木工学専攻)
専門分野:環境工学
研究テーマ:高塩分濃度対応の活性汚泥法に関する研究、竹資材を用いた緑化基盤材の検討、下水道資源の有効活用技術に関する研究
下村 修一(教授・博士(工学),建築工学専攻)
専門分野:地盤工学
研究テーマ:エネルギーの釣合に基づく地盤の液状化評価,拡底杭の群杭効果,ソイルセメント壁の鉛直支持力,杭の水平抵抗評価
テーマの紹介
テーマ1: ファインバブルを用いた資源回収と結晶材料合成
テーマ1では,カルシウムやマグネシウムが高濃度で溶存する海水,または廃コンクリートや鉄鋼スラグのカルシウム・マグネシウム抽出液にCO2ガスを微細化して導入することで,温室効果ガスであるCO2を炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,およびドロマイトなどの結晶材料として回収する.さらに,結晶材料の品質(組成,結晶構造,粒子サイズ,純度)の制御により高機能化・高品位化を図ることで,効率的なCO2有効利用プロセスを構築する.また,富栄養化を引き起こすリンを含む排水にNH3ガスのファインバブルを供給し,リン回収とリン酸塩(リン酸マグネシウムアンモニウム)の製造を同時に行うことでリン回収資源化システムを開発する.
テーマ2: ファインバブルを用いた排水処理システムの開発
テーマ2では,O2のファインバブルを含油排水の活性汚泥処理に適用し,好気性微生物の活性化による水処理プロセスの高効率化を図る.また,O2を放電処理したO3ガスをファインバブルとして導入し,溶解したO3を効率的に酸素種ラジカル(OH・など)に転換することで,環境水中の残留性有機汚染物質(POPs)の迅速分解法を開発する.さらに,これらの手法の併用により高効率排水処理システムの構築を目指す.
テーマ3: ファインバブルを用いた界面活性剤フリーでのセメント混合地盤の品質向上
テーマ3では,界面活性剤無添加で軟弱な建設地盤をセメントで固化改良することを目的する.負の表面電位を有するファインバブルを界面活性剤の代替としてセメントミルク中に導入し,正の電荷を有する粘土粒子とセメントとの凝集抑制にともなう均質化によってセメント系混合地盤改良体の品質向上を図ることで,低環境負荷型の新規な地盤改良工法を確立する.
最終的には,上述の技術を複合化し,大気,水,土壌を汚染する化学物質の排出量や薬剤使用量の削減,廃棄資源の再利用,および材料の高機能化により環境負荷低減に貢献できるグリーンイノベーションプロセスの構築を目指す.
ユニット学生の活躍
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