–– 春風芽吹希の本棚 ––

作品一覧 Story List

長編小説  Novels

紹介文

 僕はずっと自分の存在価値を見出せず、味気ない人生を送っていました。
 気の合う幼馴染と学校に通い、適当に授業をこなして帰ってくる。
 家では母と淡白な会話を交わしながら食事をし、夜が更けてくるのとともにベッドに入る。
 そうして毎日同じ作業を繰り返していました。
 でも、彼女との出会いを境に、僕の生活は一変しました。
 そしてその変化は現在だけでなく、無駄だと思っていた過去にもおよび、僕は彼女から人生においてかけがえのない宝物を受け取りました。

 この話はそんな、僕の人生を変えた高校二年の夏の話です

紹介文

 高校最後の夏休みを終えた蝶野唯慈(いちか)は、ある日の放課後、幼馴染の綾野瑞葉(みずは)に連れられ、彼女が所属している美術部の顧問のところへ行くことになる。
 顧問は今年高校を卒業する二人に最後の課題と称して、「嫌いなものを一番美しく描く」というお題を言い渡した。
 受験などがあるため課題の提出は任意となっていたが、唯慈は自身の進路よりその課題の絵を描くことを選び、過去を辿って嫌いなものを探しはじめる。
 そして、その回顧と現実の中で多くのことに気づかされ、これまで目を背けていた過去と将来に落とし前を付けることを決心する。

これは彼らの後悔と自立の物語。

現在、執筆中。企画書、イメージボード、写真のみ掲載。

編小説  Short Novels

「観測史上最長となる記録的な干ばつにより、一部の地域では未だ断水が続いています」

 パソコンの画面の向こう側で、好みのキャスターが今日も同じような原稿を読み上げている。

『僕は今日までの十八年間、ずっと真面目な人生を送ってきた』

 東京の街が寝静まった午前二時、マンションの屋上。友人に連れられてこの場所へ来た私は、数日ぶりのたばこに火をつけ、煙を吐きながら隣にいる彼にそう答えた。

  ある国のある場所に作られた研究室。その研究室は国、軍などの最高責任者たちによって秘密裏に作られた。その存在は他国の人間はおろか、国民にさえも知られておらず、その場所を知っているのはさらにほんの一握りの人間だけだった。

その人類大半に感知されていない研究室が悲劇の始まりの場所だった。

 木枯らしが吹く11月の日。髭のおじいさんと禿のおじいさんは今日もその場所にいた。髭はいつもと変わらない服装だが、禿はさすがに寒いようでコートを一番上に羽織っている。僕はそんな二人を友人の部屋からぼんやりと見ていた。

 神様の救いをうけた。
 そう言いはる彼を現実に引き戻せるほど、俺には知識の手持ちがなかった。

情景描写短編小説  Scene description Short Novels

 彼女の父は昔から寡黙な人物だった。彼女が生まれるよりずっと前、彼自身がまだ毛も生えそろっていないような頃から言葉を口にすることはすくなく、わずかな動作だけで他人との会話を成り立たせていた。

 早朝、まだ弱い朝日の目を覚ますと、そこには漆喰の白い天井があった。体を起こすと、さっきまで寝ていたベッドのクッションがたわみ、彼女をそっと包み込もうとする。身体はその誘惑に少なからず心を惹かれたが、一方、彼女の意識の方はそのさそいにはのらず、別のところへ心を向けていた。