シーズ（Shīzǐ）

【ラブシック】

恋人が浮気していた。問い詰めたら、包丁で刺された。アンタのせいだって。寂しかったんだって。首と胸とお腹に穴が空いて、温かいものが流れ出していく。泣いている恋人を抱きしめるのは自分じゃなくて、浮気相手の――。

『白痴の女王』

白痴の女王を守る王宮騎士、それがあなただった。女王を守って死ぬと、すでに覚悟していた。たとえ、女王が「あなただけでも逃げなさい」と諭しても。あなたは笑って、それを断るのだった。

【事故現場】
震える手で119を押す。通話が繋がった。あなたは必至で伝える。救急です。交通事故です。場所は――。被害者は13歳の女の子です。トラックに轢かれて、意識がありません。血が流れて、息をしていなくて。心臓マッサージ……AED……でも、ここには私一人しかいないんです！

『予言』
オペラハウス46にて、ある少女が予言した。「2154年、自我崩壊弾が13発、この地に落ちる」「2155年、130発の核が発射され、その内の1発がこの地に落ちる」国の科学者達は予言を信じ、爆弾と核から人々を守るためシェルターを作った。そして、シェルターを守るために『湖底の要塞』と『白痴の女王』が作られた。

『偽装工作』
白痴の女王に似せて作った人形の首を、コクヨウが刎ねた。そのコクヨウを私が刺して、私はウタガイに斬られた。私達は死んだと、相打ちになったと、誰もが思い込むだろう。これでいい。これで……白痴の女王は誰にも見つからない。

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『願い』

本当は残ろうかと少し思っていたけれど。約束をしたから、本当のシーズに託します。 『白痴の女王』が貴方を守るように、貴方もまた『白痴の女王』を守る。それが私のやりたかったこと。 どんな時も『白痴の女王』の傍に居ること。それが私のやりたかったこと。 はやく貴方が目を覚ましますように。

『お土産』

被験体の子供達に問いかけた。何か欲しいものはないか、と。白痴の女王として活動が始まる前の、最後の休暇だから、と。「猫！　猫さわりたい」「ぬいぐるみでもいいよ」「図鑑で見たアレ」「ふわふわで、金色で」「尻尾がにょろっとしてる」他の子達も賛成らしい。でも、それって猫じゃなくてライオンじゃないかな？

【愛情表現】

恋人がひとを殺した。殺されたのは、自分に付き纏っていたストーカーだった。仕方ないから恋人と一緒に死体を解体する。肉をミキサーにかけて、骨は――。全てを綺麗に片づけて、最後に恋人とキスをした。私が代わりに警察に捕まるから、君は上手く逃げてね？