ソン・ハローチョとは?

メキシコ ベラクルス州の音楽 ソン・ハローチョ

ソン・ハローチョは、メキシコ 南東部ベラクルス州、より正確に言えば、ベラクルスを中心とする近郊地域(ソタベント地方)にルーツをもつ、民衆音楽である。

メキシコ湾岸に位置するベラクルス州 (出典: Wikipedia)

ソン・ハローチョは「ベラクルスのうた・音楽」と訳せる。ソンは「うた」という意味で、ソン・クバーノやソン・ノルテーニョの「ソン」と同様の概念。ハローチョは「ベラクルスの」 という意味。「ベラクルスの」という意味を表す"Veracruzano"という形容詞があるが、このソン・ハローチョやこれに関連するものでは"Jarocho"という形容詞が使われる。

歴史

16世紀以来、先住民・ヨーロッパ・アフリカの人々の文化的交流・混淆を通して、ソン・ハローチョはかたちづくられた。 (「ソン・ハローチョ」という名前で呼ばれるようになったのは19世紀〜20世紀以降の独立・革命の時期である)


以来ベラクルス州を中心にこの音楽は人々の娯楽として伝承されていたが、20世紀に入り、ラジオや映画がこの地で普及しはじめると、ソン・ハローチョは人々の娯楽の座を追われ、20世紀半ばにはこの伝統は一度廃れてしまった。


しかし1970年前後、ヒルベルト・グティエレス率いるモノ・ブランコ(Mono blanco)というグループを中心に、ソン・ハローチョ文化の再興運動がはじまる。この運動は、この音楽を象徴する楽器であるハラナから、「ハラネロ運動(Movimiento jaranero」と呼ばれている。この運動は以降現在まで続いており、「ソン・ハローチョの伝統を尊重すること」「ファンダンゴを演奏活動の中心にすること」「文化を後代に伝承すること」がおおよその方針となっている。 (この運動の詳細は → 制作物 の 《Hilo Transparente》に描かれています!)

ソン・ハローチョの現在

ソン・ハローチョは現在、ベラクルスだけではなく、メキシコシティや、ロス・アンゼルスやニューヨークなどのアメリカ合衆国諸都市、カナダなど、世界各地で演奏されている。この音楽の広がりには、ファンダンゴという宴の場が決定的に重要である。

モノ・ブランコやソン・デ・マデラ、ロス・コホリーテスなどのソン・ハローチョ演奏グループは、メキシコ国外でも精力的に演奏活動・ワークショップを行っており、この草の根の文化実践活動は、日々その生命力を増していると言える。

楽器

小型伴奏ギターのハラナや、メロディ楽器のレキント、民族ハープのアルパ、パンデロ(タンバリン)などが用いられる。 詳しくは→ ソン・ハローチョの楽器