Award
ELSIファーストロジック・アストロバイオロジーアワード
KAC2021ではe-Posterの優秀発表者に対して、地球生命研究所(ELSI)でのリサーチインターンの機会を提供します。ELSIは日本のアストロバイオロジー研究における一大拠点であり、研究の国際交流においてもハブとしての役割を果たしています。ELSIやインターンでの研究内容についてスタッフに寄稿して頂いたので、ここでアワードへのモチベーションを高めてe-Poster制作に臨みましょう!
ELSIってどんな研究所?
Earth-life Science Institute (ELSI)は、東京工業大学大岡山キャンパス内にある研究所です。ELSIはELSI-1とELSI-2の二棟で構成されており、様々な分野の研究設備やミーティングスペースを備えている研究施設です。ELSIは、主にアストロバイオロジーに関する研究が行われています。惑星の形成から初期生命の誕生、現在の生命に至るまでの進化、そして生命の宇宙への進出までを一つの施設で研究している珍しい研究所です。そのため、地球化学者が生命科学者とディスカッションや研究を行うなど、異分野融合が日常的に行われていることも特徴です。
多種多様な研究者たち
ELSIには、分野の異なる研究者や学生が多く所属しています。藤島研究グループのように合成生物学を利用した生命の起源に関する研究を行っている人もいれば、惑星形成に関わる人、水惑星おけるハビタビリティを研究している人、極限環境に住むウイルスについて研究している人など、多種多様です。また、国際色も非常に豊かです。ELSIでは様々な国から研究者が集まっており、主に英語でディスカッションが行われています。
ELSIでは40以上の国と地域の研究所と研究者の協力により研究活動が行われています。また、異分野交流のため、定期的にセミナーやシンポジウムが行われています。
藤島グループで行っている研究と実験設備
藤島研究グループでは、地球生命研究所の藤島皓介准教授が中心となって研究を行っています。藤島先生は、宇宙生物学と合成生物学が専門です。合成生物学とは、生命の構成要素(DNAやRNA、タンパク質など)を自在に操って生命の仕組みを理解する学問です。藤島先生は合成生物学の手法を使って、様々な宇宙生物学の問題に取り組まれています。例えばこれまで国内外の様々な研究者や学生と連携しながら、セントラルドグマがどのように誕生したのか、他の惑星で光合成が起こるとしたらどのような色素か、土星の衛星エンセラダスでペプチドは合成されるか、などの研究を行ってこられました。実際の実験では、DNA配列を大量に解読できる次世代シーケンサーや、酸素のない環境で実験を行う嫌気チャンバーなどの設備を用いています。
嫌気チャンバー
グローブボックスとも呼ばれます。嫌気的とは酸素が無いことを意味します。研究対象の物質や化学反応を酸素の影響無しに評価したい時には、このチャンバーを用いて酸素を含む大気から隔離して実験を行います。
次世代シーケンサー
シーケンサーは核酸の塩基配列を明らかにするためのツールです。得られた配列をデータベースで検索することで、微生物の種同定などを行います。近年開発された次世代シーケンサー(NGS)はそれの改良版で、大量の配列を短時間で読むことができ、これによりメタゲノム解析が実現されます。
藤島さんがこれまで関わってきた研究例
- 合成生物学を用いた人工的な原始タンパク質の合成と機能
・Reconstruction of cysteine biosynthesis using engineered cysteine-free enzymes
(システインを含まない酵素を用いたシステイン生合成経路の再構築)
(PUREシステム(無細胞タンパク質合成系)を用いたmRNAとcDNAディスプレイを用いたエピトープ構造の高速検出)
・CoLiDe: Combinational Library Design tool for probing protein sequence space
(タンパク質の配列空間を明らかにするための組み合わせライブラリ設計ツールCoLiDeの開発)
- 地球及び他天体環境における化学進化実験
・Peptide Synthesis under the Alkaline Hydrothermal Conditions on Enceladus
(土星第二衛星エンセラダスのアルカリ熱水条件下におけるペプチド合成)
・Origin of the Reductive Tricarboxylic Acid (rTCA) Cycle-Type CO2 Fixation: A Perspective
(還元的TCA回路(クエン酸回路)による二酸化炭素固定の起源)
- 地球外生命探査に向けた超高速衝突実験と有機物分析
(キャピラリー電気泳動とモノリス型キャピラリー電気クロマトグラフィーによる、宇宙生物学に関連する有機物分子の非破壊的分離)
- 極限環境微生物のスクリーニングと生物種同定
(異なるマンガン濃度の砂漠環境から得られた、極めて高度な短波長紫外線照射に対する耐性を有する微生物)
(過去や未来の火星類似環境であるBig Soda Lake(NV,USA)から分離された、過塩素酸耐性を有する好塩性微生物)
これら以外のテーマであっても、受賞者の興味に応じて柔軟に対応します!