アストロバイオロジー(宇宙生物学)とは地球だけではなく、宇宙における普遍的な生命を対象とした超横断的学問分野です。具体的には地球や宇宙における生命の起源、地球の極限環境や地球以外の天体における生命の存在可能性、地球生命の宇宙進出に向けた技術開発などが含まれます。アストロバイオロジーはその学際的な性質から生物学だけではなく、天文学、地球惑星科学、合成生物学、無機・有機化学、物理学、工学など、様々な分野の協働・共創を必要とします。現在では複数の異なる分野の研究グループが協力し、アストロバイオロジーに関連する研究を推し進める例も多くあります。
慶應アストロバイオロジーキャンプ(KAC)とは、アストロバイオロジーに興味を持つ高校生から大学院生までの学生を対象としたイベントです。様々な分野の研究者から最先端の研究に関するお話を聞き、同年代の仲間と最新のアストロバイオロジーについて議論できる、密度の濃いイベントとなっています。
詳しくはプログラム をご覧ください。
はじめまして。慶應アストロバイオロジーキャンプ2026のオーガナイザーを務める角南です。
現在、東北大学大学院で隕石に含まれる有機物について研究を行っています。高校生の頃、偶然手に取った生命起源に関する一冊の本との出会いが、アストロバイオロジーという学問分野に興味を持つきっかけでした。教科書を書き換えられる興味深い研究が存在することを知り、「自分も心から好奇心をかき立てられる研究に挑戦してみたい」と考えるようになりました。
「私たちはどこから来て、どこへ向かうのか。」「この広い宇宙において、私たちは孤立した存在なのか。」こうした根源的な問いは、アリストテレスの時代から今日まで多くの人々を魅了し続け、知れば知るほど奥深さを実感させます。そして、これまでの研究の積み重ねによって徐々に解き解かれつつあります。
KAC2024および2025では運営として携わる中で、各分野の最前線で活躍される講師の方々から多くを学び、同時に参加者の皆さんの自由で柔軟な発想、科学に対する熱意に大いに刺激を受けてきました。このプログラムは、多様な背景や関心を持つ学生が出会い、語り合い、学び合うことで互いに新しい視点を得ることのできる場です。参加を通して得られる出会いや発見が、次の挑戦へと繋がることを心から願っています。
2016年に第1回が開催されたKACは、今年度で記念すべき第10回を迎えます。かつての参加者が運営スタッフとして戻ってきたり、当時の講師の方の研究室に所属して研究の道に進んだりと嬉しい繋がりが生まれてきています。豊かな自然と文化に恵まれた鶴岡の地で、好奇心の赴くままに考え語り合えることもKACの魅力の一つです。
今年もKACをどうぞよろしくお願いいたします。3日間、アストロバイオロジーを全力で楽しみましょう!
分野、経験を問わず、皆さんのご参加を心よりお待ちしています。
共催:鶴岡市(申請予定)
後援:山形県(申請予定)
日時:2026年3月17日 (火) ~ 3月19日 (木)
場所:慶應義塾大学先端生命科学研究所 (山形県鶴岡市)詳細はこちら
対象:高校生・高専生・大学生・修士課程学生 (現時点で高校生以上の方を対象とします)
募集人数:25名程度
募集開始 : 2025年11月25日(火)
募集締切 : 2026年1月29日(木)23:59
合格発表:2026年2月中旬(予定)
参加費:詳細が決定し次第ご案内致します。
なお以下が昨年の情報となりますのでご参照ください。
30,000円程度 (含:宿泊費、食費、プログラム費)
*宿泊場所は、会場から徒歩数分のSHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSEとなります。https://suiden-terrasse.com/
※今年は、ご参加者の方全員がSHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSEにご宿泊いただけるように主催者側で手配いたします。
*自宅から開催地までの交通費は別途自己負担となります。
*上記金額は今後変動する可能性があります。
プログラム内容 : 講師の先生によるレクチャー、グループワーク、成果発表会
全日程の出席および所定の発表要件と課題を満たすことで、本大会公認の修了証 (サーティフィケート)を発行します。
皆様のご応募をお待ちしております!
いろいろ故あって、宇宙論、地球物理学、天体物理学、系外惑星学と専門を変え、代表を務めたGCOE「地球から地球たちへ」プロジェクトでは進化生物学やゲノム科学の人たちと一緒にやり、2022年までの10年間副所長を務めた「地球生命研究所 (ELSI)」では生化学、合成生物学、複雑系科学の人たちと一緒にやってきました。
その中で失敗しながら痛感したことは、アストロバイオロジーのような分野融合・学際分野の研究を進めるときには、「礼儀正しく領空侵犯をする」ことが重要ということです。
相手が歩み寄ってきてくれることを待っていては何も始まらないので、まずは相手側の領域に自ら踏み込むことが必要です。一方で、相手分野の様式やしきたりは尊重した上で自分独自の新規性を持ち込まないと、交流は生まれないと思いました。言うは易く行なうは難しですが。
でもまあ若い人たちは、まずは戦略なんか立てないで、自由に興味持ったことに遠慮なしに突き進んでください。少々乱暴でもいいです。同時に自分なりの唯一無二の専門性やスキルも磨いていってください。丸腰では行き詰まります。ある程度、自分の専門やスキルが確立してきたら、僕の言葉(失敗談?)を思い出してくれたらいいなと思います。
生命の起原および進化学会 会長
東京科学大学地球生命研究所・Westlake University 教授
井田 茂
写真:
名前:黒音(くろのん)
種族:ネコ族 イエネコ
武器:ネコの爪
ゴーギャンの絵で『我々はどこからきたのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』という作品があります。
・・・などと言い出すと、「天文学者はいつもこの話を持ってきて・・・」と、ある先生に突っ込まれそうですが、私たちの材料は宇宙に存在することはわかっています。
私たちの体の中の6-7割を占める水の材料である酸素は、恒星の中で合成され宇宙空間に撒き散らされたもので、水素に至ってはビッグバンの時にできたものです。
私たちが存在するこの地球を作るための惑星形成理論も、完璧ではないにしろ、大枠は分かりつつあります。
そして太陽系以外にも、系外惑星はかなりたくさんあることもわかってきました。
さらにこの宇宙の将来も、天文学をある程度学ぶと最終的な将来も大雑把にはわかるようになります。
問題なのは、まだ惑星形成から生命に至る細かいところがよくわからない。という点です。
天文学は、物理学はもちろん、星間分子など化学とも近い分野ですが、生物学とはギャップのある分野でした。
そのため、その学際分野である「アストロバイオロジー」は、天文学や生物学の勉強をしていく過程において、それらの接点が見えにくく、「私は何者か どこへ向かうのか」がわからなくなることがあります。
でも安心してください。誰も知らないことを研究するのだからわからなくて当然です。
古い絵の解釈なんか(失礼)よりよっぽど難解で難しいテーマです。
迷った時、変に立ち止まって「正解はどっちか」「意味があるものはどれか」などと気にするくらいなら、
興味のある方に進んでみてください。正解・不正解に関わらず、その経験は全て自分の血となり肉となります。
むしろ、失敗した経験のほうが、自分をより大きく成長させてくれます。そうして、まずは自分の得意な武器を見つけていってください。
その上で、さまざまな武器を身につけた研究者たちが、協力して道を切り開いていくのが、このアストロバイオロジーという分野です。
ぜひ、みなさんの力もあわせて「宇宙における生命の謎」を切り拓いていってください。
アストロバイオロジーセンターの何でも屋
日下部 展彦
先端アストロバイオロジープロジェクト公式X
大会に関する情報や当日の様子は #KAC2026 でお知らせします。