災害対策を考えるための初期段階として、私たちが住む地域の各種の災害リスクを可視化することは、合意形成を行うために重要であると考えます。そこで、国土交通省の、ハザードマップポータルサイトの令和7年5月14日時点の、洪水・内水、及び、土砂災害の想定区域分布データを、宗像市近辺の航空写真にマッピングしました、即ち、ハザードマップポータルサイトを加工して図を作成しました。(この表記は、国土交通省の利用規約に従った注釈です。詳細なデータが必要な場合は、ハザードマップポータルサイトをご覧下さい。)
宗像全体で見ると、JR赤間駅を中心とする釣川沿いに内水浸水と洪水浸水の想定地区が集中していることが分かります。宗像市では昨年、令和6年7月1日に、7月としては観測史上第一位の65.5mm/hの豪雨を記録しましたが、その際に赤間駅周辺にも道路の冠水や、住居の浸水が発生しました。吉武地区は釣川沿いではあるものの上流であり被害想定地区は狭いと言えます。しかし、吉武地区の釣川沿いに居住区が集中しているため、内水浸水と土砂災害の検討が必要だと考えます。(洪水浸水の想定地区は吉武地区にはありません。)
吉武地区近隣の航空写真に、内水浸水、土砂災害の想定区域のデータ、及び、避難所の場所データをマッピングしました。上の図と同様に、国土交通省のデータを用いました。
右図に見られるように、吉武地区が浸水被害があった場合、旧国道3号線沿線も既に浸水で使えなくなっている可能性が高いです。よって、3号線を使って緊急車両が通行できる可能性はありますが、宮田や浅野団地入り口辺りも浸水想定区域になっており、吉武地区から見ると、その向こうの野坂に、救急病院の蜂須賀病院があるため、緊急車両の通行の障害になり得ます。
さらに、吉武地区の城南ヶ丘と避難所を含む地域を拡大して、国土交通省の内水浸水、土砂災害の想定区域のデータをマッピングし、城南ヶ丘から避難所に避難しうる避難経路3案を記入し、特徴を比較しました。
現状では、吉武地区における避難所は、宗像市から、吉武地区コミュニティセンターが優先的な避難所、吉武小学校が二次的な避難所に指定されています。しかし、城南ヶ丘側から吉武地区コミュニティセンターに避難する場合、避難経路案Aを含むどのような経路でも内水浸水の危険がある釣川沿いを歩かなければなりません。また、避難経路案B、Cを用いて避難所に行く場合、経路途中に、土砂災害が想定される区域が見られます。よって、避難計画では、複数の経路を想定して訓練を行うこと、及び、IT技術などを用いた、避難前の避難経路の安全状況を確認する方法の検討が必要だと思われます。
また、内水浸水を想定する場合、吉武地区よりも西の赤間や東郷地区は、吉武と同等かそれ以上の浸水が想定されます。よって、緊急車両等が使用する釣川沿いの道路交通が使えなくなることを想定しなければなりません。しかし、吉武地区は赤間や東郷地区よりも安全という訳ではなく、近年の短時間の局所的な降水量が膨大になるゲリラ豪雨では、吉武地区も同様に危険であると考えて警戒すべきと考えます。