9. ルンバ・チャチャチャ のカウント
9. ルンバ・チャチャチャ のカウント
ルンバ・チャチャチャ の音外しは 語りつくせない永遠の課題です。音外しの
パターンは 言わずと知れた on1 ルンバ( カウント 1 でステップを踏む)です。
ルンバの「裏」と「表」
本来ルンバは、カウント2で踏み出す on2 のダンス。つまり、音楽的には“裏”
から始まる構造を持っています。ところが現実には、多くの人が on1(カウン
ト1)で踏み出してしまう。それを見て「裏で踊ってる!」との声もあります
が・・・ちょっと待った!! それは早計です。ルンバはもともと裏から始ま
るよう設計されたダンス。つまり、ルンバそのものが裏構造なのです。したが
って、on1 で踊る人は「裏で踊っている」のではなく、表で踊っているという
わけ。ルンバ on2 の“ズレ感”こそが、あの独特の「ため」や「色気」を生み出
す ── まるで、恋の駆け引きのような絶妙な間合いです。
ほとんどのポピュラー音楽は4/4拍子。その中でも1拍目(カウント1)は最強
の強拍です。私たちは子どもの頃からこの「1・2・3・4」に慣れ親しみ、音楽
を聴くと自然に“1”で手拍子をしたくなる DNAを持っています。ところがルンバ
のステップカウントは「2・3・4・1」。“1”ではステップを踏まず、体重移動の
完了や次への“溜め”に使います。……でも、頭では分かっていても、体は正直
「1」の強拍が鳴ると、つい足が出てしまうのです。これこそ、まさに音楽の
引力。“理性は 2 を求め、身体は1を欲する”――この葛藤こそが、ルンバ音外し
問題の核心でしょう。
多くの人が陥るのは、ステップカウント「2・3・4・1」とカウントしてしまう
こと。これをやると 頭の中で、音楽の「1・2・3・4」に上書きしてしまうので
す。音楽の1を2と錯覚してしまい、自分は2から始めてる! 完璧!」と思って
しまう。強拍からステップしているから 自然に動ける この落とし穴に落ちて
しまうと もう そこらか 抜け出るのは 不可能です。しかも驚くべきことに、指
導者側が「2・3・4・1」とカウントしているケースも。さらには、YouTubeで
プロが「2・3・4・」と “ワン抜き”カウントの動画も見かけます。……お願い
です、せめて「ワン」だけは言わせてください。それがルンバの命なんです。
ルンバの魅力は、単なるステップではありません。男女の駆け引きを描く官能
的なヒップ アクションとボディームーブメントこそ命。カウント「4」:体重を
移動し、次の動きの準備。カウント「1」:体重が完全に乗り切り、ヒップが最
高潮に達する瞬間。この「1」の“溜め”がルンバ特有の色気を生む。ここでステ
ップを踏んでしまうと、まるで映画のクライマックスで早送りするようなもの
せっかくの余韻が台無しです。
① 正しいカウント練習:「1・2・3・4」と声に出し、「イチ」で待ち、「ニー」
で出る。決して 「2・3・4・1」は唱えない。
② 音楽を深く聴く:クラーベやコンガのリズムに耳を澄ませ、“2拍目から動く
感覚”を体に染み込ませる。
③ 4~1 と予備歩を活かす:予備歩を正しく使えば、自然と 2 から動き出せる
④ ボディでリズムを感じる:足より先にヒップと体幹で音楽に乗る。足は、後
から自然について くるのです。
競技的には完全アウト。でも、音楽的には合っているのです。初めてルンバを
観る人には、on1の方が自然に見えることすらある。実際、サルサでは on1 派
も on2 派も共存し、「どっちが正しい」より「どっちが好き?」「どっちが気
持ちいい?」で選ばれています。ルンバだけが「on1禁止!」と叫ぶのは、
ちょっと窮屈ではありませんか?
私はこの30年、on1ルンバを楽しそうに踊る人々を数えきれないほど見てきま
した。その笑顔を前に「あなた間違ってますよ」とは、とても言えません。もち
ろん、拍が取れない人やリズム感が乱れている人は要修正。でも、on1 ルンバ
=音楽に合っていないと言うのは誤解です。ルンバの“規範”には外れていても、
音楽には合っている別文化と言えるでしょう。「on1ルンバ」も、立派に音楽の
一部。音楽的には on1 も正しい。ただし競技ではご法度、パーティーでは花形
このくらいの“ゆとり”があってこそ、ルンバはいつまでも踊り続けられるのだ
と思うのです。