お酒Q&A

依存(アディクション)を専門としていますが,本当に誤解が多いと感じます。少しでも誤解を解くために,よく訊かれる質問に一問一答形式で回答したいと思います。なお,岩野の経験上の情報も含まれるため,全てがエビデンスに基づいているわけではありません。

Q:お酒を美味しく楽しむには、コツありますか?

A:体調と気分が良い時に飲みましょう。

解説:これ、結構見落としがちです。体調が悪い時にいくら高級なお酒を飲んでも、ちゃんと美味しく感じませんよね。そして、悲しかったり不安だったりする時にお酒を飲んでも、悪酔いするだけだと思います。憂さ晴らしに飲酒することもありますが、調子が良い時に飲んだ方が美味しいと思います。

Q:マリアージュとペアリグってなんですか?

A:お酒と食べ物の合わせ方です。

解説:マリアージュってたまに聞きますよね。これ、ワインとチーズとかが食べ合わせて、「うまい!」ってなる組み合わせのことです。同じようなのに、ペアリングっていうのがあります。これもほぼ同じことです。何が違うかっていうと、ペアリングの方が広い意味で、「とりあえず美味しい組み合わせ」ってこと。マリアージュは「とりあえず美味しくて(=ペアリング)」かつ、「違うものである」ってことです。ビールとパンとかって、どっちも麦使ってますよね。性質(麦)が同じだから、これはペアリグだけどマリアージュじゃない。ワインとチーズとかは、全然別のものだけと、美味しいですよね。だからマリアージュ。違う2つが出会っているから、マリアージュ(結婚)なんでしょうね。


Q:最近,ストロング系チューハイってみますけど,酔いやすいんですか?

A:酔います。普通のチューハイにしましょう。

解説:アルコール含有量が多ければ,当然酔います。スーパーで9%のチューハイを見かけますが,500ml缶2缶で90mlのアルコールです。これ,どれくらいかと言うと,スパークリングワインとか甘口のワインでボトル1本分と同じです(750mlでアルコール度数12%として計算)。ワインボトル空ける感覚で,ぐびぐび飲むのって,これ大丈夫ですかね。お酒は酔っぱって寝るための道具じゃありません。人との時間を楽しくするスパイス程度のものじゃないですか?5%や3%のチューハイでいいと思います。

Q:ウコン飲料を飲むと,酔わないんですか?

A:酔います。

解説:ウコン飲料を飲むと酔わず,二日酔いにもならない!というわけはありません。ただ,これ岩野も気になって調べました(ホントに心理学おたくだと思います)。「お酒が飲めるが強くない人」がウコン抽出物を摂取して,ウィスキーの水割り150mlを飲むと,1時間後の血中のお酒のレベルが下がるのですが,2時間後にはウコン抽出物を飲まなかった人と変わらなくなります。つまり,お酒に弱い人が1杯だけ飲むのなら,ちょっと酔いにくくなる,ということです。飲み放題で何杯もお酒飲むなら,当然酔いますし,二日酔いもあります。

引用文献:浜野・西・伊藤・海老原・渡邉(2007).ウコン抽出物が健常成人のアルコール代謝に及ぼす影響の検討 応用薬理,72,31-38.

Q:職場の方からの飲み会を断りたいのですが、どうしたらいいでしょうか?

A:「医者に止められている」と言うといいのでは?

解説:治療されている方とは、上のような会話をします。肝臓が弱っている方や抗酒剤(お酒を飲むと気分が悪くなるお薬)を服用されている方もいますので、ドクターストップと言うと、それ以上勧められないことが多いです。それでも飲み会に連れて行こうとするなら、そのような人とは付き合わなくていいんじゃないかと思います。個人的には、「お酒飲むと気持ち悪くなるので、お酒以外の場面で今度よろしく」とかってくらいでいいと思うのですがね。

Q:依存症のことが知りたいんですけど、どうしたらいいですか?

A:webにいいのあります。

解説:アルコール健康障害対策基本法ができてから、公的な情報発信が増えてます。「誤解だらけの依存症」で検索すると、厚生労働省の啓発サイトが見つかります。その中の「依存症啓発漫画」は分かりやすいですし、サイト内のせやろがいおじさんの動画などもオススメです。あと個人的にですが、精神科医の松本俊彦先生は本当にちゃんとした情報発信なさっているので、FacebookやYoutubeで検索すると沢山情報があがっています。Facebookの松本先生の情報量は、専門家も驚く量と精度です!

Q:酒飲み過ぎてる気がして、ちょっと心配なんですが、どうしたらいいですか?

A:生活に支障が出ているなら、精神保健福祉センターに電話してみるのも手です。

解説:まず、心配なさった時点で、とても勇気があると思います。「俺は大丈夫」「問題ない!」と思いたいところを、「心配だな~」と思えるのが、カッコいいです。もしよければ、ネットで「AUDIT」「アルコール」と入力して検索すると、お酒に関するチェックリストが出てくるので、やってみてはどうでしょう?医療機関でも使っているチェックリストです(ネット上で計算してくれます)。さらに心配だという方は、各都道府県に精神保健福祉センターという公的機関があるので、そちらは相談先を紹介してくれますよ。

Q:今、お酒を控えているのですが、ノンアルコールビールは飲んではダメなのでしょうか?

A:本物のビールが飲みたくならなければ、いいんじゃないですか。

解説:これ、よく聞きます。ノンアルでもOKとかダメとかじゃなくて、ノンアルコール飲む意味を考えてはどうでしょうか。ノンアルコールだけで満足!というなら、OKだと思います。けれど、その後物足りなくて、アルコールが飲みたくなるなら要注意です。なお、抗酒剤を飲んでいる方は微量でも身体が反応するので、微量でもアルコールが入っていないかどうかはチェックしてみて下さい。

Q:禁酒しようと思いますが、注意した方が良いことはありますか?

A:太るかもしれません。

解説:アルコールを沢山飲まれる方は、あまり食べない方が多いんです。食べなくても、酒飲んでいればOK、みたいな方が多いんです。お酒をやめると食欲が戻ってくるので、今までより太ることがあります。けどこれ、健康な食欲に戻っただけなので、悪いことじゃないと思います。体重が増えたら、新しい生活リズムを作る一歩目だと思ってはいかがでしょうか。

Q:友達がお酒飲み過ぎで心配です。何かアドバイスありますか?

A:飲酒を責めるのは逆効果なので、控えた方が良いです。

解説:身近な人がお酒飲み過ぎてると、叱咤激励したくなる方は多いです。しかし、これ逆効果です。そもそも、言ってやめるならもうやめてませんか?心配を伝えるのは良いのですが、「飲み過ぎだ」「やめろ」というのはオススメしません。もし何か言いたいなら「君の体調が心配だから、飲み過ぎない方が僕は安心かな」という風に、自分の気持ちをお伝えするくらいすると良いように思います。

Q:オンライン飲み会で注意することってありますか?

A:終わる時間を決めたらどうでしょう。

解説:岩野もたまにオンライン飲み会しますが、時間がどんどん押して夜中になることがあります。おそらく、家だからすぐ寝れるし、居酒屋のように二件目に移動することもないからではないでしょうか。つまり、解散するタイミングがないからでは?というのが仮説です。飲み始めると抜けにくいので、何時に終わると決めておいてはどうでしょうか。

Q:寝る前に寝酒をすると,すぐ眠れますか?

A:あれは酔っぱらって気絶しているだけです。オススメしません。

解説:寝酒は,入眠するまでの時間は短くなりますが,酔いがさめると起きちゃいます。トイレも近くなるし,脳波も正常な睡眠ではなくなるので,かえって睡眠を悪化させます。不眠時には,睡眠導入剤などの処方を受ける方が,安全で確実です。

Q:お酒を飲む時のマナーって、ありますか?

A:めっちゃあります!

解説:これ、話すと長くなるんですよ。うーん、今度小分けにして色々ご紹介しましょう。

Q:お酒に強い男って、やっぱカッコよくないですか?

A:カッコよく飲める人と、単に酒が強い人は別だと思います。

解説:まぁ、気持ち分かりますけど。ただ、お酒が強いことって、人生の優先順位そんなに高いことですかね。お酒弱いけど皆で打ち上げする雰囲気が好き、だとか、たくさん飲めないけど地元の清酒は好き、とか、これカッコ悪いですか?カッコいいと思いますけど。私の実家は飲み屋ですが、味が分かるお客さんとか、飲まなくてもその場の雰囲気を楽しめる客さんって、やっぱり嬉しいですよ。酒に強いのは、色んなお酒が飲めるってことでいいですけど、カッコいいかどうかは別な問題だと思います。

Q:一気飲みって、やっぱり身体に悪いんでしょうか?

A:悪いです。

解説:これ、解説の必要あるか分からないんですが、身体にいい理由あります?

Q:私は今年、20歳です。良いお酒の飲み方ってありますか?

A:美味しいと思うものを、適量飲みましょう。

解説:お酒には当然ですが、味があります。好きな味って十人十色ですよね。自分が合うお酒がいいと思います。といっても、最初は甘めのカクテルや、甘めの白ワインなどは飲みやすいように思います。私は20歳の頃、ビールが苦いと思って少し苦手でしたが、今は大好きです。これ、小さな子が塩辛とか奈良漬けが苦手なのと同じだと思います(というか、本に書いてました)。お酒も料理と同じで、最初はフルーティーなものが飲みやすく、だんだん舌が肥えてくると渋いのとか、苦みが美味しく感じるようです。なので、自分の好きなものを、少量試して、好きなお酒を見つけるのが良いと思います。ちなみに、気持ちが悪くならない酒量を知るのも、同時にした方が良いと思います。

Q:健康診断で、節酒を勧められました。どうしたら良いでしょうか?

A:慣れてるなら、アプリ入れましょう。

解説:飲まれる量によるのですが、「断酒」でなく「節酒」なら、方法は結構あります。節酒の方法は、「情報収集」→「作成立案」→「実践」→「修正」です。PDCAサイクルとかっていうのと同じです。今はアルコール摂取用のアプリが多いので、使うと自分がどれくらい飲んでるかわかります。なので、スマホに苦手意識がないならまずお使いになることをお勧めします。私もいくつか使っていますが、マメな人は「AlcoDroid」、めんどくさがりの人は「減酒にっき」が使いやすいと思います。健康に影響が無い飲酒量と、自分が飲んでいる飲酒量を比べてみると、結構「へ~」と思うことがあるものですよ。

Q:飲酒運転にならないように、注意することは何かありますか?

A:朝の運転に注意しましょう。

解説:お酒を飲んで運転するのは、問題外ですが(そんなことする人はいないと思いますが)、朝の運転は注意が必要です。夜、お酒を飲んで寝ると、肝臓がお酒を分解します。しかし、たくさん飲むと、朝の時点でお酒を全部分解し終えていないことがあります。お酒は残っていないと思っても、まだ体の中にお酒がある、という状態が結構あります。飲酒運転のデータを見て下さい。朝方の検挙率が結構高いのが分かります。「飲酒」「シュミレーション」とかで検索して、一度計算してみましょう(多分、驚きますよ)。

Q:私はお酒が弱いです。沢山飲めば,強くなりますか?

A:(ほぼ)なりません。適量を見つけましょう。

解説:アルコールの代謝は,遺伝要因が大きいです。日本人は,欧州の方と比べて代謝しにくい人が多いので,自分に合った飲み方を探す方が良いでしょう。なお,お酒に強くなったように感じるのは,「酔った感覚」に麻痺しているだけ(耐性がつくと言います)です。限界は変わらないので,飲み続けると身体を壊すだけです。

Q:ちゃんぽん(複数種類のお酒を飲む)すると酔いやすいのは,なぜですか?

A:まだ解明されていません。

解説:実はこれ,まだ科学的に解明されてないんですよね。以前は「違う味だから,飲みすぎちゃうんじゃない?」と,アルコールの摂取量が増えるためだと言われていました。これ,岩野も違和感があります。現在では,アルコール以外の成分(コンジナーというそうです)が影響しているみたい,,,という仮説が出ており,今後の研究が楽しみです。