コロキウム2


教員養成における〈教育と科学〉


──19世紀独・英・仏をつなぐ教育思想史の試み 

 


企画者・司会者:岸本  智典(鶴見大学) 


報告者:小山  裕樹(聖心女子大学)

髙宮  正貴(大阪体育大学)

吉野  敦(大分大学)


教員にとって必須の知を問う議論において出現する〈教育と科学〉の関係という問題圏を主軸に19世紀の独・英・仏でそれぞれなされた教育(思想)史論を検討することで新たな教育思想史の姿が見えてこないか。こうした期待のもと本コロキウムではまず、19世紀前半に「学問-科学〔Wissenschaft〕」としての「教育学」を構想したヘルバルトの教員養成論に関して近年の研究を踏まえて再検討しつつ、19世紀後半のヘルバルト派のそれへと至る道筋で「学問-科学」理解がどのように展開し得たのか、主にドイツを中心としながら考察を開始する。次いで扱われる19世紀後半の英国では、教師になるためには、教科に関する専門的知識だけでなく、教育そのものに関する学問が求められるようになった。そうした趨勢の中で、スコットランドの哲学者アレキサンダー・ベインが「科学」としての教育をどのように捉えたのかを、ハーバート・スペンサーと対照させつつ検討する。最後に、19世紀末のフランスにおけるベインやスペンサー、ヘルバルトらの紹介者という一面をもつ教育思想史家ガブリエル・コンペレに注目したい。教員養成用教科書として執筆された『ペダゴジーの歴史』におけるスペンサーとベインの位置づけの検討を通して、彼が提示する「教育科学」のあり方を考察する。以上の19世紀に展開した〈教育と科学〉の関係をめぐる諸論の検討を通じて、われわれの時代の教育思想史の姿を反省的に思い描きたい。


※ 対面+オンライン同時双方向型