第七十九回福岡県中学校校長会研修総会は、五月三十日(金)になみきスクエア 東市民センターで盛大に開催することができました。
冒頭の藤井会長挨拶では、「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」の可決や、次期学習指導要領の改訂を踏まえ、国の教育動向についてお話がありました。会長は、「このような変化の時代にあって、我々校長も高い志を持って改革に臨まなければならない。そして、課題解決に当たっては、しなやかさとたくましさが求められる」と述べられました。
続いて、校長会の活動目的と重点として、本会の柱である「研修と調査研究を通じて、今日的課題の解決策を探るとともに、県に対して要望していくこと」「高校入試制度改革について、具体的な合議を図っていくこと」が示されました。
令和七年度の新役員紹介の後、議事として①令和六年度運営の成果と課題、および各部報告②令和六年度校長会研修大会(北九州大会)の反省③令和六年度校長会諸会計の決算および監査報告④令和七年度運営方針および活動の重点⑤令和七年度校長会研修大会(南筑後大会)に関する件⑥校長会諸会計の予算に関する件について提案があり、それぞれ承認・決議されました。感謝状の贈呈では、退職された校長を代表して前会長の阿部龍彦様が受け取り、感謝の言葉を述べられました。
本年度の活動重点は、以下の六点です。
⑴福岡県中学校長会の組織および機能を充実させ、活動の活性化を図る。
⑵確かな学力の定着、豊かな心と健やかな身体を育む教育課程の編成・実施・評価・改善に努める。
⑶学校の自主性・自立性の確立に努め、家庭や地域社会に信頼される学校づくりを推進する。
⑷人権尊重の精神に基づき、当面する教育課題の解決に努める。
⑸多様な教育活動の推進のため、教育諸条件の整備・充実を図る。
⑹職責に見合った待遇改善の実現を目指す。
講演では、九州大学大学院人間環境学研究院特任教授 福岡県立小郡高等学校みらい創造コース担当教諭 宮原 清 先生をお迎えし、「不登校・いじめの理解と未然防止〜『自己焦点化』でつくる支持的風土〜」をテーマにご講演いただきました。先生はまず、「不登校になりやすい子どもとは、見方を変えれば『学校を不幸な居場所と感じている子ども』であり、であれば学校の環境を変えることができるのではないか」と問いかけられました。
不登校の背景として見逃せない要因として「スクールカースト(生徒間に存在するグループを介した序列や階層)」が挙げられました。スクールカースト意識が強い集団では同調圧力が高く、不適応を起こす生徒が多く見られます。学習意欲があっても教室に入れない「真面目な生徒」が多い現状も説明されました。このような「空気感」が不登校の要因だと仮定するならば、スクールカーストを解消し、安心・安全な風土を醸成することが、自己肯定感の低下や不登校の未然防止につながるのではないかと提言されました。そのためには、「多様性が相互に承認される支持的風土」の構築と、個々人が「自己の幸せ」に意識を焦点化させることが重要であると述べられました。また、先生が校長として勤務された西田川高校での実践例として、学級内の同調圧力を排し、安心・安全な環境の中で、自己の幸せに焦点を当てた取り組みが紹介されました。最後に、先生は「自走する学校の姿」として、「心理的安定が確保され、自己決定が可能であり、一人ひとりが自分の良さを活かしながら調和し、対話に満ちた場で最適解を生み出し続ける学校」のあり方を示されました。そのためには、対等なリーダーシップに基づく「ティール組織」を目指し、先生と生徒、生徒同士、そして先生同士が徹底してフラットな関係性を築くことの重要性が強調されました。
先生のご講演は、「自己焦点化によってつくられる安心・安全な環境」や「自走する学校」という視点から、不登校の防止や社会的自立を支援するための大きな示唆を与えてくださいました。