「伝統文化継承」
福岡市立千代中学校 校長 山田 稔
一 学校の概要
本校は、博多駅から北に約二キロメートルの場所に位置し、校区内には福岡県庁がある。校訓「千代の誇りを胸に 輝く未来 君の手で」を掲げ、昭和二十二年開校以来、七十八年の伝統と歴史を誇る中学校である。現在、一年生二六名、二年生四十五名、三年生三十八名、総生徒数は一〇九名であり特別支援学級二学級を含む六学級の小規模校である。特別支援学級のうち一学級は、九州大学病院内に設置されている院内学級である。校区は、一小一中で構成され、、令和十二年度には施設一体型小中学校として、新たな歴史を刻む予定である。
二 本校の特色ある教育活動
本校にとって、保育所、小学校との連携だけでなく、地域とのつながりも非常に重要であり、地域の方々に支えられながら、生徒たちは日々の学校生活を送っている。こうした環境の中で、本校にとって特に大きな特色となっているのが『博多祇園山笠』である。
『博多祇園山笠』は、今年度で七百八十四年の歴史を刻み、昭和五十四年には国重要無形民俗文化財、平成二十八年にはユネスコ無形文化遺産に登録された。七月一日から十五日までの期間、絢爛豪華な「飾り山笠」と勇壮豪快な「舁き山笠」が奉納される。歴史と伝統を誇り、災厄を祓うこの祭りは、博多っ子の気質を反映し、開放的な雰囲気をもつ。
本校の校区にある『千代流』は、七つの流れのひとつであり、現在、中学校は千代流二十六ヶ町の中の一ヶ町として認められている。このため、町の生徒たちだけでなく、職員も町の一員として、この時期には、重要な役割を果たしている。
こうした背景のもと、本校では総合的な学習の時間において「伝統」をテーマに掲げ、博多祇園山笠を中心に、地域への学びを深めるための五つのコースを設定している。
① 「山笠体験」。山笠自体を実際に体験し、郷土に長く受け継がれてきた祭りへの理解を深め、その伝統を守り継ぐ心構えを身につける。
② 「山笠の絵を描く」。山笠のシンボルである舁山や飾り山、その中の登場人物を描いたり、そこからイメージしたデザインを用いて「うちわ」を作成する。水彩や貼り絵・切り絵など、工夫を凝らしながら山笠の姿を表現する。
③ 「山笠の研究」。山笠の歴史や、他の六流れ、山の飾りや人形などについて、調査を行い、博多祇園山笠の多様な側面に触れる。
④ 「山笠の食」。山笠に関する食文化(直会)について地域の方のお話を聞いたり、自分たちで調べたりして理解を深める。さらに、集団山見せ後に行われる直会の料理を想像して、レシピ作成を行う。
⑤ 「山笠のクラフト」。山笠特製の「祝儀袋」の作成を通じ、伝統的な技法に触れる。
これらのコースは一例だが、福岡・博多にちなんだ課題を設定し、その意義や目的を理解させた上で学習を進めることで、生徒が地域の伝統的な行事について様々な形で関わり、調査結果を発表することで、地域の伝統を受け継いでいくことができる。
三 おわりに
今後も、総合的な学習の時間を中心に、山笠体験や関連学習を取り上げることで、自分たちが住む地域の伝統的な行事への理解を深め、伝統文化を重んじる心と郷土愛を育む指導を続けていきたい。同時に、未来の山笠の担い手を育てる場としても、重要な位置づけとしていきたい。