特にサッカー選手に多い、グロインペイン症候群といわれる股関節の痛み。多くのプロサッカー選手も悩まされているこのスポーツ傷害について解説していきます。
股関節、鼠径部の痛みを主症状とする病態です。別名鼠径部痛症候群ともいいます。特にサッカーをしている人に多くみられ、サッカー選手の職業病ともいわれています。キック動作やランニング動作時などに痛みが生じます。レントゲン検査などをしても骨や関節に医学的な所見が見られず、診断名をつける事が困難な股関節の痛みの総称としてグロインペイン症候群は扱われています。
グロイン(groin)=鼠径部
ペイン(pain)=痛み
症候群(symdrome)=色々な症状を呈する病態の総称
を指し、複数の鼠径部の痛みの症候をグロインペイン症候群といいます。
股関節周辺に痛みがある方は、上の図の中でどのあたりが痛いか一度チェックしてみてください。
なお股関節の痛みの原因になる箇所は、股関節周辺だけでなく腰からきている痛みなど色々ありますが、上の図にある箇所のどれかに該当した場合、鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)の可能性があります。
上の図のように痛みの原因が1箇所ではないからです。
症候群と名前が付いている病態は、一つの病態では説明がつきにくく、原因が多岐にわたる場合に付けられるのでグロインペイン症候群もはっきりとした原因や病態が示しにくいのが現状です。
ランニングやキック動作など鼠径部に力を入れた時に痛みを生じます。痛みの生じる場所は鼠径部、下腹部、内転筋近位部、恥骨部など多岐に渡ります。始めは強い力を入れた時に痛みが生じますが、悪化するにつれて起き上がりや立ち上がりなどの日常生活動作でも痛みを生じるようになってきます。
グロインペイン症候群の原因はキック動作やダッシュなど股関節に過剰な負荷のかかる動作のオーバーユースです。股関節にある筋肉や関節に過剰なストレスが加わる事で組織の損傷をきたす事が原因とされています。
また他の部位の怪我によってキック動作のフォームが乱れる事、キックの体勢をユニフォームや体を引っ張られ体幹の軸のアンバランスも症状の原因となります。特に足首の捻挫、腰痛、肉離れの後に生じる筋力低下や可動域制限が影響する事があります。
恥骨は骨盤にある骨で、左右の恥骨をつなぐ結合部が炎症を起こして痛み恥骨結合は左右の恥骨が軟骨にて結合している部分を指す。恥骨結合には腹直筋、長内転筋、短内転筋、薄筋という筋肉が付着し下半身を動かすときに結合部に負荷が集中しやすい。これらの筋肉のオーバーユースや、柔軟性低下による伸長ストレスが原因となって恥骨結合に炎症を起こすのが恥骨結合炎。女性の場合は出産時の骨盤の開きが原因で発症することがある。
内転筋とは骨盤から大腿骨に付着している筋肉で、これらの筋肉がオーバーユースや過剰に伸張された時などに損傷を受ける事で鼠径部に痛みを生じる。
腸腰筋とは背骨から大腿骨、骨盤に付いている大腰筋と腸骨筋を合わせた呼び名で主に股関節を屈曲させる働きがあります。サッカーのキック動作などで重要な働きをする筋肉です。この筋肉もオーバーユースや過剰に伸張された時などに損傷をきたして痛みを生じる。腸腰筋は足が後ろに流れると引き伸ばされ、腸腰筋の腱の部分にストレスがかかります。この繰り返しの負荷がかかる事で、筋肉が炎症を起こします。その為、単にスポーツなどによる使いすぎではなく、股関節の使い方、背骨の歪みなどによって痛めてしまう場合もあります。
本来なら腹部の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に飛び出してきてしまう病態です。一般には脱腸と呼ばれています。腹部や鼠径部に力が加わる動作によって、鼠径部の筋膜が破れてしまう事によって生じ、鼠径部に痛みを生じます。立った状態で鼠径部にこぶのような膨らみが確認される事があります。
レントゲンは残念ながら、筋肉ではなく、骨だけしか写りません。
ということは、股関節痛の原因になる「筋肉」がどれなのか分からないまま、電気治療をしたり、マッサージや湿布、痛み止めを飲んだとしても症状は改善しません。
さらに、痛みの原因になる筋肉には、深層部の「触れない筋肉」さらに「強靭な軟部組織に覆われた関節」があります。
あなたは「触れない筋肉」に強くマッサージや「強靭な軟部組織に覆われた関節」を力任せに矯正したら症状が改善すると思いますか?
強くても弱くても、マッサージや矯正をいくらしても原因部に届かないから症状は改善しないです。その場しのぎで痛み止めの薬を飲んだり、湿布を貼っても同じ事です。
「触れない筋肉」「強靭な軟部組織に覆われた関節」を治療する時はマッサージ、電気治療や痛み止めの薬を飲んだり、湿布を貼っても今より悪くなるのを防いでいるだけで、そもそも根本的な症状改善はしないということです。