終末分化状態にある神経細胞にとって、その誕生日、すなわち最終分裂を終えたタイミングは特別な意味を持ちます。誕生日が神経細胞の「運命」を直接的に決定する場合もあれば、分化の「タイミング」が間接的に結合選択性に影響する場面もあるでしょう。このようなさまざまな意味合いを持つ神経細胞の「誕生日」を利用して神経回路を分解して操作できる「神経細胞の誕生日タグづけ法」を開発しました。
神経細胞誕生日タグづけ法の原理
神経分化関連遺伝子の中には、神経細胞が最終分裂を終えた後、一過的にピークを持って発現するものがあります。このような遺伝子プロモーターの下流にタモキシフェン依存型Cre組換え酵素(Cre-ER)遺伝子を連結してトランスジェニックマウスを作成しました。これらのマウスでは、多くの神経細胞において誕生後一過的にCre-ER が発現します。ある発生ステージにタモキシフェンを投与すれば、ちょうどその前に最終分裂を終えた生まれたばかりの神経細胞のみでloxP組換えが誘導され、これらの細胞を未来永劫的に誕生日タグ付けすることができます。
参考文献
A Novel Birthdate-Labeling Method Reveals Segregated Parallel Projections of Mitral and External Tufted Cells in the Main Olfactory System
Tatsumi Hirata, Go Shioi, Takaya Abe, Hiroshi Kiyonari, Shigeki Kato, Kazuto Kobayashi, Kensaku Mori and Takahiko Kawasaki
eNeuro 31, ENEURO.0234-19.2019, 2019 DOI:10.1523/ENEURO.0234-19.2019
元々嗅覚神経回路の研究のために開発した技術ですが、汎用性が高いツールなので、いろんな神経系の解析に使えます。興味をお持ちの方は平田まで連絡ください。