稲垣立男(法政大学国際文化学部教授・アーティスト)
各講義やワークショップの詳細、注意事項など
フィリピンの文化や芸術に関連した内容の講義や事前調査について
海外フィールドスクール・表象文化コースは例年東南アジア各国に渡航して実施されていますが、2021年度に続き、2022年度はオンライン夏季講座として実施されます。この授業では、生活や文化背景の違う人々との共同作業を通じて、多角的な見方、考え方による双方向の文化理解やコミュニケーションについて体験的に学びます。担当教員は稲垣立男です。
法政大学の表象文化コースは、美術や音楽、演劇やダンスなどのパフォーミングアーツ、映画などの映像作品やテキストによる小説や詩などの文学をその研究対象としていますが、海外フィールドスクール・表象文化コースについても同じテーマで実施されます。
フィリピン在住の各文化活動に関連されている各講師の皆さんに、フィリピンの環境問題や社会問題と美術や演劇、映画などの文化活動を関連させるワークショップを中心とする講座となっています。
授業の実施方法
9月8日(木)に事前学習(担当:稲垣)を配信します。
9月14日(水)、9月15日(木)は、Zoomによるオンライン授業です。
9月16日(金)〜9月20日(火)は、大学キャンパスでの実習授業となります。教室はY405です。フィリピン在住の講師の皆さんとはオンラインでつなぎ、教室では稲垣がファシリテーターをします。(9月18日(日)はお休みです。)
事後学習(担当:稲垣)はまとめの課題となります。内容については、最終日の9月20日にお知らせします。
ワークショップ・ディスカッション
各授業内では、授業のテーマと関連したディスカッションや実習を兼ねたワークショプが実施されます。
事前、事後の課題
授業によっては簡単な事前課題のあるものがあります。
受講後に実習課題、もしくは簡単なレポートをGoogle Formを使って提出してもらいます。
締め切りは各課題によりますが、基本的には翌日の午前中までです。
評価
実習課題とレポートの提出を持って出席とし、各課題について採点をして評価します。
質問・相談
質問や相談についてはGoogle FormとGoogle Classroomを使ってください。
事前学習として、このサイトを見てフィリピンという国について理解しておいて下さい。また、このウェブサイトにはコロナ禍の現場でフィリピンに渡航する場合の詳しい情報も掲載されています。
フィリピン旅行勧告
新型コロナウィルス感染症に関する情報について
https://philippinetravel.jp/safeph/
フィリピン観光省によるトラベルガイド
https://philippinetravel.jp/
フィリピン・トラベルマイスター検定
フィリピン観光省は旅行者向けに「フィリピン・トラベルマイスター検定」を実施しています。観光者向けの情報が中心ですが、フィリピンに関する基本的な事柄について一通り理解することができます。
大野拓司「フィリピンを知るための64章」明石書店
鈴木勉「フィリピンのアートと国際文化交流」水曜社
鈴木勉「インディペンデント映画の逆襲―フィリピン映画と自画像の構築」風響社
今回講師をしていただく先生方のうち、国際交流基金の鈴木勉先生、まにら新聞の澤田公伸先生、Load na Ditoの皆さんはマニラ在住です。また、コーディリエラ・グリーン・ネットワークの反町眞理子先生はバギオに長くお住まいです。ここではごく簡単にマニラとバギオの文化施設について紹介しておきます。興味のある方はリンクを辿って各文化施設のサイトを見ておいてください。
また、各講義の資料ページに参考となるウェブサイトのリンクや参考書が記載にてありますので、こちらも見ておいて下さい。
フィリピンの正式名称は「フィリピン共和国 (Republic of the Philippines)」。日本から飛行機で4〜5時間で行くことができます。首都はルソン島のマニラ(Manila)。マニラは東南アジアを代表するメガシティです。
主な美術館・博物館
フィリピンでも長い歴史を持つ国立芸術総合センタースペインの植民地時代の建物が残る地域。主な大学美術館
フィリピン大学ディリマン校にある美術館デ・ラ・サール大学 (De La Salle University)にある現代美術館アテネオ・デ・マニラ大学にある現代美術ギャラリーアートスペースなど
オルタナティブスペースバギオ(Baguio)は、フィリピン北部ルソン島のコルディリェラ行政地域にある都市で、フィリピン北部の中心都市です。
主な美術館・博物館
バギオ博物館(Baguio Museum)
主な大学博物館・美術館
コルディジェラ博物館(Museo Kordiyera)
アートスペースなど
フィリピンを代表するアーティストベネディクト・カブレラ(ベン・キャブ)によって2009年に創設された美術館。バギオの民俗資料の展示も多い。イフガオ州に暮らす山岳農耕民・イフガオ族の居住跡地をもとにした芸術村。マルコスの独裁政権
現在ロシア、アフガニスタン、香港、ミャンマー、トルクメニスタン、ベラルーシなどでは政権による市民の言論弾圧が問題となっている。フィリピンではそうした問題の先駆けとして今から30年以上前の1980年代に「エドゥサ革命」が勃発した。エドゥサ革命で起こったことを振り返ることで、現在の社会的問題を解決する道筋が見えてくるかもしれない。
エドゥサ革命
「ピープル・パワー」や「EDSA革命」として知られる1986年2月の革命。
フェルディナンド・マルコスはフィリピンの大統領として1965~86年の20年間、独裁政治を行ってきた。憲法では三選が禁止されていたにもかかわらず、戒厳令を発布して憲法を停止。74年に3選目を果たした。
この戒厳令により言論や出版などの表現の自由が奪われた。この独裁政権を民衆が非暴力で打倒したのが1986年2月のエドサ革命である。反マルコス派がマニラの大通りであるエドサ(EDSA)に押し寄せマルコス退陣を要求。マルコス夫妻はアメリカ軍とともにハワイに亡命、マルコスの独裁は終わりを迎えた。
その後コラソン=アキノが新たに大統領として就任。この変革は非暴力でアジアの民主化を実現した象徴的な出来事であった。
2022大統領選挙
5月9日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領(77)の任期満了に伴う大統領選の投開票があり、故フェルディナンド・マルコス元大統領の長男フェルディナンド・マルコス・ジュニア氏(64、愛称ボンボン)が圧勝の見通しとなった。
1992年の出来事
フィリピンは私が初めて訪れた海外の国である。それは私が大学院を出たばかりの1992年のことだった。銀座のある画廊に、展覧会の招待状が郵便で届きいたた。ネグロス島にあるバコロドという町で開催される展覧会への招待状だった。画廊のオーナーに呼ばれて画廊まで出かけたが、オーナーは招待状を私に渡して「興味があるのならいってらっしゃい」と言った。当時はインターネットもなく、フィリピンのアート事情はおろかバコロドまでどうやって辿り着けるのか情報もわからず、そもそも海外渡航するようなお金もなかったのである意味大冒険だった。でも、こんなチャンスはなかなか巡ってはこないだろうと考えてフィリピンに行くことにした。
フィリピンやバコロドに関する情報を得る手段をわかっておらず、とりあえずマニラまで飛行機で行き、マニラの博物館でバコロドまでの行き方を聞いて、国内便でバコロドになんとか辿り着いた。そして、ビサヤ地方の美術の祭典「VIVA EXCON 1992」に参加した。VIVA EXCONでは、展覧会とカンファレンスを通じてアートについての様々なアイディアの交換が行われていた。
2022 年に向けて
以来私はフィリピンを何度も訪ね、またフィリピンからアーティストを日本に迎えたりと交流と研究を重ねている。フィリピンでの海外フィールドスクール は私の若気の至りのようなことから始まる個人と個人のつながりという背景があり、そのことがあって今回のフィリピンでの実習が可能となっている。海外フィールドスクールを通じて素晴らしい人々と出会い、みなさんにとってフィリピンという国がかけがえのない場所になればと思います。
VIVA EXCON基本情報
VIVA EXCON, the Visayas Islands Visual Arts Exhibition and Conferenceは、1990年にネグロスオクシデンタル州のバコロド市でBlack Artists in Asia (BAA)によって始められた。
特徴
VIVA EXCONは2年に1度、ビサヤ地方の各都市へ巡回しながら開催され、これまでにバコロド・ドゥマゲティ、イロイロ、セブ、レイテ、ボホール、サマールなどで開催。
VIVA EXCONは現在フィリピンで最も長く続いているビエンナーレと見なされている。
目的
アートコミュニティを結び付けることによって島々を繋ぐこと
知識を共有するための場を提供すること
地域の制作現場に影響する問題を議論すること
ビサヤのアートシーンをを統合することでした。(マニラへの文化的対抗)
以下の二つの課題をGoogleフォームから提出してください。
この授業を通じて学びたいことについて書いて下さい。(200字程度)
あなたの家や近所にあるフィリピンと関連するもの、関連すると思われるものを見つけて写真におさめてください。また写真に撮影したものとフィリピンとの関連について簡単に説明して下さい。(写真+100字程度の説明)