鈴木勉(国際交流基金マニラ日本文化センター所長)
フィリピン映画は昨今海外で高い評価を受けており、カンヌ、ベルリン、ベネチア、東京など主要な国際映画祭でも常連となっている。そこで表象される世界像は、フィリピンの人々や文化を理解するのみならず、ポスト植民地時代とは何か、グローバリゼーションはどのように社会に影響を与えているのかについて考える道標でもある。本講義では多くの映像を交えてフィリピン映画を紹介しながら、上記テーマを中心に議論する。
講義1:「インディペンデント映画を通したフィリピン文化理解」
講義全体の背景を説明し、映画理解に必要なフィリピン関連情報をシェアした後、いくつかの観点からインディペンデント映画を紹介する。
講義2:「ディアスポラとフィリピン映画」
”ディアスポラ”や”グローバル・フィリピーノ”をキーワードに、フィリピン人のディアスポラを描いた映画を参照し、現代のディアスポラ問題について考察する。後半は参加者の関心に応じてテーマを設定してディスカッションを行いたい。
紹介映画リスト(登場順)
第一部
『HALAW(海の道)』シェロン・ダヨク監督、2010年『BUYBUST』エリック・マッティ監督、2018年『ダイ・ビューティフル』ジュン・ロブレス・ラナ監督、2016年『リスペクト』トレブ・モンテラス二世監督、2017年『マキシモは花盛り』アウラエウス・ソリート監督、2005年『普通の家族』エドゥアルド・ロイ・Jr監督、2016年『ローサは密告された』ブリランテ・メンドーサ監督、2016年『KADIN(山羊)』アドルフォ・アリックス・ジュニア監督、2007年『BATAD:SA PAANG PALAY(稲穂の足)』ベンジー・ガルシア監督、2006年『DONSOL』アドルフォ・アリックス・ジュニア監督、2006年『NAMETS』ジェイ・アベロ監督、2008年『BUSONG(パラワンの運命)』アウラエウス・ソリート、2011年『K’NA THE DREAMWEAVER(カナ、夢を織る人)』イルダ・アニタ・デルムンド監督、2014年第二部
『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』2022年『A Faraway Land』ヴェロニカ・ヴェラスコ監督、2021年『Untrue(それぞれの記憶)』シーグリッド・ベルナード監督、2019年『バルセロナ』オリビア・ラマサン監督、2016年『I Amerika』アイヴァン・アンドリュー・パヤワル監督、2016年『海燕ジョーの奇跡』藤田敏八監督、1984年『ドバイ』ロリー・キントス監督、2005年『Sunday Beauty Queen』ベビー・ルース・ビララマ監督、2016年『インビジブル』ローレンス・ファハルド監督、2015年『KITA KITA』シーグリッド・アーンドレア・ベルナード監督、2017年『KINTSUGI』ローレンス・ファハルド監督、2020年『シグナル・ロック』チト・ローニョ監督、2018年『ミラノ』オリビア・ラマサン監督、2004年『トランジット』ハンナ・エスピア監督、2013年『リンガ・フランカ』イザベル・サンドバル監督、2019年『Paper Dolls(ペーパー・ドール)』トメル・ヘイマン監督、2006年 おまけ『義足のボクサー』ブリランテ・メンドーサ監督、2021年自分なりに「インディペンデント映画」とは何かを考える
自分の身の回りのフィリピン人、フィリピン人が不在の場合は外国人について考え、どのような問題を抱えているか想像しておく
単著
2012「フィリピンのアートと国際文化交流」(水曜社)
2020 「インディペンデント映画の逆襲―フィリピン映画と自画像の構築―」(風響社)
共著
2016 「フィリピンを知る64章」(明石書店)
2017 「東南アジアのポップカルチャー」(スタイルブック)
2020 「国際文化交流を実践する」(白水社)※こちらは国際文化交流に関心のある方に。