東洋館出版社・編集部
(私立高校国語科講師を経て現職)
【コメント】
「刑部さん、受験生向けにコメントを書いてもらえますか?」
ゼミの恩師、古川裕佳先生から、そのような依頼のメールが数日前に届きました。
「ゼミかあ……、懐かしいなあ。よい思い出ばかりだっ……」
瞬間、私の脳裡には「もっとよい論文を書けるはずだったのに」と悲嘆にくれる自身の姿、「まさかそんなところに論理の抜け穴が」と驚愕する同級生の姿が浮かび上がってきました。
私の大学生活(主にゼミ)は、決してキラキラ☆キャンパスライフではありませんでした。しかし、キラキラ☆よりも大切なものを得ることができました。その大切なものは、私自身の言葉で伝えられるようなものに、まだなっていません。ですので、古川裕佳先生のお言葉を引用して紹介します。
「脳の表層数ミリで考えたことを、ゼミで垂れ流しにするのはやめなさい」
「本当に研究したければ、金と時間と労力を惜しむな」
この言葉が一体どのような状態を指すのか、ぜひ大学で体感してみてください。少しでも体感できれば、そこには学びの楽しさが必ず伴っているはずです。
デーリー東北新聞社
【コメント】私にとって都留は、国文学という学問の面白さと素晴らしさ、一生ものの仲間と出会えた大切な場所です。
在学中は古今和歌集や百人一首といった中世の和歌を専門に学んだ他、佐藤先生が開いていた中世文学研究会への参加や国語国文学会での仕事を通して、より多くの知識と経験を得ることができました。
また、同じゼミ生の友人が中心になり創設したかるたサークルにも参加。和歌好きが多かったため、競技かるたの大会より、学食で友人と坊主めくりをしながら百人一首について何時間も語り合った日の方が思い出に残っています。同じ学問を好きな仲間と一緒の時間を過ごせたことは貴重な経験でした。
卒業後は地元の新聞社に就職し、スポーツ、警察担当を経て、現在は短歌などを扱う文芸担当の記者をしています。五・七・五の調べをパソコンに打ち込む度、都留での学びを思い出します。ひとつの作品に向き合い、それを言葉にして他人に伝えることの難しさと楽しさを仕事の中で実感できるのは、都留での4年間のおかげだと思います。都留で学べたことは一生の財産です。
●現在の勤務先:福岡大学人文学部専任講師(写真は安徽大学における座談会の様子)
●卒業後のキャリア(オプション):台湾師範大学へ留学、大阪大学文学研究科博士前期課程・同後期課程を修了(文学博士)、大阪大学文学研究科中国哲学研究室助教などを経て現職。
●コメント:国文学科に入学した当初は、近現代の文学作品を読みあさろうと考えていましたが、気が付けば漢文ゼミで漢字だらけの生活を送っていました。寺門日出男先生の御指導のもと、『史記』や『詩経』の一字一句を読み解く作業は、正直骨の折れる辛いものでしたが、それを差し引いても余りあるほどの研究の面白さを教えて頂きました。
「矛盾」や「備えあれば憂いなし」など、普段わたしたちが何気なく使用している熟語や慣用句の多くが、実は漢文からきており、日本文化にも深く根付いているのだと授業を通して実感することができました。
現在、大学教員として、また研究者として、都留文科大学で学んだことを手がかりに、中国古代の出土文献(竹簡)を用いた新たな研究に取り組んでいます。
三省堂・国語教科書編集部
学習院大学大学院人文科学研究科(日本語日本文学専攻)を経て、2016年(株)三省堂入社。
【コメント】近世ゼミ卒業生の武田です。卒業後大学院に進学し、現在は高校で使われる国語の教科書を編集する仕事をしています。
教科書を作るという仕事は、他の本を作る仕事とは違うことがたくさんあります。完成するまでに4年もの歳月がかかる、というのが一番大きなことでしょうか。
4年、と言う時間は、大学にいた時間と全く同じ長さです。そして、大学での4年間と教科書を作る4年間は、一致するところが多いのではないかと感じています。
その時は目の前の課題や授業に精一杯でしたが、ふと振り返ってみると、大学生活の集大成として書いた卒業論文には、4年間のすべてが詰まっていました。
1.2年でたくさんの必修授業を受け、レポートを書いたり発表をしたこと。3.4年生でゼミに入り、自分なりに研究をしてきたこと。その中のいろんな場面で、先生方が真剣に向き合って、話を聞いてくださったことが心に残っています。
4年の年月をかけ、少しずつやりたいことが明確になり、情報を自分の中で咀嚼し、まとめ上げていくという作業は、1冊の教科書を作り上げる作業と似通っています。都留で学んだことを生かし、真剣に教科書作りと向き合うことで、私も誰かにとって心に残る本を作っていければと思っています。
●星野リゾート界川治 料飲部門でマネジメント業務に従事
【コメント】日本文化ゼミ卒業生の片山です。現在は栃木県日光市にある星野リゾート界川治で料飲業務のマネジメントをしています。
国文学科を卒業したのに、ホテル業界で料飲業務?と少し首を傾げる方もいらっしゃるかもしれません。私自身、大学に入学した頃は今の仕事を選ぶとは夢にも思っていませんでした。
私が現職を選ぶに至ったのは、日本文化ゼミで「多角的に事象に対してアプローチする術」を学び、視野が広がったからだと考えています。文学という学問を一面的に捉えるのではなく、「クロスエリア研究」や「クロスジャンル研究」を通して研究していくことで、新しい一面が見えてくる。その新しい発見をゼミ生たちと共有しあうことで、更に広げることができ、自分の知見を深めることができる時間が日本文化ゼミにはありました。
この時間があったからこそ、就職活動の際に自分のルーツやビジョンに対しても、広い視野を持って見つめなおすことができ、現職にたどり着いたのだと、卒業して三年たった今思い返すことがあります。
それだけでなく、日本文化ゼミでは文章の要約やゼミ生、先生との議論を通じて、「論理的な思考」を学ぶことができたとも考えています。これは、どのビジネスシーンにおいても非常に大切なもので、職種を超えて活用することができるスキルだと思います。
また、ゼミでの学びの時間だけに留まらず学友や先生と過ごした時間そのものが今の私を支える糧になっています。
四年間という時間は長いようであっという間でした。多くの人と接し、思いっきり学び、思いっきり遊ぶ。そんな時間を与えてもらえた都留文科大学に心から感謝しています。
学校法人日本福祉大学 事務職員(入学広報課)
都留文科大学国文学科を卒業後、名古屋大学大学院人文学研究科日本語学分野・専門博士前期課程入学。2019年3月同課程修了。2019年4月より現職。
【コメント】現在は、大学職員として忙しくも充実した毎日をおくっています。
在学中は、近代語ゼミで日本語の文字・表記、特にかな文字の使い方の歴史を研究しました。卒業論文への取り組みなどから、当時のゼミ担当教員である鈴木芳明先生より大学院進学をすすめられ、卒業後は名古屋大学大学院へ進学し、さらに研究を深めました。
世間では、「ぼくは学生時代、国語学を専攻していました」と自己紹介しても、「??」という反応が大半です。ゼミ内の研究テーマも多岐にわたるので、同じ国語学ゼミといっても、内容に「??」となることもあります。だからこそ、自分の「大発見!」や「面白い!」をより緻密に考察し、「より分かりやすく」伝えようとする力も身につくのではないかと思いますし、そこを意識しなければならないと思います。
高校生までと違い、大学では自分の頭で考えたことを発表する機会が多くなります。その時はぜひ、積極的に楽しく発表してください!
どんなに細かいことでも、自分にとっての「大発見!」を誰かに聞いてもらえるのは、とても嬉しいものですよ!
静岡県裾野市役所生涯学習課係長
静岡県裾野市役所秘書広報課、裾野市立富士山資料館学芸員などを経て現職。
【コメント】 上代文学ゼミでは、独特で優雅な時間の流れの中、山上憶良を卒論のテーマとし、学びました。教授の鈴木武晴先生には今でもお世話になっており、令和元年7月13日から12月1日まで開催される、裾野市立富士山資料館特別展「富士山と万葉集を中心とした文学」の監修を快くお引き受けいただきました。
武晴先生に万葉の相聞を教えていただいたことが功を奏したのか、家内も上代文学ゼミ生です。
地元広島の県立千代田高等学校に勤務しています。経験不足で苦労することもありますが、忙しくも楽しい毎日です。
私は、「授業は受けるものではなく創るものだ」と考えています。そこには、私の大学時代の経験が活きています。
大学入学後初めての講義で、私は高校時代とのちがいに大きな衝撃を受けました。選んだテーマについて書いた作文をシェアし、良いと思ったものに対する感想を書くというシンプルなものでしたが、「自分の意見は言ってもいいんだ」「認めてもらえて嬉しい」という気持ちを実感し、人生で初めて学ぶことが楽しいと思いました。
「こんな素敵な気持ち、将来出会う生徒に伝えなきゃもったいない!」
大学時代に受けた衝撃は私の原点です。無意味に感じてしまう日々の授業に自分で価値を見い出せるような、ワクワクする仕掛けを散りばめていきたいです。
北海道小清水町教育委員会 生涯学習課社会教育係 主事
都留文科大学卒業後、高等学校期限付教諭を半年務め 2年前に現職。
【コメント】 広大な農地に恵まれた北海道小清水町で公務に励んでいます。本町出身でな いため勉強不足なことも多々ありますが、忙しいながらも充実した生活を過ご しております。
私が大学で学び、今も継続して実践している取組は「自己の考えを躊躇うこ となく述べる」ことです。1~2年次で取り組んだ基礎演習で、特定の作品に 関する見解や根拠を自己の言葉で発表する学習を通じ『前に出て話す機会を厭 わなくなった』と感じています。元々は人見知りの強い性格でしたが、「人と一 緒に何かをやり遂げることの大切さ」に気付かされ、現在配属されている課で は子どもやお年寄りを中心とした様々な行事の企画・運営を担当しています。
私は高校時代「教師になりたい!」と考え入学を決意しましたが、大学3年 次に「教師になる夢」を1度諦めています。しかし、大学卒業後に「教師の夢」 を実現させ、紆余曲折を通じて現在の職に就きました。可能性を狭めるのではなく何事にも恐れずにチャレンジし、今まで気づいて いなかった自己のポテンシャルに気づけるような学生生活を過ごしてください。