ミャンマー政変の人的資本育成への影響
―高等教育に焦点を当てて―
岡本 郁子 研究員(国際学部 国際地域学科)
Marie Lall 客員研究員(UCL教育研究所 教授)
ミャンマー政変の人的資本育成への影響
―高等教育に焦点を当てて―
岡本 郁子 研究員(国際学部 国際地域学科)
Marie Lall 客員研究員(UCL教育研究所 教授)
背景
2021年2月に起きたミャンマーでのクーデターにおいて、学生を始めとする若者層が政変への抵抗運動の中心となったことで、彼らの日常、さらには将来の選択肢は激変しました。教育機関の機能がほぼ麻痺している中で、抵抗運動を継続している学生は、当局の弾圧を逃れるため、武装闘争に身を投じたり、国境を越えてタイに避難したりもしています。
また、出稼ぎ労働者として政変前からタイに流入していた労働者層も低賃金の単純労働から脱せず、帰国が叶わない者が多い現状です。こうした状況も踏まえ、ミャンマーの経済成長に資する人的資本育成という観点からは、長期的に大きな負の影響を及ぼすと見込まれています。
目的
ミャンマー国内、またタイにいる学生を含む若者層に対する聞き取り調査をもとに、これらの層の教育機会・就業の現状と課題を明らかにすることを目的としています。
主な活動
・ミャンマー・タイ国境の町、メーソットにおける聞き取り調査(2023年2月23日~25日と11月20日~24日)
・インド・ミゾラム州における聞き取り調査(2024年11月3日~11日)
・Academic Council on the United Nations System(ACUNUS) 2024年年次大会(2024年6月22日@東京大学)
パネル:”Education Can Make Me Safe Again: The Rise of Displacement and the Nexus between Education and Human Security”
での報告
・European Association of SoutheastAsian Studies (Euro SEAS)2024(2024年7月25日@University of Amsterdam)
パネル:”Higher education for the revolution: Education as a space for resistance in post-coup Myanmar” での報告
≪ミャンマー・タイ国境の町、メーソットでの調査≫
タイに位置するミャンマーとの国境の町、メーソットでミャンマーから避難してきているミャンマー人(教員、学生など)や、彼らの一部が設立した教育プラットフォームや組織、また、学生や教員を一部受け入れているミャンマー人向け移民学校等に対して聞き取りを行いました。
成果
本プロジェクトでは、クーデター後の学生たちの語りを通じてその経験を丁寧に把握し、 彼らにとって「高等教育」が持つ意味を明らかにしました。今後一連の研究成果はUCL Pressから出版される予定です。