小規模人道支援がもたらす循環型インパクトに関する研究

−“Buy One Give One”事業からみる新しい支援のかたち−


松丸 亮 研究員(国際学部 国際地域学科)

小野 道子 研究員(福祉社会デザイン学部 社会福祉学科)

柏崎 梢 客員研究員(関東学院大学 国際文化学部 比較文化学科)


 本研究プロジェクトは、2021年10月に「東洋大学受託研究及び共同研究規定第4条第2項関係」に基づき、ランドポート株式会社との共同研究契約(無償版)に基づく共同研究です。当社の主要商品であるソーラーランタン(商品名「CARRY THE SUN®」)を対象とした支援による影響を定性的かつ定量的に分析することで、より持続的な国際支援関係の可能性を見出すことを目指しています。


背景

 近年、自然災害の激甚化や政情不安による難民の増加に伴い、支援を必要とする被災者や難民への支援の長期化は喫緊の課題となっています。同時に、支援を受ける側の地域性や文化といったアイデンティティを尊重した支援の在り方に関する議論も、多様化するステークホルダー間において重要度を増しているといえます。


目的

 本研究プロジェクトは、小規模な組織による人道支援活動が、支援側と受益者側の双方にもたらす影響およびその循環性に着目します。緊急物資や医療といったこれまでの支援とは異なり、個人の消費活動を通して、支援後も継続的にその効果を共有しあうことで、双方にとって実態の理解や生活意識への変化が生じる循環を見出すことを目的としています。

主な活動

・ベトナムの小中学校を対象としたアンケート調査や現地調査(2022年度)

・タイ国境地域のミャンマー難民、およびパキスタンカラチ市のスラム地域を対象とした現地調査(2023年度)

(1)ベトナム北部ハザン省と中部タンホア省での調査

 2021年度末にランタンが配布された、ベトナム北部ハザン省と中部タンホア省を対象に、2022年2月アンケート調査を実施しました。また、2022年7月29日~8月3日にかけて北部ハザン省の地域を対象に現地調査を行いました。

聞き取りの様子

夜間に使用する子ども

(2)パキスタン・カラチ市のスラム地域での支援事例

 2023年8月28日~9月5日の期間中、カラチ市内コーランギ―地区のスラム地域にてノンフォーマル小学校に通う子どもたち計39名と、路上で働く子どもたち8世帯にランタンを配布し、調査を実施しました。

カラチのノンフォーマル小学校での様子 

(3)学生たちを中心としたソーラーランタンの取り組み

 東洋大学白山キャンパスでは、学生サークルのTUEP(Toyo University Eco Projects )が学生部と協力して3回のイベントを開催しました。また、学生たちが研究セミナーにも参加することで、ランタンが海外でどのように使われているのかも知ってもらうことができました。

東洋大学白山キャンパスSUBWAY 冬至企画

クリスマスイルミネーション点灯式

今後の計画

 2024年度からは、2023年までに支援を受けた家庭を継続的に訪問し、その変化について追跡調査を行い長期的な効果を検証するとともに、対象国の社会構成員である高所得者層および中間層も含め支援する側に対する意識調査を行い、地域社会における支援の循環可能性を検証します。