「はなさかじいさん」プロジェクト

口上

落葉樹の性質:生育過程で生育を一時的に停止する「自発休眠」を行います.

樹木が所定時間,低温環境下に晒されることにより,ナシ,モモ,サクラなどの落葉樹は自発休眠から覚醒し生育を再開します.自発休眠から覚醒(休眠打破)するのに必要な低温遭遇時間は,樹種や品種によって異なります. 例)ニホンナシでは1400時間程度の低温遭遇が必要.

地球温暖化が落葉樹に及ぼす悪影響(例:ナシ・サクラ)

日本を含む世界各地で春に芽の発育不良が発生しています.これは暖冬によって低温が不足しているためです.

・暖冬によるソメイヨシノの不開花についての報道例1報道例2報道例3報道例4

・ニホンナシにも影響が出ています.

「幸水」 の発芽不良の状況

(鹿児島県,2009年4月) 藤川氏 撮影

地球温暖化が進行しても落葉樹が開花するためには「自発休眠の時間短縮」が必要です.

温暖化対策の先行研究

これまでも休眠打破のためにいろいろな研究がなされてきました.しかし,いろいろな問題点もあります.

(1)ニホンナシを高温(45℃)に数時間さらすと休眠が打破される.…実際の圃場(畑,ハウス)において冬季に実施するためには,大規模な加温設備が必要であり,ランニングコストとして燃料も必要となる.

(2)シアナミド(薬剤),過酸化水素(オキシドール),ニンニクの絞り汁 などを散布すると休眠が打破される.…毒性,目鼻への刺激,飛散した液剤による快適な作業の阻害

など

「花咲かじいさんプロジェクト」のメリット

・薬剤を使わない…環境に優しく,液剤を用いないため,飛散した液剤成分による「快適な作業の阻害」はない.

・大規模な設備を必要としない…コストが安い

処理時間が短い

・電気を使うが,消費電力はわずか…省エネ

装置はどこへでも持って行けます...場所を選ばない

これまでのプロジェクトの研究

ポットに植えたニホンナシ(二十世紀ゴールド)に電気ショックを与えてみました.ステンレスの球に高圧電源の出力をつなぎます.「高圧電源」といってもせいぜい数キロボルト程度です(プラスチックの下敷きで頭をこすると静電気で髪の毛が逆立ちますが,それがだいたい3kVです).直接ステンレス球に触ればすこしは感電します(ビックリする程度です)が,塩ビパイプを使って球に触らないようにすれば問題ありません.電流が小さいため,電力が小さく,樹を枯らすようなことはありません.

屋外で育てたポット植えニホンナシに2013年12月22日(必要低温の60%)に電気ショックをかけました.電源につないだステンレス球で枝をなぞります.枝1本あたりだいたい10秒です.その後,温室に入れて20℃で育てました.強制的に「春 」にしました

そして4週間後…

(a) 電気なし

(b) -1kV

(c) -5 kV

(d) +1 kV

(e) +5 kV

「電気なし」はごくわずかしか花がつきません.低温が不足するとこのように花の数が激減します.花が咲かなければ当然実もなりません.電気ショックをかけたものは程度の差はあれ,「電気なし」よりも花が咲いています.特に-1kVの電気をかけたものは満開に近い状態です.

今後何をするのか?

落葉樹ならサクラを含めて電気ショックの効果があると思われます.しかし,以下のことが不明です.今後このプロジェクトでは以下のことを解明しようと思います.

(1)どのような電気ショックをかければ一番よいのか?: 上の(b)~(e)のように,電圧によって開花に差があります.温度条件と適切な電圧の関係を調べる必要があります.

(2)樹の種類によって必要な電圧条件は変わるのか?:たとえばナシとサクラは同じバラ科ですが,同じ電圧条件で同じように咲くのでしょうか?これがまだわかっていません.

今後の展望

・地球温暖化の対策:落葉果樹の暖地での栽培,花のつきがよくない地域のサクラを満開にする.

・正月に「桜」「梅」「モモ」を同時に咲かせて花見をする.室内の盆栽などに有効.このようなところの大温室でも有効でしょう!

ほかにも,

・亜熱帯地域におけるケシ畑を果樹園に変える.マフィア,テロリスト,暴力団の資金源に打撃を与える

ことを考えています.