嫌気性繊毛虫トリミエマ原虫に見る三者間共生系

原生動物園 Review

嫌気性繊毛虫トリミエマ原虫に見る三者間共生系

著者:新里尚也*

原生動物園 Vol. 3: 19-38 (2012)

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地球は嫌気の惑星

私達人間を始め、身近な多くの生物は酸素が無ければ生きていくことは出来ません。しかしながら、地球上で酸素が存在するのは地上から100 kmまでの大気圏の範囲であり、地下圏を含めた地球全体で見れば、酸素の無い環境が大部分を占めています。また、身近なところでも、粒径1 mmの土壌粒子の内部はすでに嫌気条件になっていると言われています。これは、土壌中に豊富に存在する好気性微生物が酸素を消費し尽くしてしまうからです。水圏においても同様に、水の対流が少ない沼や池の底は酸素の乏しい環境となっています。このような嫌気環境にも多くの生物(主に微生物)が存在しますが、こうした環境では、酸素が利用できないことによる、エネルギーの獲得や栄養素の合成において多くの制約があります。このような環境では、過酷な条件を生き抜くために微生物どうしが互いに助け合い、さまざまな型の共生関係を発達させています。本項では、このような例の一つとして、筆者が研究材料とし用いている嫌気性繊毛虫トリミエマ原虫において見られる、真核生物、バクテリア、アーキアの三つのドメインの共生関係について紹介したいと思います。(続きはpdfで)

*) 琉球大学熱帯生物圏研究センター

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