2018年度論理学上級II @ CAPE主催公開セミナー

今年度も論理学上級IIを(今年はCAPE主催公開セミナーとして)開催しました。

http://www.cape.bun.kyoto-u.ac.jp/capes/ws/

様相論理のシークエント計算というむちゃくちゃなテーマにもかかわらず、10人以上にお越しいただきありがとうございました。

講義で見つかったタイポなど修正したレジュメはこちらからダウンロードできます。

以下は講義要旨です。ブランダムの話はできませんでした。すみません。

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テーマ:様相論理のシークエント計算

本講義では、様相論理のシークエント計算の諸体系を論じる。

よく知られているように、様相論理を標準的なシークエント計算の枠組の上で定式化すると、たとえばS5にかんしては (シークエント計算が満たすべきもっとも重要な性質である) カット除去定理が成り立たなくなってしまう。また、たとえカット除去定理が成り立つ体系であっても、標準的な枠組の上での定式化はどうしても、元々のシークエント計算のスピリットからすると不自然なものに思える。というわけで、様相にかかわる推論を、元々のスピリットに沿った仕方で定式化できるような、新しい、拡張されたシークエント計算が必要である。この講義では、そのような拡張されたシークエント計算として、ハイパーシークエント計算、ラベル付きシークエント計算、ディスプレイ計算の3つを紹介し、それぞれの利点と弱点を概観する。余裕があれば、必然性と可能性という「正」の様相演算子に対置される、「負」の様相 (否定様相) 演算子を扱うシークエント計算についても紹介する。

さて、これらの新しいシークエント計算が示唆するのは、われわれの様相演算子の用法の基底に、これまであまり注目されてこなかった推論構造が存在するのではないか、ということである。本講義の後半3分の1ほどでは、R.ブランダムの「推論主義的意味論」「規範的語用論」「論理的表現主義」といった道具立てを使いながら、様相にかかわる推論構造をどのように理解すればよいか、検討する。