ここではケシキスイ類の採集方法について紹介します。
ケシキスイ科の食性は菌食、花食、樹液食、捕食、腐肉食、果実食性、食葉性、好蟻性など科内で多様(久松定成、1973; Kirejtshuk, 1998; Jelinek et al., 2010 etc.)で、さまざまな環境に食性を変化させて適応してきた一群であると言えます。そのため、いろいろな採集方法を試さないと捕れないとも言えます。
各種のキノコから、食菌性の種類が採集できます。
地面から生えているキノコは、手で抜き取ってから、食器用の水切りカゴもしくはビィーティングネットの上でふるいます。朽木や立ち枯れの木から生えているものは、同様に手でキノコを抜き取ってこれらの道具でふるうか、もしくは下でこれらの道具で受けておいてキノコを手やブラシ等でこすり、昆虫を落下させて採集する方法があります。また、朽木に生えたキノコは、以下に紹介するスプレーイング法で、木ごと殺虫スプレーをかける方法もあります。
その他、スッポンタケやキヌガサタケに集まるシリグロオオケシキスイのように、特定のキノコに集まる種類は、まずはそのキノコを発見する必要があります。
キノコに集まる種類の中でも普通種といえるキノコヒラタケシキスイ等は、ナメコやエリンギなどを、下記に挙げるペットボトルや洗濯ネットを用いたトラップ法でベイトとして用いると、採集することが出来ます。私は、食用キノコをスーパー等で買った時には石づきの部分を捨てずに冷蔵庫で保管しておき、これをベイトとして用いています。
訪花性の種類は、花をスィーピングして採集します。髙い場所に咲いている花は、長い竿が必要になりますが、私は釣具店で販売している磯玉(たも網)用の竿(7~8m程度)とフレームを使用しています。また、ヒゲボソケシキスイ科のように、特定の花に集まる種類は、まずはその花を発見する必要があります。
ビーティングネットをもちいますが、傘でも代用できます。枯葉や枯枝の下でビーティングネットで受けておいて、上から枝などで枯葉や枯枝を叩き、落下させます。
朽木や立ち枯れの木で、そこから生えているキノコに集まる種類や、樹皮下や穴に入り込んでいる種類を効率よく採集できます。
朽木や立ち枯れの木の下に敷物を広げ、木に殺虫剤を吹きかけます。敷物は、私はナイロン製の白いテーブルクロスを使用しています。ビニール製の方が落下した昆虫がすべって脱走しにくいし、後で洗濯する際も容易です。また、白い方が落下した昆虫を見つけやすいです。使用する殺虫剤は、噴出力が強いものの方が、樹皮下や穴などの隙間にも殺虫剤が行きわたり、よいです。
落葉落枝に生息するケシキスイ(例. 落葉下に生息するマルキマダラケシキスイ属Stelidota spp.)を採集するには、落葉落枝を食器の水切りカゴやシフター等でふるい、ザルの上に溜まった大きな落ち葉や枝を捨て、ザルの下のトレイに溜まった細かい落葉落枝から、ツルグレン装置を用いて抽出します。
トラップを用いた効率のよい採集方法を紹介します。
また、これらは大部分が100均で購入することができます。自分でオリジナルのトラップを考案してみるのも昆虫採集の醍醐味と言えます。
地面の上を飛翔するコウチュウ等を採集する方法。地面と垂直に透明な板等を設置し、飛翔しているコウチュウ等が衝突し、下の保存液等を入れた容器に落下します。透明なビニールやプラスティック板を使うことが多いですが、私は100均で売られている、車の後部座席用のサンシェードを衝突版に使用しています(衝突板は必ずしも透明でなくても大丈夫です)。保存液は、数日であれば水に食器用洗剤を数適入れたものでよいと思います。1週間を超えるようなら、保存液使用が良いと思われます。その場合、私は50%エチレングリコールを使用しています。
※トラップは設置したままにせず、必ず回収すること!採集マナーは守りましょう。
私は経験的に、バナナやパイナップルを使用しています。発酵して強い匂いを放つ果物の方が昆虫を誘引するように思います。
気を付ける点は、動物等に荒らされないようにすること。その為、私は、ペットボトル(上部を切り取り、側面に数か所開放部を設け、目立たないように緑や黒色のスプレーで着色したもの)を主に用いています(下写真)。 その他、100均でも販売している洗濯用ネットを用いる方法もあります(下写真)。
また、ヒメアカマダラケシキスイやマルキマダラケシキスイなど落葉下に生息する種類は、落葉下にペットボトル式トラップ(いわゆるノムラホイホイ。ペットボトルの上部を切り取り、逆向きにはめ込む)を設置すると、効率よく採集することが出来ます。
注意点として、トラップを仕掛けるときには動物が届かない高さに設置することも必要です。また、採集許可をとって設置したとしても人目につくと撤去されてしまうことがあるので、人目につかない場所に設置することも必要です。また、ビワなどを用いる場合は、野外で発芽してはいけないので、種を抜いておきましょう。その他、陽当たりが良すぎる場所だと乾燥しすぎることがあるので、木陰に設置するのがよいでしょう。
果物を用いる場合は、洗濯ネットを用いる方法だと乾燥しすぎる場合があるので、ペットボトルの方が誘因効果が持続します。
設置してから2~3日後(遅くとも1週間以内)に回収します。
ペットボトルの底に、キッチンペーパーを二つ折りにして入れておくと、ケシキスイなど微小甲虫の捕獲効率もあがります。キッチンペーパーが果物の汁を吸って昆虫の誘因率が上がると考えられるほか、キッチンペーパーの隙間にケシキスイなど微小甲虫が入り込み、そこにしばらく留まります。
ペットボトルには、テプラ等で番号を付しておくと、どのトラップで何がとれたかの対応もつきますし、便利です。
設計図
設計図
フチケケシキスイ属やキボシヒラタケシキスイ属の仲間は、乾燥した動物質に集まります。乾燥した、というところが重要で、これらの種類は、乾燥して骨と皮になったような動物遺骸に集まります。これらの種類をトラップを用いて効率的に採集するには、ブタやウシ、ニワトリ等の骨を用います。骨を乾燥させるために、上でも紹介した洗濯ネットを用いて中に骨を入れ、風通しのよい場所に吊るしておくと、骨が乾燥した頃にこれらの種類が集まってきます。