柑橘園のケシキスイ類

  • 愛媛県といえば、ミカン。愛媛県出身の私(久松)にとって、柑橘園は身近な場所でした。そんな柑橘園には、実は”そこにしかいないムシたち”が生活しているのです。そんなムシたちをとりあげて、解説します。

  • 柑橘の害虫として、ヒメヒラタケシキスイナミヒラタケシキスイが知られています。訪花性をもつこれらの種は、柑橘の花に訪れ子房を傷つけます(日本応用動物昆虫学会 ,2006)。ただし、個人的な観察では、受粉にも関わっていることは間違いないでしょう。

  • このうちヒメヒラタケシキスイは、成虫・幼虫期を通して一生を柑橘類Citrus spp. の花と果実で送り(久松,1973),気温が10℃以下になると幼虫の発育や成虫の産卵行動が発達することが知られています(Jang & Kim, 2014).

Epuraea domina and flower of Citrus sp.Ehime Pref., Japan, 15. V. 2018, photo by S.-T. Hisamatsu.


Epuraea domina gathering to decayed Citrus fruits. Ehime Pref., Japan, 2. II. 2019, photo by S.-T. Hisamatsu.


  • キムネタマキスイは、ヤノネカイガラムシなどを捕食することから、果樹園で見られるケシキスイ類の一種であると言えるでしょう。一部の種は生物農薬として用いられていることから、有用な益虫であると言えます。





  • 落下した果実には、アカマダラケシキスイモンチビヒラタケシキスイが見られます。

  • アカマダラケシキスイは、柑橘園に限らず開けた果樹園で良く観察されます。幼虫も見られることから、移動力・繁殖力は旺盛と考えられます。また、ウメの果実につくの害虫としても知られています。

  • モンチビヒラタケシキスイは、柑橘園の落下果実で良く観察されますが、開けた果樹園に限らず、森林内でも果物トラップで良く採集されます。特にバナナ等を用いたトラップでは、ショウジョウバエと本種が大量に確認されることが多いことや、頻繁に飛び立つ様子が確認されることから、ショウジョウバエ並みに、移動性はかなり高いと考えられます。

アカマダラケシキスイ


モンチビヒラタケシキスイ


コラム:私(久松)の父親は昆虫学者で、ケシキスイが主な専門でした。50過ぎの子どもであったので、キャッチボールなど普通の遊びをすることはなく、趣味と教育を兼ねて?一緒に昆虫採集に出かけることが多かったです。しかし、父が採集するものはカブト・クワガタではなく、ケシキスイなどのいわゆる”雑甲虫”でした。タヌキの死体や腐ったミカンを転がして嬉しそうに芥子粒のようなムシを採集する父親を見ながら幼少期を過ごした私は、昆虫に目覚める訳もなく?本当に昆虫の研究をしようと思ったのは大学の学部生になってからでした。学部までは一般職に就職しようと考えていた私でしたが、昆虫に目覚めてからは方向転換をして、大学院に進学、昆虫の研究を始めたのでした。