数学II+演習
担当 平地 健吾 <hirachi@ms.u-tokyo.ac.jp> TA 池 祐一,三浦達哉
このページでは1年生理Iの線形代数の講義情報をのせます。
参考書「線形代数学」川久保勝夫著、日本評論社 1999
授業では使いませんが標準的な参考書としてあげておきます。
改訂版は緑色です.
場所:533教室
時間:火曜3時限13:00--14:30,演習は4時限14:50--16:20 隔週全6回
期末試験の問5の解答例:
1 A^N=OであればAの固有値は0のみ.よって固有多項式はx^n. ケイリー・ハミルトンの定理よりA^n=O
2 V_m=Im A^mとおくと
火曜日の講義日程 (*演習あり)
10/8, 10/15, 10/22*, 10/29,
11/5, 11/12*, 11/19, 11/26*,
12/3, 12/10*, 12/17
1/7*, 1/14, 1/21*, 1/28
●10/8の講義 1
・抽象的なべクトル空間の定義と例(多項式、数べクトル、行列、微分可能な関数の空間)
・部分空間の定義と例(いくつかのべクトルで張られる部分空間)
・ベクトル空間の間の線形写像
・線形写像の像と核は部分空間であることの証明
●10/22の講義 2
・線形写像の像と核の計算例: 微分作用素 d/dx, d/dx-1, 行列で与えられる写像の場合
・一次独立と一次従属の定義
・数べクトルの一次独立性と一次方程式を解いて判定する
・零べクトルを含むべクトルのリストは一次従属;二つのべクトルが一致すれば一次従属
・定理: v1, . . . , vn が一次従属
⇔ ある i にたいして viは v1, . . . , vi-1, vi+1, . . . , vnの一次結合
⇔ ある i にたいして v1, . . . , viは一次従属
・定理: 正方行列 A = (v1, . . . , vn) にたいして v1, . . . , vnが一次独立 ⇔ |A| = 0
●10/29の講義3
・定理: s > r であれば v1, . . . , vs ∈ S[w1, . . . , wr ] は一次従属
・基底の定義と例: 数ベクトル空間の標準基底, 多項式の空間の単項式
・有限生成ベクトル空間は基底をもつ
・一次独立なべクトルのリストにべクトルを付け加えて基底を作ることができる
・次元と定義と次元が一通りに決まることの証明
・部分空間 U ⊂ V にたいし dim U ≦ dim V かつ等式は U = V のときのみ
・n 次元ベクトル空間はn次元数ベクトル空間と線形同型である.
・基底の変換行列は正則(逆も正しい)
●11/12の講義4
・線形写像の表現行列
・線形写像のランクと行列のランク(列べクトルに関する次元)
・写像のランクと表現行列の基本変形によるランクの定義の同値性
・ランクと核の次元の和は定義域の次元に等しい
●11/19の講義5
・固有値と固有ベクトルの定義と例
・固有値が存在しない実行列の例
・固有べクトルの幾何的な意味.実固有値が存在しなくても複素固有値が存在する例.
・固有方程式を用いた固有値の計算方法(2次,3次行列での計算例、上半三角の場合の計算)
・一般の線形写像に対する固有多項式の定義と例.
●11/26の講義6
・行列が対角化可能である必要十分条件は「固有ベクトルからなる基底が存在する」
・2次正方行列が対角化可能なのは「スカラー行列であるとき」または「固有方程式が相異なる根を持つとき」
・異なる固有値の固有べクトルは一次独立である
・固有空間の次元は固有多項式の解の重複度以下であることの証明
・行列が対角化可能である必要十分条件は「固有空間の次元が固有方程式の解の重複度と一致する」(証明は次週)
●12/3の講義7
・行列が対角化可能である必要十分条件は「固有空間の次元が固有方程式の解の重複度と一致する」(証明の続き)
・2次正方行列のジョルダン標準形
・3次と4次正方行列の対角化の計算例
・複素行列の三角化の証明
●12/10の講義8
・多項式への正方行列の代入;行列の積と多項式の積の対応
・ハミルトン・ケーリーの定理の証明(複素行列の場合)
・ハミルトン・ケーリーの応用:行列のベキの計算、逆行列の多項式としての表示
・内積空間の定義 (実数上のべクトル空間の場合)と例:ユークリッド空間、L^2空間
・内積の基本性質:中線定理、ピタゴラスの定理
●12/17の講義9
・シュワルツの不等式、三角不等式
・正規直交系:直交系の一次独立性、シュミットの正規直交化
・ベクトル空間の直和の定義
●1/7の講義10
・直交補空間の定義
・二次元空間だと直線の法線が直交補空間、3次元空間だと平面の法線が直交補空間
・有限次元内積空間は部分空間とその直交補空間の直和であることの証明
・内積を保つ線形写像は等長線形写像でありその逆も正しい
・等長写像は単射であることの証明
・等長線形変換を直交変換という
・内積空間は次元が一致すれば計量同型である
・随伴写像の定義と存在証明
演習問題[5]のベクトルaは長さ1でないと鏡像になりません.問題を修正しました.
●1/14の講義11
・随伴変換は転置行列に対応する
・直交変換 ⇔ 随伴が逆写像
・直交行列 ⇔ 列ベクトルへの分割が正規直交基底
・Hermite 内積の定義といくつかの注意
・Hermite 内積の実部は実内積を与える
・Hermite内積に関する随伴の存在
・Hermite行列とユニタリ行列の定義
●1/21の講義12
・Hermite行列の固有値は実数であり,固有空間は互いに直交する
・Hermite行列のユニタリ行列による対角化
・対称行列の直交行列による対角化の計算例
・正規行列のユニタリ行列による対角化を目指して準備をする:
・正規行列Aの固有空間とA^*の固有空間の対応
●1/28の講義13
・正規行列の相異なる固有空間は直交する
・正規行列の不変部分空間と直交性
・正規行列の対角化
・二次形式の標準形と符号数
・Sylvesterの慣性法則の証明
・符号数の計算例
期末テストのポイント(講義の最後で説明したことと同じ)
・行列の対角化の計算ができる.
・対称行列の直行行列による対角化が計算できる.
・一次独立性についての簡単な議論ができる(演習問題を復習).
ここまでできれば60%です.
●夏学期に習ったこと(下村先生の講義内容メモ)
1. 行列
1.1 複素数(基本事項のまとめ.厳密性には欠けます.)
1.2 行列(行列の定義と演算等)
1.3 正方行列,正則行列
1.4 行列の区分け
1.5 行列の基本変形(掃き出し法)
1.6 行列の階数
1.7 連立1次方程式の解法(掃き出し法による解法)
1.8 転置行列,共役複素行列,随伴行列
2. 行列式
2.1 写像(写像,単射,全射,全単射,逆写像,合成写像等)
2.2 置換
2.3 行列式
2.4 行列式の性質(多重線型性,交代性,行列の積の行列式等)
2.5 行列式の余因子展開
2.6 余因子行列とその応用(余因子行列と逆行列,クラメルの公式等)
付録A
・数ベクトル空間に於ける線型写像と行列
・数ベクトル空間の間の線形写像とその表現行列
・線形写像の合成は表現行列の積に対応する
・同型写像と正則行列の対応