2013年1月、蕨平住民による原子力損害賠償紛争解決センターへの集団申し立てが25日になされるに先立ち、
前日の24日に原発被災者弁護団事務所(東京・虎ノ門)にて記者会見が行われた。
以下は会見前半に弁護団から申し立て内容の説明を受けたのちの質疑応答である。
【出席者】
蕨平区長・志賀三男氏 副区長・菅野哲男氏
弁護団(秋山直人弁護士、山下瑞木弁護士、橋本華織弁護士)
【質疑応答】
志賀:蕨平地区は中山間地の小さな集落でございます。
東電の賠償の基準というのは、わたしらから見ればほんとに最低限の基準だというふうに考えて
おりまして、農業再開それから生活設計が成り立つ賠償をお願いしたいというふうに考えております。
菅野:わたしたちのふるさとというのは山間(やまあい)なんですね。
V字になった中央を川が流れて、その裾野に農家があるんですね、農地があって。
そういう状態の中で文科省ですか、モニタリングをやってますよね。
それも上空300メートルからやってるわけですよね。
それでこの前、除染の説明会というのがあったんですけども、
その中で、宅地と農地、それしか除染しないって言うんですよ。
ところが、300メートル上空から測っても放射能が検知できるのに、
たかが50メートル100メートルの範囲内の除染をしても、われわれ帰れないんですよね。
ですから、そのへんを酌んでいただいて、それに見合った、
再度生活設計できるような賠償を強く求めていきたいと思います。
――1世帯あたりの賠償の請求額はいくらからいくらまででしょうか。
弁護団:かなりばらばらでして、960万がいちばん少ないんですけど、これは不動産の損害だけの方で、
蕨平に不動産をお持ちですけど、仙台かどこかにお住みで蕨平に不動産だけを持ってる(慰謝料は対象外)。
いちばん多い世帯ですと3億300万、家族が多くてですね、いろいろ不動産が多かったり。
そういう世帯は金額が大きくなります。
――東電が帰還困難区域以外の居住制限区域の中で線量が高いと認めている地区が
ありますよね。比曽地区とか前田・八和木地区、こちらのほうは申し立ては。
弁護団:弁護団としては相談等は受けてないですね。
志賀:わたしどもも聞いていません。
――資料に「約30世帯、約101人」とあるんですが、「約」がついてるのは・・・
弁護団:消していただいて・・・「30世帯、101人」が明日(1月25日)申し立てます。3世帯は、また追って申し立てます。
――3世帯の方は、やることは決まってるんですか。
弁護団:やることは決まってます。ちょっと準備が間に合わなかったので。
――50世帯、震災前人口の話なんですけど、なんで「約50世帯」なんですか。
志賀:正確に言いますと、48世帯です。
――人数が出ていないんですけど。
菅野:財物だけの人がいるので、こういう形になっちゃうんで。集落の人口は171人です。
――土地の賠償なんですけども、これは農地・山林もこの基準(福島県住宅地平均価格)で算出されるわけですか。
弁護団:農地・山林についてはそうではないんですけども、農地・山林についての請求額は
まだ方針が決まってなくてですね、農地・山林についても賠償を求めるけれども、
相当額の賠償を求めるという程度しか、現段階では決まっていません。
センター(原子力損害賠償紛争解決センター)のほうでも、まずは住宅の賠償をどうするかという話で、
なかなか農地・山林の賠償まで議論がいってないんですね。
なので今回の申し立てでも、そこはまだ金額等は出してないです。
――ひと足さきに集団申し立てに動いた長泥地区の鴫原良友さんとちょっとお話をしたんですけども、
今回蕨平のほうでも動かれたということで、これまで長泥が一地区だけで動いていたことで
孤立してしまうんではないかと不安を感じていたところで、非常に心強く感じていると、
隣の地区でもあるし協力し合えるところがあれば協力し合ってやっていきたい、というふうなことを
おっしゃっていたんですけども、そこらへん志賀さん菅野さんのほうでは、どうお考えですか。
志賀:はい、わたしらもそれは。そういう話は以前から長泥区長のほうから上がってましたし。
弁護団:もともと長泥の区長からの紹介ですね。
志賀:そうですね、蕨平もやってはどうかという。
――弁護団としても長泥で進んでいる動きと連動する形でということを考えておられるわけですか。
弁護団:そうですね、完全に連動してますんで。
弁護団のメンバーも、全員同じではないんですけど共通してやってます。
――長泥との差額はいくらになりますか。精神的損害に対する慰謝料ですとか・・・
弁護団:長泥は60カ月、2012年の6月から。蕨平の場合は2012年6月から46カ月分というのが
東電の包括請求の基準で、そこに14カ月分の差があるわけですけど、それは慰謝料の話です。
――それかける人数ということで、その差額が・・・
弁護団:ま、計算的にはできるかもしれませんが・・・。
――財物はたしか、蕨平の場合は解除見込み時期が5年で財物賠償が6分の5ですから、
6分の1が差額ということになるわけですよね。
弁護団:そうですね、ただあくまで東電基準の話であって、
もともとは東電基準の賠償では足りないというところが大きな主張であるわけですね。
ですから6分の1だけプラスしてもらえばいいという話では全然ないということがあるんですが。
――今回の請求総額42億円の中では、それについては6分の6で計算しますという話ではないんですか。
弁護団:慰謝料等については弁護団の主張なわけですね、東電基準とは全然違う。
財物については損失補償基準で建物なんかは賠償してほしいという基準なんですけど、
それがいくらなのかというのは鑑定してもらわないと数字が出ないんですね。
鑑定にもお金がかかるので、まず鑑定費用を払ってくださいという請求なので、
とりあえず東電基準で計算してみて、全損という評価でとりあえず計算して、
一部請求として今回の申し立てでは請求するんです。
財物については東電基準の6分の6という水準で、とりあえず請求する、建物については。
土地はちょっと違うんですが。土地はさっき説明したように福島県内の平均的な住宅地の価格で請求します。
――現状では不合理な賠償しか得られないという、不合理の点についてなんですけど、
いま現実に不十分な賠償しか得られていない状態とは例えばどんなものが・・・
つまり将来的に計算していったときに今後これくらい差が出てくるんじゃないかということではなくて、
現在こういうことで困ってますみたいなことがあれば教えてもらいたいなと思うんですけど。
いま支払いを受けているレベルのもので。
弁護団:慰謝料にしても月10万という金額なんですが、じゃあそれで生活再建が
できるのかという話だと思うんです、要するに。ずっと避難生活が続いていて・・・
志賀:月10万なんですけども、10万の中には光熱費とかそういったものも含まれますよね。
菅野:説明会なんかでは、光熱費など生活費の増加分は一定額含まれるっていうんです。
それで、その一定額っていうのはいくらなんですかって聞いたんです。
そしたら、だれも答えられる人がいないんです。
ふつう「一定額」って言ったら基準があるですよね、一定なんですから。
その10万円の中に一定額っていう基準があって、これを越えれば賠償して
もらえるんでしょっていう話をしたんですけども、それは絶対認めないんですよ。
これ(会見資料)にも書かってるように、それ(被災)までは(水道光熱費は)ほとんど
かかんなかったわけですから、その分は当然として原発事故による増加分ですね、
それをハあ慰謝料の中に入れちゃってるってこと自体が、われわれとしてはもう、我慢の限界になってるんですよね。
――月10万円というのは1人あたりの額ですか。それとも1世帯・・・
弁護団:1人です。
――例えば長泥の方と違うんですか。
弁護団:それは同じです。
――いま現在、ここのところが違っちゃってるというところは何かあるんですか。
弁護団:基本的な賠償の考え方として、月々いくら×何カ月・・・
長泥と蕨平、帰還困難区域と居住制限区域でどんな差があるかというと、
要するに基準額に何カ月をかけるか、というところで差がついてる。
あるいは財物に関して言うと、長泥に関しては全損評価、事故から6年帰れないので全損評価、
蕨平の場合は一応帰れることを見込んでいるので「使用不能期間」、
そういう表現だったかどうか正確ではないんですけど、そういう考え方なので、
かける数字が変わってくるというところで賠償金額が、いわゆる東電基準による賠償金額でも
差がついているという理解になるかなと思います。
――財物賠償はまだ決まっていないということで長泥でもまだ始まっていないんですが、
包括請求はもう決まっているので、長泥は5年分もらえるけれども蕨平はそれだけもらえないということで、
現状でもう差がついてるわけですね。
弁護団:そうです。そこで140万(14カ月分)の差がついてるってことです。
――包括請求をしている方は蕨平では・・・
弁護団:多いですね、蕨平では。申し立てをする前に包括請求が始まりましたんで。
ただ、それをもらったら全部終わりということではないので。東電基準のところは支払いを受けて、
足りない部分を請求するという形ですね。
――そもそもなんでこういうことになってるかというと、文科省のモニタリングが実態を反映していないんじゃないか
というところが、この話につながると思うんですけど、そのへんについてはどう思われますか。
志賀:航空機モニタリングの調査をした日が2月6日のデータだったんですが、
その当時蕨平地区にはかなりの積雪(50センチ)があって、雪の遮蔽効果があってこういう
(実態と計測値の)差が出たのかなと思ってるんですけど。
――長泥には雪はなかったんですか。
志賀:いや、降ってます(笑)
――それなら条件は一緒ですよね。
菅野:ええ、ただデータの中には「降雪地帯」というデータが長泥にはあるんですよ。蕨平にはそれがないんです。
弁護団:雪が降っているのでその影響を考慮しますという値なんですけど・・・
菅野:蕨平には、それがないんです。その降雪データも、
NASAの地球観測衛星から得たデータを簡単にやったみたいで。
航空機に3人だか乗って実際に飛んでんですよね、そのときに下が見えるはずなんですよね、
50センチの雪があったら、たいがい分かりますよね、そこを全然考慮してないっていうか、
その目で見たデータは入ってないんですよね。あくまでも衛星からのデータなんです。
あと、これは(手書きのメモを回覧)配ることはできないんですけども、去年(2012年)の5月ですね、
文科省の●●●さんていう方がモニタリングポストの線量調査をしたんです。
それの結果、表示と違いがありますよね、2μ(Sv/h)ぐらいずつ。
その低いほうのデータが全国なり福島県なりに(公式データとして)出てるんです。
これは文科省の人が実際に測ってて、ちょうど測ってるときに(わたしがそこに)行ったもんだから、
この記録を書いてくださいって言って書いてもらって。
――例えば福島県内のほかの地域でも、ホットスポットとして指定されたところとされないところで、
道を挟んで(補償を)もらえるところともらえないところで軋轢を生んだという話を聞くんですけれども、
長泥と蕨平の間でそういう不公平感が生じるということはありませんか。
菅野:当初はありましたね。なんて言うのかな・・・ほんと、部落の境界線で、
10メートルも離れてないところに家(うち)があるんですよ。
その人の思いと、長泥地区の思いと、全然違うんですね、やっぱり。
どこに壁があんだとか、ほんとにここで線量がピタッと違うのかとか。そういう思いがあって、
それでわれわれ、いろんなところに陳情したりしたんですけども、ほんと紙一重なんですよ。
どっかのメディアさんが、バリケード張ったときに、蟻は自由に行き来してるのになあって言ったんですよね。
まさしくそうなんですよ、空気も自由に行き来してるけども、そこで区切られてる。
そんな不合理な話が実際にあったんで、そこからわれわれも、おかしいんじゃないかってことで、
申し立てということに発展していったわけですよ。
弁護団:陳情を県とか村とかにして、あと東電に24年6月から46カ月分の慰謝料を払うってところまで
行ったんですけど、何もしなかったら居住制限区域だから3年で、っていう話だったんですよね。
菅野:そうです、事故後3年で終わりだったんです。
ですから、本当なら5月の末には決まるわけだったんです、区域再編が。
それをわれわれがいろんな陳情したりいろいろな事情がありまして、7月17日まで延びちゃったんです。
ただ、そこでなんで終わったかというと、どんどんどんどん、死んでく人がいるんですね。
そうやって区域再編をしないで、いつまでもだらだらだらだらやってると、うまくないわけですよ。
一括請求ができなくなっちゃうんですよ。それが条件ですから、あくまでも。
それなんで、一応このへんだなっていうことで7月17日で受け入れをしたわけです。
――地区の中のみなさんが集団申し立てをしていない(住民の約3分の1が不参加)ということは、
地区の中でもいろいろ意見はあるわけですか。
志賀:いや、そういうことではなくて、一人世帯であるとか高齢者であるとかで
必要な書類が揃えられないっていうのが、今回はずれている人たちです。
――じゃあ、みなさんの意志としては、申し立てに参加してきちんと賠償を請求したいと。
志賀:そういう思いでやってます。
(本日の記者会見は終わりたいと思います、ありがとうございました)
(以下、記者会見後、志賀氏・菅野氏にメディアが個別に質問する中から拾えたもの)
――当初は帰還困難区域に指定されなければ除染に協力しないということをおっしゃってましたよね。
菅野:それで延ばしてると、どんどんどんどん死んでっちゃって・・・人が死んでたんですよ、あの頃。
避難に伴って、一人で。あんまり延ばしてると、死んだ人が補償を受けらんなくなるっていうことがあって。
それで、とりあえず条件をつけて承諾しようってことにね。
――(絶句)蕨平で何人くらい亡くなったんですか。
菅野:5人・・・
――長泥みたいになって賠償はそれなりに手厚くなるけれども帰れなくなって
除染もなかなか進まないということになるか、へんな話ですけども、これで蕨平が長泥並みの賠償をもらえたら、
長泥の人にとってみれば除染もされるし出入りも自由なのにずるいじゃないかって、逆にならないかなって
ちょっと意地悪な考え方ですけども・・・
菅野:(笑)意外とそうでもないみたいですよ、長泥の人は。それよりも6年間で除染して戻って、
ほんとに生活できるかってことがみんなありますから。
――特に蕨平なんて、ほとんど山ですもんね。
菅野:そうです、さっきも言ったように、こういう(V字形の)ところですから。
農地と宅地だけ除染しても山から来る放射線で・・・実際、草野小学校をモデルでやったんですけども、
もう戻っちゃってますから、除染したところが。校庭なんかが戻っちゃってて。
――環境省の事業ですか。
菅野:はい。ですから山からやんないと・・・。
(菅野氏の個人積算データを見ながら)
菅野:電池が1カ月しかもたないんで、あんまり長くはやってないんですけども。
――草野でもずっと個人の積算データを取ってる人がいますね。草野の大倉に近いほうで
線量も比較的低くて、これだと年間10mSvくらいかなという感じですね。
菅野:わたしは2カ月で5mSvですから。
――(志賀さんは)仮住まいはどちらなんですか。
志賀:伊達です。伊達市内の借り上げ住宅で。
――そうするとほかの住民の方とのコミュニケーションは・・・
志賀:平日は仕事を持ってるんで、極力日曜日に、福島市内に集まってもらって。
――さっきも副区長に聞いたんですけど、これで賠償が長泥と一緒になったら、
長泥の人たちは除染も始まらないし中に入れないしっていう状況じゃないですか。
でも一方、蕨平は除染も始まるし中にも自由に入れるし、それで賠償もうちらと同じだとなると、
逆の不公平感が出てきませんか。
志賀:ど・・・うなんだろうね、それはね。むしろ長泥地区の住民は、蕨平も同じ条件でっていうのを
望んでんのね。長泥区長に言わせれば、長泥だけが取り残されてしまうっていうふうな思いがあって・・・。
――まあ当初はそうでしたね。そもそもなんで行政区域ごとになったんですか。
それだから道を挟んでどうのこうのって話が出てきちゃうんだと思うんですが。
志賀:村長の考え方ひとつなんだね。
――村長はしきりに「不公平のないように」とおっしゃってましたけどね。
志賀:まあ言葉ではそういうふうなことは言うけれども・・・
――だから1戸ごとに測定してってやっていくと地区の中のまとまりが・・・
志賀:コミュニティーを重視したという形なのかね。でも地区のコミュニティーよりも
家族のコミュニティーがなくなってんだから、そういう話ではないべってなことを村長にも言ったんだけどね。
――比曽のほうでもやっぱり、かなり高線量になるお宅があって、
だけども地区のまとまりに従うからということで決まったようですけど。
志賀:比曽はそうなったみたいだね。
――できれば飯舘村はみんな一緒の賠償を受けてという・・・
志賀:いまになって、みんなそういうふうなことを言い出してるね。
――ほかの町村がそういうふうになってるから、それを見てってこともあるんでしょうね。
志賀:だから区域の再編が飯舘村はちょっと早すぎたんじゃないかって言ってるね。
ほかの町村と歩調を合わせてもよかったんじゃないかっていう。先を急ぎすぎたっていうか。
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【会見資料】
飯舘村蕨平(わらびだいら)行政区集団申立ての請求概要
原発被災者弁護団
飯舘村蕨平行政区(以下「本件地区」といいます。)の住民による原子力損害賠償紛争解決センターへの集団申立ての請求概要は、以下のとおりです。
1 申立人
蕨平行政地区住民(約30世帯、約101人)
請求総額 約42億円
なお、本件地区の震災前人口は、約50世帯(住民の約3分の2が参加)
蕨平地区は、帰還困難区域に指定された長泥地区に隣接している。
2 本件申立ての最大の特徴
蕨平地区の放射線量は、帰還困難区域に指定された飯舘村長泥地区と比べて、同程度かむしろ高い。にもかかわらず、蕨平地区は政府により居住制限区域に指定されたため、住民は不十分な賠償しか得られないという不合理が生じている。
本件申立ては、同地区の住民が、東京電力に対して、そのような不合理を是正し、帰還困難区域と同等の賠償を請求する最初の一斉申立てとなる。
3 主たる請求内容
(1)被曝自体に伴う精神的損害 金500万円
蕨平地区は、原発事故直後から放射性物質により強く汚染された地区である。しかし、同地区を含む飯舘村が計画的避難地域に指定されたのは2011年4月11日であり、蕨平地区住民が避難を完了させたのは同年5月下旬である。住民は2カ月弱の間放射性物質に汚染された本件地区で生活したことで、警戒区域内の地区と比しても著しい被曝をした。
(2)避難に伴う精神的損害 金1000万円(2012年7月から2017年7月までの損害)
経産省によれば、居住制限区域の解除見込み時期は基本的には3年である。飯舘村の蕨平地区、比曽地区、前田・八和木地区の3地区については、居住制限区域の中でも線量が高いことを東電も認めており、包括請求における慰謝料を2012年6月から46カ月分認めている。
この点、蕨平地区の放射線量が帰還困難区域に指定された長泥地区と同程度かむしろ高いことからすれば、少なくとも帰還困難区域と同じく5年間の立ち入りが制限される可能性は極めて高い。そのため、本件申立てでは、帰還困難区域と同様に避難区域再編から5年間の慰謝料の一括払いを求め、その請求金額を1000万円としている。
(3)財物損害(土地・建物) 損失補償基準を用いた評価額の賠償
土地・建物の賠償額について、帰還困難区域と同等の全損評価の賠償を求める。建物の評価方法は、公共用地の取得に伴う損失補償基準を用いた簡易の鑑定により算定する方法により請求する。
(4)家財道具の賠償
東京電力による家財道具の賠償基準は、基準の算定根拠が明らかにされていないばかりか、世帯主の年齢等が考慮されていない。本件申立てでは、財団法人損害保険料率算出機構作成の統計資料に基づき、賠償を求める。
(5)農機具類の賠償
蕨平地区住民の多くはトラクター等の農機具類を多数所有しており、その購入金額の合計は、1世帯あたり数百万円から数千万円に及ぶ。
(6)水道・光熱費の増加分の賠償
原発事故前、蕨平地区住民は、地下水や薪ストーブなどを使用していたため、住民のほとんどが避難前に比し水道・光熱費が増加している。
以上
【参考資料】
飯舘村蕨平地区集団申立てにおける不動産(特に建物)に対する損害賠償額の算定について
土地・建物の賠償額について、帰還困難区域と同等の全損評価の賠償を求めます。
また、建物の評価方法は、公共用地の取得に伴う損失補償基準に準じて算出する方法を採用するよう求めます。具体的には、算定費用(1世帯21万円)のみを先行的に請求し、専門家に依頼して損失補償基準に準じて算定し、同等の建物を再取得できる相当な賠償額を求めます。
1 理由
○蕨平地区の放射線量は、帰還困難区域に指定された隣接する長泥地区と同等以上に汚染されているので、帰還困難区域と同等の全損評価の賠償がなされるべきです。
○帰還困難である以上、新たな土地に建物を取得して生活再建しなければなりません。したがって、同等の建物を再取得できる相当な賠償額が必要です。同等の建物の再取得費用の算定方法としては、以下のとおり、東電基準では不十分ですので、損失補償基準に準じた相当な算定方法が採用されるべきです。
2 東電基準の問題点
●例外なく経年減価算定するので、補修を繰り返しながら先祖伝来の建物に住んでいた場合、同等の建物を再取得することは困難です。
●算定方法が相当であるのか検証されていません。
3 損失補償基準とは
公共事業の際に移転を余儀なくされる不動産等に対する補償額の算定方法です。昭和37年6月29日の閣議決定により要綱が定められ、その下位規範に基づいて補償額が算定されます。被災者は、原発事故によって移転を余儀なくされるのですから、建物の賠償は損失補償基準に準じて算定されるべきです。
4 損失補償基準の利点
○同種同等物の再取得費用が算定されます(取得価格や売却価格ではない)。再取得に伴う各種費用も算定できます。
○補修された建物は減価率が調整されるなど、築年数の長い建物にも配慮して算定されます。
○昭和37年の閣議決定により定められた公の基準であり、以後約50年にわたり、裁判所等によって算定方法の相当性が確かめられてきました。
5 土地について
福島県内の平均的な宅地を購入できるよう、1平方メートルあたりの福島県住宅地平均価格に合計地積を乗じた賠償額を請求します。