投稿日: Jun 27, 2013 5:34:46 AM
夏休みだからって、いつまで寝てるの?
母親から起こされると時間は10時、芽郁は洋館のことを思うと気が立って寝付けなかった。
ずっと、夢を見ていたような気がするけど・・・覚えていない。
ずいぶん汗をかいてる、喉がカラカラ
冷蔵庫から、オレンジジュースを取り出すと、容器のまま、ゴクゴク飲む。
中学の時にテニスをやってたからか、そういうの気にしない。
パジャマのまま、浴室に向かうと来ているもの全部、洗濯機に放り込む。
頭から冷たいシャワーを浴びると身が引き締まってくる。
うーん もう少し・・・膨らまないかな
毎回思うことだが、どうなるわけでもない。
体を拭いたバスタオルを巻くとそのまま部屋に戻る。
芽郁!! 母親の叱責が追いかけてくる。
あ、ママ、今日、出かけるから~
薄いブルーの地に紺のストライプが入ったお気に入りのサマードレスに袖を通す。
襟と袖口の白がポイント。
妹に髪の編み込みを手伝ってもらい、おさげにする。デート?、デート?とうるさい。
洋館のことを話せば、連れて行けと駄々をこねるに決まってるから言わない。
普段から、化粧も薄く、するのも慣れなくて、苦手なのだけど、思い切って紅いルージュを塗ってみた。
なんか違うww
ルージュを拭い取った芽郁は、家を出ると手ぶらってわけもいかないので、近くの洋菓子店へ向かう。
中で軽く昼食を摂ると、人気のフルーツタルトをワンホール奮発する。
その間に激しい通り雨が、街を冷やして、空気の透明度を増していた。
時計を見ると2時前、芽郁は慌てて席を立った。
いざ、門の前に立つと緊張した。両開の門は重厚な木造りで見上げるほど。
ここに来ていいの、私?
来る途中、垣根の隙間はなくなっていた。
昨日のは、白昼夢じゃないよね?
呼び鈴を押そうか、押すまいか迷う芽郁を尻目に、扉がスーっと開いていく。
監視カメラで見られてたらしい。
扉が開くと待っていたメイド服の女性が、会釈する。
メイド服の女性じゃなく、メイドさんww
いらっしゃいませ。主人がお待ち申しております
黒い大きな瞳に、黒い髪、黒いドレスに白いエプロン、ふんだんに飾られたレース、小さくて、まるでお人形さん。
なのに、この巨乳っぷりは何!!!
メイド服の作りが余計に際だたせている。
釈然としないまま、あとに続く芽郁。
目の前に広がる庭と屋敷に、そういうことをすっかり忘れてしまう。
小学校くらいありそう・・・
中に入るとさらに圧倒される。
高い吹き抜けの天井。大きな広間に大きな階段。
あちこちに飾られる美術品、アンティークな調度品。
2階に通され、絨毯を敷き詰めた長い廊下を進むと何番目かの部屋に通された。
20畳ほどの部屋で、床はいろいろな石を敷き詰めて、六芒星(後で聞いた)を形どった万華鏡みたい。
その奥のテラスに夫婦が寄り添って、立っていた。
やあ、よく来てくれたね
逆光でシルエットになっている男性は、白い開襟シャツと黒のパンツ。
シンプルなだけに肩幅が広いのが強調されている。
奥様は、オレンジのタイトな花柄のワンピース、雰囲気で微笑んでいるのがわかる。
勧められてテラスに出る。
お招き、ありがとうございました
うん、来てくれて、嬉しいよ
声がやばいです。
その上、奥様は男子の胸辺りに腕を回し、密着。ヒールのせいで同じ顔の高さの奥様の耳元で、
ね、可愛い子だろ。・・・気に入ったかい?
とか、ああ、禿げます。
それに19歳で、可愛いなんて、言われると心臓が痛い。
来てくれたから、訴えないことにしよう
あ、ありがとうございます
大きな手が差し出される。日焼けした筋肉質の腕。父とずいぶん違う。
漆黒のやや長めの髪を後ろに撫でつけている。
私は、○○ ○○・・・
温かい・・・大きな手、あ、あ、名前、英語っぽい?よく聞こえなかった。
それと、妻のレイナ
軽い会釈が軽やか 長い髪が広がり、いい匂いが流れてくる。細い身体、細い腕、小さい手
み、瑞島 芽郁です。よろしくお願いします
めぇ・・・めぇーい?
妻は言葉に障害があってね。慣れない言葉は、上手く発音できないんだ。済まないね。
再び、腕に腰が回る。なんて、リア充!!
・・・メリー!
満面の笑顔で、奥様はそう言うと、同意を求めるようにご主人を見つめる。そこ、近いですww
・・・メリーか、いいね?ここでは、メリーと呼んでもかまわないかい?
5月生まれで芽郁(メイ)、そんなに気に入ってるわけじゃないし、メリーって、なんか新鮮
え、はい。いいですよ・・・きゃっ
突然の風が、髪をかきあげる。風の吹いてきた方向、庭のむこうに、きらめく海と空が広がる。
景色がいいだろう。海しか見えないから・・・。用意ができたようだ、かけたまえ
案内してくれたメイドさんがワゴンのそばに姿勢よく立っている
テーブルに焼き菓子が並んでいる。いつの間に、準備したの?
あ、私のタルトもある、良かった
妻が焼いたんだよ。口に合うといいんだがね
目の前にガラスのティーカップ。薄い青みを帯びたガラス製で、中の気泡が海の中みたい。
とっても高価そう
君のイメージだって、レイナが選んだんだ。フレーバーティーも、ブレンドしたんだよ
注がれるアイスティー、ほのかに香る、さややかな味が口に広がる。美味しい。
これ、美味しいです。それにこのカップ可愛い
奥様が、そっと立ち上がると、私の顔を見つめ、ぱっと花が咲いたように笑う。
子供みたいに笑うんだ、レイナさん、素敵
・・・え゛、えっ
そのまま、ご主人様の首に抱きつき、激しいキスwwwww
リアルでこんなに長いキス、激しく動揺しちゃう
ああ、力が抜ける、もう
カチン
あ、カップ、割れちゃった。・・・血?切れちゃってる?
ぼーっと眺めている指先から、血が滴り落ちる。その指をメイドさんがパクって・・・え、パクって、何?
ええーーっ、吸ってる。吸ってるやんwwこれ、恥ずかしい。
あ、でも、横顔、綺麗。・・・って、見とれてる場合じゃー。それに服の上にポットの中身が、溢れてる。
何をしているんだ、スノウ
メイドさんから、声が漏れ、指から離れる。険しい顔のご主人が、彼女の髪を掴んでいた。
この、カス
メイドさんの可愛い顔が痛みで歪む・・・なんだかゾクッとする。
動悸が激しい。指の傷から、血が全部流れ出しそう。
ズキズキする。どれだけ血が流れたの?
めまい・・・?
第2章 終わり