社会心理学研究に有用な情報たち

Web上で詳細が参照できたり,ツールをダウンロードできたりする,社会心理学研究に有用な情報のリストです.広報委員会の知る範囲の情報を掲載しておりますので,「是非これは掲載すべき」という情報があれば是非お知らせ下さい.いまのところ,あまり量がないのでカテゴリに分けるなどはしていません.なお,各情報の具体的な内容に関しては広報委員会の責任の範囲にありませんので,リンク先のWebサイト/ツール作者に直接お問い合わせいただけるようお願いします.

▶【研究技法】経験サンプリング法

尾崎由佳氏(東洋大学社会学部)による,「経験サンプリング」技法に関するマニュアル.経験サンプリング(Experience Sampling)とは,日常生活を送っている調査回答者に対して,一日数回×数日間にわたり,定刻もしくは無作為な時刻にシグナルを送り,その時点での現状報告を求めるという調査手法.スマホ等のポータブルデバイス利用が一般化した現在,再び注目を集めている.

▶【研究技法】IAT(Implicit Association Test)

Harvard Universityのサイトにある,潜在連合テスト(IAT)を紹介するサイト(日本語版).IATは,様々な社会的対象に対する潜在的態度(人々が意識することはできないが所有している態度)を測定する,もっともよく用いられている技法の1つ.Web上で実施できるものもいくつか用意されている.IATを含めた様々な測定環境を提供するソフトウェアInquisitに関する情報(英語のみ)はこちら(IAT用スクリプトやデモはこちらから参照可能).

▶【プログラミング】PEPE プログラミング THE 心理実験

小田浩一研究室(東京女子大学現代教養学部)が運営する,コンピュータを使って刺激提示や反応時間測定を行う実験のために使えるプログラミング言語・環境に関する情報をまとめたサイト.無償かつ実用性の高い環境としてPsychoPy, Psychlops, Psychtoolbox, Processingの4つが紹介されている.丁寧なチュートリアルがあり,プログラミング経験のない卒論生でも使えるくらい簡単.

▶【分析】HAD

清水裕士氏(関西学院大学社会学部)による,Excelで動く,無償の統計プログラム.心理統計分析に最適化されており,相関やクロス表などの基本的な統計解析から,分散分析・重回帰分析,因子分析,そして構造方程式モデルといった,心理学でよく用いられる多変量解析が可能.また,級内相関係数や階層線形モデル,マルチレベルSEMなど,マルチレベル分析も実行できる.★関連書籍:『個人と集団のマルチレベル分析』(ナカニシヤ出版)

▶【分析】TTM/ExcelTTM

松村真宏氏(大阪大学大学院経済学研究科)と三浦麻子氏(関西学院大学文学部)による,テキストマイニングの前処理のためのソフトウェア.CSV形式の「タグ付きテキスト」を読み込んで6種類の集計データを作成.日本語と英語に対応.Windows版とMac OSX版あり.TTMはソフトウェア単体で,ExcelTTMはExcelで動作する.機能は同等.ExcelTTMはHADとの連携により,出力データの多変量解析の実施も簡便に行える.★関連書籍:『人文・社会科学のためのテキストマイニング[改訂新版]』(誠信書房)

▶【分析】KH Coder

樋口耕一氏(立命館大学産業社会学部)による,テキスト型(文章型)データを統計的に分析するためのフリーソフトウェア.アンケートの自由記述・インタビュー記録・新聞記事など,さまざまな社会調査データを分析可能.★関連書籍:『社会調査のための計量テキスト分析』(ナカニシヤ出版)

▶【分析】Sigsaji2

荒川歩氏(武蔵野美術大学)による,Excelで動作する,無償のイベントレコーダー.対人コミュニケーションデータのコーディングに有用.ビデオ撮影された映像を見ながら,コミュニケーション中のうなずきや笑顔など非言語行動を記録する時などに便利.コーディング結果がExcelに直接出力されるので,事後の処理が簡便に行え,視覚的にも理解しやすい構造を持つ.

▶【分析】G*Power

Heinrich Heine University Düsseldorf 実験心理学研究所が提供している検定力分析のためのフリーソフト.事前の検定力分析(一定の効果サイズを得るためにはどの程度のサンプルが必要かの見定め)や事後の検定力分析(手持ちデータの効果サイズとサンプル数から検定力を算出する)が可能.Win版とMac版があり,インタフェースは英語.こちら(PPT資料)などを参照すると使いやすい.

▶【データベース】NAPS 情動喚起用刺激画像

ポーランド・ネンキ実験生物学研究所脳イメージング研究室による,情動喚起用刺激画像(人物,顔,動物,人工物,風景など1356枚).学術目的の利用はこちらのフォームから申請すれば無償.

▶【データベース】OASIS 情動喚起用刺激画像

ハーバード大学心理学研究室のグループによりオンラインで収集された画像刺激セット.ヒト,物体,動物,景色.著作権フリー.紹介論文はこちら.画像セットはアブスト最終文からのリンクでダウンロード可能.

Pierre Mahau氏による,さまざまな種類の情動を喚起するのに効果的とされる映画のクリップ集.刺激の情動価についてはSchaefer et al. (2010)所収だが,当該サイトからも詳細な情報がダウンロードできる.ただしクリップは仏語吹替版なので,日本で日本語による刺激を使うのであれば若干の手間がかかる.

伊藤崇氏(北海道大学大学院教育学研究院)による,質問紙調査を構成する際に必携の『心理測定尺度集I~VI』(サイエンス社)に所収されている400以上の尺度を,項目ごとに整理し直して一覧できるリスト.尺度原典の書誌情報へのリンクがあるので,大変便利.

▶【データベース】e-Stat 政府統計の総合窓口

総務省統計局・独立行政法人統計センターが運用する,政府統計(国勢調査,人口動態調査など)データが閲覧できるポータルサイト.二次データ(既に何らかの目的で収集されたデータ)を利用した社会心理学研究は近年増加しつつあり,要注目.

▶【データベース】SSJDA(Social Science Japan Data Archive)

東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターが運用する,統計調査,社会調査の個票データ(個々の調査票の記入内容)を収集・保管するデータベース.大学・民間研究機関の実施したパネル調査データなどが一定の基準を満たせば利用できる.二次データ(既に何らかの目的で収集されたデータ)を利用した社会心理学研究は近年増加しつつあり,要注目.

▶【データベース】日本人の国民性調査

統計数理研究所で1953年以来5年ごとに継続実施されてきた社会調査「日本人の国民性調査」と,関連するその他の調査研究を紹介するサイト.2014年10月に第13次調査の結果が公表された.「集計結果」から各調査次の個別項目の結果を参照することができる.日本人のさまざまな事項に関する態度とその時系列変化を概観することができる.

▶【Web読み物】サイナビ!

ちとせプレスによる,心の探究に関連する話題のトピックスや注目のテーマ,出来事や新刊書籍などを紹介するサイト.心理学全般の記事があるが,社会心理学に関連の深いテーマも多い.

▶【Web読み物】サイキサイエンス

山田祐樹氏(九州大学)を管理者とする,心理学に関する最新の知見を「一般の方々に誤解なくお伝えしていく」ことを目的とするサイト.主に認知心理学に関するもの,とあるが,社会心理学に関連の深いテーマも多くある.