東日本大震災に関わる社会心理学研究
日本社会心理学会では,東日本大震災の発災直後に「東日本大震災に関する社会心理学からの提言と情報」サイトを立ち上げ,震災に関連する社会心理学の研究成果を利用しやすい形で提供できるようにリンク集を開設しました.その目的は,社会に生きる人々のこころと行動を研究する研究者の集まりとして,震災に際して,一市民としてだけでなく研究者としてできることを自分たちなりにあらわすことでした.当時のリンク集は,当然ながら震災「以前」の研究に関する情報を集約したものでしたが,ここでは,震災「以後」に行われ,公刊された研究や論考(雑誌論文・書籍・学会発表・機関誌特集)についてご紹介します.
2016年3月11日
日本社会心理学会広報委員会
雑誌論文
被災者とそのサポートに関する研究
兪 善英・松井 豊 (2015).
筑波大学心理学研究, 49, 21-32.
山本 陽一・兪 善英・松井 豊 (2015).
心理学研究, 85(6), 590-595.
塩谷芳也 (2014).
東日本大震災における軽度被災者のメンタルヘルスに対するソーシャル・サポートの負の効果
社会心理学研究, 29(3), 157-169.
高森順子・諏訪晃一 (2014).
災害体験の手記集の成立過程に関する一考察 : 「阪神大震災を記録しつづける会」の事例から
実験社会心理学研究, 54(1), 25-39.
桑原裕子・高橋 幸子・松井 豊 (2014).
筑波大学心理学研究, 47, 15-23.
震災が人間行動に及ぼす影響に関する研究
三浦麻子・楠見孝・小倉加奈代 (in press).
福島第一原発事故による放射線災害地域の食品に対する態度を規定する要因:4波パネル調査による検討
社会心理学研究, 32(1). ※著者最終原稿であり,公刊時に修正が入る可能性があります.
Nogami, T., & Yoshida, F. (2014).
Disaster myths after the Great East Japan Disaster and the effects of information sources on belief in such myths.
Disasters, 38(s2), s190-s205.
中谷内一也・工藤大介・尾崎拓 (2014).
心理学研究, 85(2), 139-147.
工藤大介・中谷内一也 (2014).
東日本大震災に伴う風評被害 : 買い控えを引き起こす消費者要因の検討
社会心理学研究, 30(1), 35-44.
大友章司・広瀬幸雄 (2014).
心理学研究, 84(6), 557-565.
木戸彩恵・サトウタツヤ (2013).
文化的記号と文脈が織りなす心理 : 東日本大震災由来の風評克服のために
立命館人間科学研究, 28, 115-126.
木下冨雄 (2011).
日本原子力学会誌, 53(7), 1-8.
メディア・世論に関する研究
三浦麻子・鳥海不二夫・小森政嗣・松村真宏・平石界 (2016). ソーシャルメディアにおける災害情報の伝播と感情:東日本大震災に 際する事例. 人工知能学会論文誌, 31(1), NFC-A_1-9.
Uchida, Y., Kanagawa, C., Takenishi, A., Harada, A., Okawa, K., & Yabuno, H. (2015).
PLOS ONE, Published: May 18, 2015DOI: 10.1371/journal.pone.0125966
三浦麻子・小森政嗣・松村真宏・前田和甫 (2015).
東日本大震災時ののネガティブ感情反応表出―大規模データによる検討―
心理学研究, 86(2).
小川祐樹・山本仁志・宮田加久子 (2014).
Twitterにおける意見の多数派認知とパーソナルネットワークの同質性が発言に与える影響:原子力発電を争点としたTwitter上での沈黙の螺旋理論の検証
人工知能学会論文誌, 29(5), 483-492.
論文データベース
Wiley Online Library所収の東日本大震災に関連する論文コレクション(4.30まで無料公開)
学会機関誌の特集など
日本心理学会 (2015).
特集/われわれは何をなすべきか 東日本大震災と心理学の5年間を振り返る
心理学ワールド, 72.
震災発生から5年が経とうとしています。この5年の間に,心理学は何ができたのでしょうか。そして何ができなかったのでしょうか。本特集ではこれらの総括とあわせて,「こころのケア」「風評被害」「コミュニティの分断」の問題に注目しました。そして各問題ごとに基礎研究と実践研究を紹介します。さらに今回の震災に実際に直面した当事者からの視点を加え,三つの側面から記事を準備しました。東日本大震災に対して心理学にできることはまだたくさんあるはずです。これまでの5年間の取り組みを振り返りつつ,これからのことを真剣に考えていきたいです。(小森政嗣・樋口匡貴)
(以下は,日本社会心理学会会員による特集への寄稿一覧です)
安藤清志 学会が行う災害復興支援
久田満・中村菜々子 福島県沿岸部の公立中学校における心理的ケア――養護教諭とのコンサルテーション活動
池田功毅・中西大輔 心理学で風評被害は止められるか?-福島県産作物の忌避について
関谷直也 震災5年目の風評被害
三船恒裕 ソトよりウチをひいきする心の仕組み
飛田操 パンドラの箱と幽霊
日本心理学会 (2012).
心理学ワールド, 57.
日本質的心理学会 (2011-2013).
<緊急特集>質的心理学の東日本大震災(第1回~第3回)
質的心理学フォーラム, 3-5.
日本社会心理学会大会発表論文集
注)雑誌論文は,「オンライン」で「本文」が「どなたでも無料で」閲覧できるもの,をリストアップしました.