2024年
Hideo Hagihara, et al.
Elife RP89376 2024
藤田医科大学の宮川剛先生との共同研究。様々な精神疾患モデルマウスの脳においてpHが低下していることを明らかにした研究です。私たちは社会的敗北ストレスモデルマウスの脳を提供しました。社会的敗北ストレスモデルマウスの関連研究については、これも宮川先生との共同研究であるProtein lactylation induced by neural excitation. をご覧ください。
2023年
Atsushi Toyoda, Kina Kawakami, Yuto Amano, Hideaki Nishizawa, Shin-Ichi Nakamura, Takahiro Kawase, Yuta Yoshida, Hodaka Suzuki, Takamitsu Tsukahara
International Journal of Molecular Sciences 24(2) 2023
うつ病モデルマウスの病理組織学的研究。食生命科学科の一期生の天野君、二期生の川上さんの卒論研究を管理人がまとめて発表しました。慣れない学科長業務をやりながらの論文執筆なのでずいぶんと時間がかかりましたが、何とか年度内に公表できました。中村進一先生(栄養・病理学研究所、現、岡山理科大学)に病理解析のご指導いただきました(足掛け3年)。病理学的所見として顕著なのは心臓線維化で、10日間の心理社会的ストレスで心臓が線維化するというのは興味深い現象です。現在、この現象がどのようなメカニズムで起こるのかに着目して研究しています。
Yuta Yoshida, Yuhei Yajima, Kina Kawakami, Shin-Ichi Nakamura, Takamitsu Tsukahara, Katsutaka Oishi, Atsushi Toyoda
International Journal of Molecular Sciences 23(22) 2022
産総研(つくば)の大石勝隆先生、(株)栄養・病理学研究所(京都)の塚原隆充先生との共同研究。うつ病モデルマウスの唾液中マイクロRNAを網羅的に調べて、ストレスバイオマーカーの候補をいくつか見つけました。なかなか興味深い分子が見つかってきましたので、これらの分子の機能について多角的に解析する予定です。
Kazutoyo Yoda, Gaku Harata, Mizuho Sato, Kenji Miyazawa, Natsuki Ohsawa, Fang He, Atsushi Toyoda
Nutrients 14(5) 2022
高梨乳業との共同研究。筆頭の依田一豊博士(高梨乳業)は弊ラボの卒業生で博士号取るまで7年くらい在籍してました。当時は豊田もルーメン細菌のセルロース結合タンパク質の遺伝子クローニングなどやってましたが、依田くんと一緒にいくつか遺伝子を単離して微生物では割といいジャーナルに論文載せたりしてました。その後、彼は高梨乳業で研究を続けましたが、機会があったのでまた一緒にやることになったわけです。この菌株は敗北ストレスモデルの行動をガッツリ変えるほどの強い効果はないようですが、ストレスによる炎症を抑える効果は期待できるので様々なアプリケーションが考えられそうです。卒業生と再び研究できるのはうれしいです。
Yuhei Yajima, Alato Okuno, Isamu Nakamura, Teruo Miyazaki, Akira Honda, Atsushi Toyoda
International Journal of Tryptophan Research : IJTR 15 11786469211066285-11786469211066285 2022
当時、学部生(今、修士2年生)の谷島君と当時、腸管免疫研究所の奥野海良人さんとディスカッションしてやってみようという軽い気持ちで始まったプロジェクト。与える飼料によってマウスの脳と末梢のキヌレニンレベルが異なることを発見。キヌレニンはガンや認知症、うつ病などの発症に関与するので非常にホットな分子ですが、マウスモデルの研究では給与する飼料に気を付ける必要があることを示しました。考えてみれば当たり前ですが、精度の高い分析機器でメタボロームなどを実施することが増えてますので、従来以上に飼料の選択には注意が必要だと思います。茨城県立医療大の中村勇先生(メタボローム)、東京医科大茨城医療センターの本多彰先生、宮崎照雄先生(アミノ酸分析)も協力していただき、阿見町3大学の連携が成果として結実しました。
Protein lactylation induced by neural excitation.
Hideo Hagihara, Hirotaka Shoji, Hikari Otabi, Atsushi Toyoda, Kaoru Katoh, Masakazu Namihira, Tsuyoshi Miyakawa
Cell Reports 37(2) 109820-109820 2021
藤田医科大の宮川剛先生たちとの共同研究。社会的敗北ストレスでマウスの脳内乳酸レベルが増加し、ヒストンH1が乳酸化するという論文。宮川さんとは大学時代のボート仲間(競艇ではなく漕艇)で、卒業後はともに研究の道に進みました。豊田が2003年くらいに微生物から動物行動に研究テーマを変えようと思い、京都で独立したての宮川さんにいろいろ相談しお世話になりました。20年の時を経て、少し恩返しができたかなという感じです。
Yuta Yoshida, Misa Miyazaki, Yuhei Yajima, Atsushi Toyoda
Biochemical and Biophysical Research Communications 579 116-121 2021
味覚研究が専門の吉田悠太先生が2020年4月に助教として赴任して最初に手掛けた研究です。もともとは九大でニワトリを使って研究をしてましたが、赴任後いちからマウス実験を勉強しました。社会的敗北ストレスモデルマウスのショ糖嗜好性を評価した研究はたくさんありますが、味覚受容体の発現まで調べた研究はこれが初めてだと思います。ストレス、味覚、食行動などに関する新しい分野を開拓していきます。
Toyoda A, Shionome N, Kohari D, Iida S, Masato H, Namae N, Nakamura S, Tsukahara T
Journal of Bacteriology and Mycology 8(1) 1162 2021
この研究は塩野目望さん(現、環境省)が卒論研究で始めたかみね動物園(日立市)のアビシニアコロブスの栄養調査が発端となってます。研究対象のコロブスが死んだときに、かみね動物園のスタッフの方に消化管をサンプリングしていただきました。消化管各部位の細菌叢と代謝物を解析し、一個体の研究ですがコロブスの栄養生理を知るうえで大変貴重なデータを得ることができました。コロブスの飼養管理をするうえで今後活用していただければと思います。ご協力いただいたかみね動物園のみなさま、ありがとうございました。
Hikari Otabi, Tsuyoshi Okayama, Atsushi Toyoda
Animal Science Journal e13447 2020
赤外線深度カメラを用いた3D行動解析システムで社会的敗北モデルマウスの巣作り行動を研究しました。社会的敗北ストレスを受けたマウスは巣作り行動が健常のマウスに比べ遅延しますが、経時的に巣の体積を計測することで巣作り遅延パターンを明らかにしました。茨城大農学部の岡山毅先生とのコラボで博士課程の大給日香里さんがケージの作製からデータ解析まで行いました。
Masami Kojima, Hikari Otabi, Haruko Kumanogoh, Atsushi Toyoda, Masahito Ikawa, Masaru Okabe, Toshiyuki Mizui
International Journal of Molecular Sciences 21(11) 2020
産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門の小島正己先生との共同研究。脳由来神経成長因子(BDNF)遺伝子の変異モデルマウスの巣作りに異常があることを見つけました。博士課程の大給さんが大阪で実験してきましたが、池田のおいしい日本酒を楽しんだそうです。
Atsushi Toyoda, Takahiro Kawase, Takamitsu Tsukahara
Biomedical Research (Tokyo, Japan) 41(2) 101-111 2020
すでに市販されている乳酸菌の機能性をうつ病モデルマウスで解析しました。栄養・病理学研究所(京都)との共同研究。研究に着手して5年以上かかりましたがようやく発表できました。
Teruo Miyazaki, Sei-Ich Sasaki, Atsushi Toyoda, Fan-Yan Wei, Mutsumi Shirai, Yukio Morishita, Tadashi Ikegami, Kazuhito Tomizawa, Akira Honda
Scientific Reports 10 4915-4915 2020
タウリン欠乏を引き起こす動物モデルに胆汁酸代謝の異常を発見しました。東京医科大学茨城医療センター、茨城県立医療大学との共同研究。筆頭の宮崎先生(東京医大)とはマラケシュやクラクフの国際タウリン研究会でご一緒しました。カサブランカからマラケシュの列車でフランス語しか喋らない車掌の言うことが分からず往生したり、クラクフではアウシュビッツを見学したりと、いろいろ印象的な旅でした。
Coenzyme A and Its Thioester Pools in Obese Zucker and Zucker Diabetic Fatty Rats.
Shigeru Chohnan, Shiori Matsuno, Kei Shimizu, Yuka Tokutake, Daisuke Kohari, Atsushi Toyoda
Nutrients 12(2) 2020
肥満モデルおよび糖尿病モデルラットのコエンザイムA分子種の分析を行いました。本学農学部の長南先生との共同研究。科研費の新学術領域での成果です。著者の徳竹さんはこれに関連する研究で博士号をとっています。
Metabolomic analyses of plasma and liver of mice fed with immature Citrus tumida peel.
Atsushi Toyoda*, Mizuho Sato, Masaki Muto, Tatsuhiko Goto, Yuji Miyaguchi, Eiichi Inoue
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (in press)
フクレミカンの未熟果の皮を給与したマウスの血漿と肝臓のメタボローム解析を行いました。この研究も着手して5年近くでようやく公表に漕ぎつけました。最初のジャーナルに投稿したのが2016年末でした。いくつかの雑誌でリバイス、リジェクトを繰り返しましたが、「フクレミカンって何なの?」というレビューワーのコメントに苦しみました。あるジャーナルではレビューワーが6人出てきて、何回かリバイスし、これで大丈夫と思ったら7人目のレビューワーがいきなり出てきて最後にリジェクトされたこともあります。科学的エビデンスが不足している地場産品を研究対象にする大変さを思い知りました(地道に論文にして公表するのが大事)。メタボローム解析を依頼したヒューマンメタボロームテクノロジー(鶴岡)も最後まで協力してくれました。ありがとうございます。
Tsukahara T, Kawase T, Yoshida H, Bukawa W, Kan T, Toyoda A
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 83 2345 - 2354 2019
乳酸菌の機能性をうつ病モデルマウスで解析しました。栄養・病理学研究所との共同研究。プロバイオティクスの共同研究依頼が増えてきました。
Sato M, Okuno A, Suzuki K, Ohsawa N, Inoue E, Miyaguchi Y, Toyoda A*
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 83 1756-1765 2019
フクレミカンの未熟果の果皮およびヘスペリジンの機能性をうつ病モデルマウスで解析しました。筆頭の佐藤君(現・博士課程)が粘り強く実験を繰り返し、ヘスペリジンの新規の機能性の発見に結びつきました。つくば国際大の奥野海良人さん(現・腸管免疫研究所)にはキヌレニンとトリプトファンの分析をお願いしました。ヘスペリジンにはストレスによる中枢の炎症を抑える作用がありそうなので、この研究成果をきっかけにヘスペリジン研究に注力しています。免疫系の勉強も始めました。
Maehata H, Kobayashi Y, Mitsuyama E, Kawase T, Kuhara T, Xiao JZ, Tsukahara T, Toyoda A
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 83 1239-1247 2019
乳酸菌の機能性をうつ病モデルマウスで解析しました。森永乳業および栄養・病理学研との共同研究。筆頭の前畑さん(森永)はもともとは微生物研究の出身ですが、マウスの行動もしっかり勉強して論文発表に漕ぎつけました。RNAseqの解析なども駆使して興味深い結果を得ました。乳酸菌の持つポテンシャルに改めて気が付かされました。引用件数も伸びています。
Sato M, Goto T, Inoue E, Miyaguchi Y, Toyoda A*
Journal of Nutritional Science and Vitaminology 65 19-23 2019
フクレミカンの未熟果皮の機能性を肥満モデルマウスを用いて解析しました。筆頭の佐藤君(現・博士課程)が当時ポスドクの後藤君(現・帯広畜産大学助教)の薫陶をうけて初めての動物実験を頑張りました。フクレミカンの機能性を明らかにした世界で初めての論文で、マスコミでもかなり報じられました。ちなみに私のラボでフクレミカンの研究を最初に始めたのは東日本大震災の年に卒業した武本君(京大農博、現・全農飼料中研)。当初は抗うつ作用の研究をしていましたが、抗肥満の効果が大きかったのでこの論文が先に世に出ました。最初の論文発表までに10年近くかかりました。ちなみにフクレミカンを最初に紹介してくれたのは、本学農学部の井上先生で一緒に筑波山に入ってサンプリングしました。茨城大コーディネーターの園部さんにも震災復興支援のA-STEPなどでとてもお世話になりました(ミカン狩りも一緒にやりました)。
Yamagishi N, Omata M, Aoki-Yoshida A, Moriya N, Goto T, Toyoda A, Aoki R, Suzuki C, Takayama Y
Japan Agricultural Research Quartely 53 41-46 2019
うつ病モデルマウス(社会的敗北モデル)の消化管タイトジャンクション関連タンパク質について解析を行いました。農研機構との共同研究。ストレスと脳腸相関を研究するモデルとしてB6、BALBのどちらがよいのかを考えるきっかけになりました。3人のポスドクの継投(青木さん、山岸さん、小又さん)で公表に漕ぎつけました。
Koyama H, Tachibana Y, Takaura K, Takemoto S, Morii K, Wada S, Kaneko H, Kimura M, Toyoda A*
Experimental Animals 68 195 - 211 2018
マカクザルのエンリッチメントに関する研究です。つくばの製薬企業で獣医師をしている小山さんが当方の博士課程に社会人入学し、仕事をしながら研究しました。研究室の飲み会にも参加してくれました。小山さんはこの研究で博士号をとりました。まだまだ未発表の成果もあるので続報をお待ちしております。
Omata Y, Aoki R, Aoki-Yoshida A, Hiemori K, Toyoda A, Taneno H, Suzuki C, Takayama Y
Scientific Reports 8 13199 2018
うつ病モデルマウスの消化管上皮の糖鎖構造に関する研究です。最初に豊田が糖鎖研究の世界的研究者である平林淳先生(産総研)にご相談して共同研究が始まりました。農研機構、産総研との共同研究。ポスドクの小又さん(当時・農研機構)とPIの高山さんの粘り勝ち。宿主と腸内細菌の関係に一石を投じる論文。
Trunk movement quantification of adult with and without mental disability during gardening task using wireless tri-axial accelerometer.
Dewi NS, Komatsuzaki M, Yamakawa Y, Takahashi H, Shibanuma S, Yasue T, Okayama T, Toyoda A
Japanese Journal of Farm Work Research 53 164-172 2018
農作業療法に関する研究です。茨城大学農学部と茨城県立医療大学ではずいぶん前から園芸療法や動物介在療法を研究していますが、留学生のDewiさんが奮闘して論文化しました。この研究で博士号をとりました。統合失調症や発達障害の方を対象とした研究ですが、こうした療法の取り組みを加速して、患者さんや周りの家族のQOLを高められると良いと思います。
Development of implantable wireless sensor nodes for animal husbandry and MedTech innovation.
Lu J, Zhang L, Zhang D, Matsumoto S, Hiroshima H, Maeda R, Sato M, Toyoda A, Gotoh T, Ohkohchi N
Sensors 18 979 2018
体内埋め込み型センサーの開発。産総研との共同研究。うちでは産総研が開発したマウス用の体温センサーデバイスを評価しました。九大牧場(現・鹿児島大)の後藤先生はウシ用センサーの評価をしました。産総研のLu先生の論文執筆のスピードが速くてびっくりしました。
Toyoda A*, Shimonishi H, Sato M, Usuda K, Ohsawa N, Nagaoka K
Neuroscience Letters 670 36-40 2018
飼料の違いがマウスの行動、ストレスホルモン、腸内細菌叢に与える影響を調べました。もともと飼料がストレスモデルの行動に影響を与えることは分かってましたが、ここでは健康なマウスを研究対象としました。東京農工大獣医生理の永岡先生との共同研究。技術補佐員の下西さん(現・動物検査会社勤務)がマウスの飼育やサンプリングを頑張ってくれました。臼田くん(獣医、当時・農工大博士課程)がホルモンの分析をやってくれました。
Effects of diet quality and psychosocial stress on the metabolic profiles of mice.
Goto T, Tomonaga S, Toyoda A
Journal of proteome research 2017年3月 Link
京大農学部の友永省三君のところでGC-MSを借りてポスドクの後藤君(現・帯広畜産大学助教)が膨大なデータを解析しました。ストレスに対する抵抗性に関与しそうな代謝産物がいくつか見つかってきました。この研究がいま進めているうつ病未病マーカーの探索研究につながっています。早期発見、早期介入に目標設定を変えました。
The acute social defeat stress and nest-building test paradigm: A potential new method to screen drugs for depressive-like symptoms
Hikari Otabi, Tatsuhiko Goto, Tsuyoshi Okayama, Daisuke Kohari, Atsushi Toyoda*
Behavioural Processes 2016年12月 Link
修士課程の大給日香里さん(現・博士課程)二本目の論文。急性敗北ストレスでも巣作りの遅延が起こることを見出して、薬剤介入で巣作り遅延のレスキューを試みました。なかなか完全にレスキューする薬が見つからないのですが、今なお研究継続、奮闘中です。
Decreased hepatic contents of coenzyme A molecular species in mice after subchronic mild social defeat stress
Yoshifumi Kubota, Tatsuhiko Goto, Yuki Hagiya, Shigeru Chohnan & Atsushi Toyoda*
Stress 19(2):192-7. 2016年2月 Link
学部4年生の久保田くん(現・全農飼料中研)が卒業研究を取りまとめて報告したもの。慢性社会的敗北ストレスが肝臓のコエンザイムA分子種の動態に影響することを発見しました。久保田くんは弓道の腕前もかなりでしたが研究の方もスマートでした。いずれにしろ敗北ストレスは肝臓の代謝の根幹部分にインパクトがあると分かりました。
Subchronic and mild social defeat stress alter mouse nest building behavior.
Otabi H Goto T, Okayama T, Kohari D, Toyoda A*
Behavioural Processes 122 21-25. 2015年10月 Link
学部生の大給日香里さん(現・博士課程)が卒業研究で見つけた社会的敗北モデルマウスの巣作り遅延現象を発表したもの。日本分子生物学会でもポスター発表し、たくさんお客さんが来ました。この研究がきっかけとなって巣作りが面白いということになり、巣作り行動の神経基盤研究をすることになりました。大給さん、学振特別研究員を経てなお研究中。
Assessing nest-building behavior of mice using a 3D depth camera
Okayama T*, Goto T , Toyoda A*
Journal of Neuroscience Methods 251:151-157. 2015年 Link
本学農学部の岡山先生と飲み会の席で決まった共同研究。赤外線震度センサ(3次元カメラ)でマウスの行動を3次元的に解析したもの。巣作りに着目したのは、巣が立体的な構造物でかつ多くの動物(昆虫、魚、鳥なども)が作るものだから。この研究をきっかけに、すでに3次元行動解析を進めていた富山大医学部の松本惇平先生とも交流するようになりました。岡山先生とは北米神経科学学会に一緒に行って、サンジェゴのリトルイタリーでおいしいイタリアンを楽しみました。家畜など他の大型動物の解析も実施中です。
Plasma and Liver Metabolic Profiles in Mice Subjected to Subchronic and Mild Social Defeat Stress.
Goto T , Kubota Y , Toyoda A*
Journal of Proteome Research, 14 (2), 1025–1032, 2015年 Link
慢性社会的敗北モデルマウスの血漿と肝臓のメタボロームをCE-TOFMSで分析しました。別報でも農研機構との共同研究で盲腸内容物もメタボロームやメタゲノム解析しましたが、ストレスモデルで胆汁酸代謝などが変化していることが分かりました。腸内細菌叢も大きく変化していました。ストレス性疾患の予防という観点で食品介入の可能性が大きく開けてきました。
Effects of diet quality on vulnerability to mild subchronic social defeat stress in mice.
Goto T , Kubota Y , Toyoda A *
Nutritional Neuroscience 2015年 Link
精製飼料(AIN-93G)は敗北モデルのストレス抵抗性(レジリエンス)を低下させることを発見して公表したもの。飼料の違いでマウスのストレスへの感受性が変わることにかなりビックリして再現性を何度も確認したりしましたが、その後、他の研究グループからも植物由来の成分がレジリエンスを向上させるという知見が増えてきました。この結果はラボの研究方向性を決定づけました。食や飼料でレジリエンスを付与することは可能かもしれないと思い始めました。
Subchronic and mild social defeat stress accelerates food intake and body weight gain with polydipsia-like features in mice.
Goto T , Kubota Y , Tanaka Y , Iio W , Moriya N, Toyoda A *
Behavioural Brain Research, Volume 270 , 339–348 , 2014年 Link
後藤君(現・帯広畜産大学助教)が三島の遺伝研からポスドクでラボにやってきて公表した最初の論文。飯尾君(農工大農博、現・茨城県)が進めていたラットの慢性社会的敗北モデルの作製があまりに大変なので、マウスの敗北モデルを作ることにして、それを最初に立ち上げてくれたのが学部4年生の田中君(現・外資系動物薬企業)。田中君は非常にスマートでプロトコルもほぼ確立し、それを後藤君が引き継いで論文にまとめました。農研機構畜草研の守谷さん(現・畜産研究部)にも体水分含量の分析など手伝ってもらいました。これ以降はほぼB6マウスの敗北モデルが研究対象となりました。
The effects of oral taurine administration on behavior and hippocampal signal transduction in rats.
Iio W , Matsukawa N, Tsukahara T, Toyoda A* .
Amino Acids. Vol.43(5), p.2037-46, 2012年 Link
社会的敗北モデルラットのメタボローム解析をしたら、血液や肝臓のタウリンが変化していたので、タウリンを飼料に混ぜてラットに給与したら抗うつ作用があったという論文。しかもタウリン給与が海馬の重要なタンパク質のリン酸化に影響があって驚きました。この研究がきっかけとなってタウリン研究会に参加するようになりました。となりの東京医大茨城医療センターの宮崎先生ともこのころから仲良くなりました。この研究成果はモロッコはマラケシュで開催された国際タウリン研究会で発表しましたが、成田からドバイ経由で往復60時間かかり大変でしたがもう一回行きたい国です。イスラム圏なのでお酒になかなかありつけず苦労しましたが、市内から雪のアトラス山脈が見えて感激でした。
Effects of chronic social defeat stress on MAP kinase cascade.
Iio W , Matsukawa N, Tsukahara T, Kohari D, Toyoda A* .
Neuroscience Letters, Vol.504(3), p.281-4, 2011年 Link
ルーメン研究から一転して、ラットを使い始めて出た最初の論文。うちのラボで初めて慢性社会的敗北モデルラットの作製に成功した飯尾君(現・茨城県)の力作。飯尾君は学部4年生から3年かかってモデルを作り、この論文も採択までかなり苦労しましたが、ラボの研究方向性を変えるきっかけとなりました。飯尾君は非常にストレスレジリエンスな人で論文をたくさん発表して、連合農学研究科で博士号を取得しました。またこの研究からうちのラボでも神経科学系の学会(日本神経科学会、北米神経科学会)で発表するようになりました。ニューオーリンズで開かれた北米神経科学学会に飯尾君と行きましたが、経費節約で相部屋でした。私が床にはいるとすぐに寝てしまうので驚いていました。京都の栄養病理研の塚原さんともこの時から共同研究を始めるようになりました。
うつ病モデルの研究を始める前は主にルーメン微生物の研究をしていました。その代表的な論文をご紹介します。
Isolation and identification of cellulose-binding proteins from sheep rumen contents.
Toyoda A* , Iio W , Mitsumori M, Minato H
Applied and Environmental Microbiology, Vol.75, p.1667-1673, 2009年 Link
当時飼育していたヒツジのルーメン内容物からセルロース結合タンパク質を分離して、LC-MSで網羅的にタンパク同定を試みた成果。SDS-PAGEのバンドを切り刻んでMSにかけましたがほとんど未知でした。この論文の出版を待つように最後に残ったヒツジが天国に行きました。多分、うちの研究室最後のルーメン研究論文で、茨城大に赴任してからご指導いただいた湊先生との共著も最後でしょう。農研機構の三森さん(兄弟子)との共同研究で抗体をもらったりと協力してもらいました。研究室に配属された直後の飯尾君(現・茨城県)が朝早くから夜遅くまで一緒に生化学実験してくれました。いろいろな意味で思い出深い論文です。
Purification, characterization, and gene analysis of cellulase (Cel8A) from Lysobacter sp. IB-9374.
Ogura J, Toyoda A , Kurosawa T, Chong AL, Chohnan S, Masaki T
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 70 2420-2428 2006年 Link
Lysobacterのファミリー8のセルラーゼ遺伝子の発見。本学農学部の正木先生の指導学生である小倉君(現・日清食品)の博士論文になりました。正木先生にもいろいろとご指導いただきました。引用件数も多い論文です。
Cloning, sequencing, and expression of a Eubacterium cellulosolvens 5 gene encoding an endoglucanase (Cel5A) with novel carbohydrate-binding modules, and properties of Cel5A.
Yoda K , Toyoda A* , Mukoyama Y , Nakamura Y , Minato H
Applied and Environmental Microbiology 71 5787-5793 2005年 Link
ルーメン内セルロース分解菌Eubacterium cellulosolvens 5からファミリー5のセルラーゼのクローニングに成功して発表した論文。湊研究室の学部生だった依田君(現・高梨乳業)はこの菌のゲノムライブライブラリーをセルラーゼの活性スクリーニングして遺伝子を単離し、博士論文までもってきました。最初はFEMSにリジェクトされてしまい、豊田も今よりとんがっていて、依田君ももっととんがっていたのでAEMに再投稿して受理されました。依田君は内蒙古はフフホトでの国際学会でプレゼンしましたが、当時イリノイ大のマッキー先生の巻き舌イングリッシュの質問が聞き取れず往生してました。みんなで平原のパオに泊まって深夜まで飲んだくれたのは良い思い出です。
PCR detection of bovine mitochondrial DNA derived from meat and bone meal in feed.
Toyoda A* , Nakajo M , Kawachi H, Matsui T, Yano H
Journal of Food Protection 67 2829-2832 2004年 Link
京大から誘われた狂牛病関連のプロジェクト。この当時は研究費がなかったので魔が差しましたが、これはこれで面白かったです。PCRによる肉骨粉の検出法を開発した論文。肉骨粉を凍らして破砕して、ミトコンドリアDNAを抽出しPCRするという方法。クロロフォルムや肉骨粉で頭がスポンジになるのではないかと思いながら実験してました。中條君(現・協同乳業)が高精度のPCRをしまくって方法を編み出しました。まだリアルタイムPCRは手が届かない時代です。
A possible role of cellulose-binding protein A (CBPA) in the adhesion of Eubacterium cellulosolvens 5 to cellulose.
Toyoda A* , Takano K , Minato H
The Journal of General and Applied Microbiology 49 245-250 2003年 Link
ルーメン内セルロース分解菌のEubacterium cellulosolvens 5のセルロース結合タンパク質CBPAがこの菌のセルロースへの接着に関与することを証明しました。学部4年生の高野君(現・千葉大助教)が獅子奮迅の活躍で菌体付着アッセイを繰り返してくれました。抗CBPA抗体がワークして菌のセルロースへの接着を阻害できたので、この論文が決め手になって豊田は博士をもらいました。「君の研究は基礎であって応用がない」と審査員に怒られましたが、ずいぶん反論したものです。若気の至りです。
Identification of the cellulose-binding and the cell wall-binding domains of Eubacterium cellulosolvens 5 cellulose-binding protein A (CBPA).
Toyoda A* , Minato H
FEMS Microbiology Letters 214 113-118 2002年 Link
Eubacterium cellulosolvens 5のセルロース結合タンパク質CBPAのセルロース結合ドメインと菌体表層結合ドメインを決定しました。どちらもユニークな配列でした。ドメイン構造の解析などは、三重大生物資源の苅田先生に協力してもらいました。菌体表層結合ドメインは完全に未知の配列で、菌体成分のどの物質が結合に効いているのか、修士課程の市原君(現・化学メーカー)が実験してくれました。
Cloning, nucleotide sequence and expression of the gene encoding the cellulose-binding protein A (CBPA) of Eubacterium cellulosolvens 5.
Toyoda A* , Minato H
FEMS Microbiology Letters 207 141-146 2002年 Link
Eubacterium cellulosolvens 5のセルロース結合タンパク質の遺伝子クローニングに成功しました。λファージでゲノムライブラリーを作って、抗体でスクリーニングしました。たくさん陽性プラークが出てきて、いくつかの遺伝子をクローニングしましたがちょうどこのころに農学部内に遺伝子実験施設が出来て、キャピラリーシーケンサーのABI310が入り、それを使いまくってシーケンス決めました。主要なタンパク質にCBPAという名前をつけましたが、新規のドメインっぽい構造も見つかって興奮しました。
Presence of several cellulose-binding proteins in culture supernatant and cell lysate of Eubacterium cellulosolvens 5.
Toyoda A , Yoda K , Nakamura Y , Minato H*
The Journal of General and Applied Microbiology 47 321-328 2001年 Link
豊田は最初にRuminococcus fravefaciensというルーメン内セルロース分解菌の研究に従事したのですが、取ってきたタンパク質が精製過程のアーティファクトで頓挫(菌体破砕処理で使うリゾチームでした)。すっかりやる気を無くしましたが、豊田最初の卒論生の川崎さんが進めていたEubacterium cellulosolvens 5のセルロース付着機構の研究を学部生の依田君(農工大農博、高梨乳業)と再開して、これが最初の論文。まずはセルロース付着に関与しそうなタンパク質を分離することから始めました。慣れない嫌気性細菌を大量に嫌気培養し、セルロース結合タンパク質を分離し、SDS-PAGEをしまくってゲルからバンド(170kDa)を切り出し精製しました。いいポリクロナル抗体ができましたが、培養、菌体回収、タンパク精製を繰り返してこの論文が出るまで気が付いたら3年間経過してました。飲み会の後に実験して、精製したタンパク質を床にこぼしてしまったこともあります。飲んだ後の実験はやめましょう。
A comparison of features and the microbial constitution of the fresh feces of pigs fed diets supplemented with or without dietary microbes.
Nagamine I , Shimada J , Nakamura Y , Toyoda A , Minato H*
The Journal of General and Applied Microbiology 44 375-380 1998年 Link
豊田が茨城大に赴任して最初に関わった論文。赴任して最初の仕事はブタの盲腸を近所の「と場」にもらいに行き、それをラボでオートクレーブすることでした。ラボのある6階フロアがすごい臭気でたいへんなことになりました(となりのAY先生や5階のAY先生がクレーム?にやってきました)。豚舎の臭気の低減を目指した研究でしたが、私はそのオートクレーブがある部屋にいたので臭気に対する抵抗性の獲得に成功しました。当時子育てしながら修士課程に入学した長峰さん、学部4年生の島田君(現・プリマハム)と農水省家畜衛生試験場から赴任したばかりの湊教授と一緒に試行錯誤しながら実験してひねり出した思い出深い論文。当時在籍していた博士課程の原田さん(現・科学飼料協会)、修士課程の柳田君(現・福島県)、藤田君(現・全農)、勝沼君(現・科学飼料協会)など畜産業界で活躍しています。原田さんが酒好きで、この当時は、毎週、地酒を囲んで飲み会でした。すっかり茨城の地酒にはまってしまいました。