総選挙にあたっての声明

投稿日: Oct 16, 2017 8:23:36 AM

総選挙にあたっての声明

憲法を考える法政大学教職員の会*

10月22日投開票の総選挙にかんして、われわれは、この選挙が安倍内閣による解散権の濫用の結果であることをまずは確認したい。首相自身が知人に便宜を図る形で行政をゆがめたのではないかとの重大な疑惑について、野党各党が憲法第53条にもとづいて臨時国会の召集を求めたにもかかわらず、内閣はこれを長期にわたって無視し、あげくの果てに、開催された国会の冒頭解散という挙に出た。これは、国権の最高機関(憲法第41条)としての立法府の審議権を、行政府が正当な理由なく侵害する点で、憲法の精神に背く行いである。

安倍内閣は、内閣法制局人事への介入、内閣人事局を通じた官僚人事への過度の介入、そしてメディア報道に対する抑圧的な対応などによって異論を封じつつ、これまでの政府の憲法解釈を無効化する事実上の解釈改憲ともいうべき安保法制の制定、刑事法の原則をふみにじる共謀罪の新設など、恣意的な権力行使を行ってきた。それに加えて、上記の疑惑に象徴されるように、公共のために用いられるべき権力が特定の集団のために用いられているとの疑いもある。権力は憲法の定めるところに従って抑制的に行使されるべきという立憲主義の原則をふみにじる内閣をどう評価するかが、今回の選挙の真の争点である。

しかるに、政権与党や一部の野党は、この争点から有権者の目を逸らすためか、党内議論すらない思い付き的な公約を列挙している。さらに、北朝鮮の脅威を煽り、憲法9条や安保法制への賛否を「踏み絵」のように用いつつ、野党の中に分断を持ち込もうとしている。憲法9条をめぐっては、各党内での議論も進んでおらず、国会の憲法審査会では審議すら行われていない。自民党の中においてさえ、方向性は定まっていないのである。このように国民的な議論が未成熟な段階で、憲法9条を選挙の争点であるかのように扱うことは、許されない。

権力を濫用する政府が主導する改憲は、権力の一層の濫用を招き、その行きつくところは憲法の破壊である。今、必要なことは、議論なき改憲ではなく、立憲主義の回復である。われわれ法政大学憲法を考える会は、こうした基本認識にもとづいて、立憲主義を擁護する勢力と共に、この選挙戦に臨むものである。

*憲法を考える法政大学教職員の会は、2015年10月5日呼びかけ人25名、賛同者112名で発足し、その後学内での学習会、講演会、他大学と共同の活動などをおこなってきました。