kenpou chap3-4

3.4 基本的人権の形骸化(1)

日本国憲法97条は、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と規定しています。この極めて重要な規定を、「改憲草案」はあっさりと削除してしまいました。その理由は、西欧の天賦人権説に基づいているからだと説明されていますが1)、基本的人権は将来の世代にも不可侵の永久の権利として信託されたものという、基本的人権の本質に対する違和感の表明です。

「個人の尊重」原則を述べている憲法13条もあっさりと、「人として尊重される」と変更しており、憲法の一番大切な個人主義の原則を採用しないという意思表示がなされています。また、日本国憲法が人権の制限根拠としている「公共の福祉」の代わりに「公益及び公の秩序」による広範な人権制限を容認しています。表現の自由さえも、「公益及び公の秩序」によって制限されるようになります。

以上の三点は、憲法による基本的人権の保障の一番大切な原理原則を廃棄してしまおうというものです。

注1)自民党『日本国憲法改正草案Q&A〔増補版〕』2013年10月、13頁。

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