kenpou chap3-3

3.3 「戦争をする軍事大国」を目指す9条の改憲

改憲草案は、現行憲法第二章の「戦争放棄」という表題を「安全保障」という表題に変更しています。改憲草案9条のタイトルは「平和主義」ですが、ここでの「平和主義」は現行憲法が採用している非軍事平和主義(軍縮平和主義)とはまったく別ものです。

改憲草案の特徴は四点あります。

第一は、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するための活動」「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」「公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動」を行う「国防軍」が創設されます。「国防軍」の創設は単なる名称変更ではなく、「最小限度の自衛力」という制約が撤廃されます。「国防軍」の場合には、大陸間弾道ミサイルも、航空母艦もさらには核兵器も憲法上の制約なしに保持することが可能になります。

第二は、9条2項で、「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と規定して、集団的自衛権を憲法上認めています。日本は、アメリカの軍事行動に対して全面的な軍事的協力を行うようになります。

第三に、「軍事審判所」という名前の軍法会議の設置が提案されています。軍事機密の聖域化と国民の知る権利の剥奪が懸念されます。「被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない」と規定していますが、国防軍の機密にかかわる裁判では、上訴裁判所が軍事審判所の認定事実や罪状と異なった判断をすることはきわめて困難です。

第四に、日本国憲法前文の規定する平和的生存権を削除し、実質的な国防責務の導入を意図しています。

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