kenpou chap3-2

3.2 「天皇を戴く国家」と国民主権の形骸化

改憲草案の前文冒頭は、「日本国は天皇を戴(いただ)く国家であ」り、第1条は、「天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴」であると規定しています。天皇を「元首」にして、国民主権の形骸化を図っています。

現行憲法は、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」(4条1項)と規定していますが、改憲草案は「のみ」という言葉を削除しています。その理由は、「天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う」と規定するように、天皇が「公的行為」を行うことができるようにするためです。天皇ができることは「国事行為」のみというのが、現行憲法の厳しいしばりであり、それを緩和しようというのです。

改憲草案は、第3条で、「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」と規定しています。憲法で君が代と日の丸を明記することは、国民主権だけでなく、思想・良心の自由に対する軽視も意味しています。また第4条では、「元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する」と規定しています。一世一元制の元号を憲法上明記して、元号使用を継続させることは、これまた時代錯誤の試みです。日本人の生きていく時間の認識を、深層において天皇の存在と結びつける効果を発揮するのが元号制です。

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