kenpou ans 22110

⑩多くの国では軍隊について「文民統制」があることが書かれているが、日本の現行憲法ではどうなっているのでしょうか。

軍の最高指揮官は多くの国で首相や大統領となっていますが、これに対して主権者である国民が最終的判断・決定権を持つという基本原則を「文民統制」(シビリアン・コントロール)といいます。軍事・軍隊に対して国民が《手綱》を持てるようにする制度です。具体的には、軍の長は議会(国民)に対して情報公開責任と説明責任を負うこと、議会(国民)の判断が優位すること、などです。現行憲法では自衛隊は「軍隊」ではないので、この「文民統制」はあまり意識されませんでした。

現行憲法66条2項の「国務大臣は、文民でなければならない」とする規定は「文民条項」と呼ばれています。これは軍人が閣僚の中に入ることはない、という人事ルールで、日本国憲法制定時には、《日本は軍隊を持たない》という選択を補強する規定でした。しかし、自衛隊が事実上の軍事的実力組織となっていることから、この条文がこの組織への「文民統制」を担う条項として読まれることとなりました。

しかし2015年、「文官統制」と呼ばれる仕組みが廃止されました。これは防衛省内の意思決定において文官(官房長・局長)が制服組に優位するという制度でしたが、これが変更され、両者が対等な立場に置かれました。この法改正は文民統制を弱めるものだとの批判が多くの識者から出されています。

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