kenpou ans 22109

⑨日本の現行憲法9条には、国を守る「自衛権」とそれを行使する軍隊を管理する規定がありません。これは憲法の「不備」と考えるべきでしょうか。

日本国憲法には、外交や条約に関する権限は72条と73条に規定がありますが、軍隊を管理する権限(軍事権)を定めた規定はありません。これは「不備」ではなく、戦争を放棄し、戦争を行う法的権限(交戦権)とその物理的装備(戦力)を自らに対して封じた9条との一貫性から見て当然のことで、日本はそのような自己決定をした国家です。ここから、自衛隊は憲法違反ではないのか、という議論が長く続いてきました。

2014年7月以前の政府の見解は、他国から急迫不正の攻撃を受けた場合だけは、一種の正当防衛としての「自衛」が認められる、というものでした。これは各国で古くから認められてきたものであるため、現行憲法9条のもとでも可能と考えられてきました。この「自衛」は、自国が攻撃を受けた時にそれを回避するため必要最小限度の対処が認められるというもので、これは「戦力」に至らない「実力」だからそのための自衛隊も違憲ではない、という説明が長く行われてきました。ここに2003年の「武力攻撃事態法」制定や「自衛隊法」改正によって、他に手段がないときには「武力行使」も認めるという考え方が加わりました。この意味の「自衛」が現在「個別的自衛」と言われているものです。

それは現行憲法9条のもとでは厳しく限定されるべきものであり、上記の場合以外に目的のあいまいな軍事活動が行われることは厳しく禁止されるべきで、2014年以降その限定があいまいになってしまったことは重大な憲法問題です。

憲法改正によって国家に軍事にかかわる権限を与えることは、このあいまいさを正当化し、広範な軍事活動を断れなくなる可能性を高めます。国家に厳格な自制を求める根拠となる9条を維持することの意義を、主権者が十分に知る必要があります。

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