第16回
日時:2014年 12月20日(土) 15:00~18:00
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部事務棟3階 第一会議室
発表者:清水裕士(広島大学)
題目:道徳の起源についての理論的考察
発表概要:
本発表では,道徳規範がいかにして現代社会において成立しているのか,その問題について理論的に考察します。
Haidt(2001;2012)は道徳基盤理論において,道徳判断が論理的というよりは直観的に行っており,
またその判断の仕方が進化的な枠組みで獲得されていることを主張しています。しかし一方で,群淘汰などを安易に
援用したその説明には,多くの批判があります(例えばBarash, 2007)。そこで本発表では,道徳規範が個人の心の
問題だけではなく,社会制度と共に進化,あるいは発展してきた立場からその起源について説明を試みます。理論
的な背景として,Kelley & Thibaut (1978)の相互依存性理論を動学的に発展させたモデルと,比較制度分析などの
理論枠組みを援用します。
データはなく,ほとんどが机上の空論ですが,参加者のみなさまと道徳や規範について活発に議論できるネタが
提供できればと思っています。厳しいご意見を期待しつつ,ご参加をお待ちしています。
第17回
日時:2014年 2月7日(土) 15:00~18:00
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部事務棟3階 第一会議室
発表者
平川真(日本学術振興会・広島大学大学院教育学研究科)
発表題目
間接的要求における文化差:関係の査定の観点から
発表概要
私たち日本人は、頼みたいことを直接的に頼まず、
遠まわしに頼むことがあります。
例えば「引越し手伝って」と言わずに「引越し大変なんだ」と言う場合があります。
このような傾向は、言語学の観点から、あるいは文化心理学の観点から、相手の感情へ
配慮するためであるという説明がなされてきました。
本発表では、間接的要求を使用する理由、そして使用の文化差が生じる理由について、
関係の査定という観点からの説明を紹介し、日本とアメリカのデータでの検証結果を報告します。
第18回
日時:2015年3月10日(火) 14:00~17:00
場所:広島大学(東広島キャンパス)教育学部A棟617教室
発表者:柳澤邦昭(日本学術振興会・京都大学こころの未来研究センター)
発表題目:認知神経科学からみた存在脅威管理理論の足跡
発表概要
存在論的恐怖(死が避けられないという認識から生まれる恐怖)に関する研究は,これまで多くの社会心理学者が取り組んできたテーマの一つです。
なかでも存在脅威管理論(Terror management theory:TMT)では,存在論的恐怖が自国の文化の優越性を主張するよう導くという基本仮説が提唱され,
概ね支持する行動データが蓄積されています。一方,存在論的恐怖を引き起こすとされる死関連刺激の認知・情動処理に対する検討自体が少ないため,
存在論的恐怖という構成概念が現象の引き金となっているのかどうか疑問視されることも少なくありません。それどころか,近年ではTMTに代わる理論が乱立し,
一連の現象の解釈の複雑化を招いています。
そこで本発表では,近年少しずつ増えてきているTMT関連のfMRI研究を紹介し,認知神経科学の視点で存在論的恐怖の“存在”を支持する証拠が得られている
のかどうかを説明致します。そうした上で,発表者が実施した死関連刺激の処理と行動データの関連に着目したfMRI研究を報告致します。参加者の皆様から様々
なご意見を頂ければ幸いです。
第19回
日時:2015年6月6日(土) 15:00~18:00
場所:広島大学(東広島キャンパス)総合科学部事務棟3階 第一会議室
発表者:三船恒裕(高知工科大学)
発表題目:外集団攻撃の社会心理学
発表概要
人々は内集団に対して協 力し、外集団に対して攻撃する傾向を持ちます。この傾向は「合理的には」内外集団を区別する理由がないと思われる最小条件集団でも見られ、従って内集団バ イアスと呼ばれています。これらは社会心理学の中では「当たり前」と呼ばれる知識となっていますが、近年の研究では「内集団に対する協力」と「外集団に対 する攻撃」は異なるメカニズムで生起すると主張されています。そして、これまで盛んに研究がなされてきたのは主に内集団協力に関してであり、外集団攻撃に 関してはそれほど多くの研究がなされていない、というのはあまり知られていません。一方、外集団攻撃を含めた内集団バイアス現象は社会心理学のみならず、 経済学や生物学などにおいても注目を浴びつつあります。 本発表では特に外集団攻撃に関するこれまでの研究をレビューしつつ、発表者が実施した「先制攻撃ゲーム」を用いた研究についても報告します。特に、少し解釈に困るような未発表データも報告させていただきますので、参加者の皆様から忌憚のないご意見をいただければ幸いです。
第20回
※広島大学高等教育研究開発センター平成27年度第5回公開研究会との共催です。
演題:「高等教育の研究・実務に活かす統計分析」
講師:清水裕士氏(関西学院大学社会学部准教授)
日時:平成27年10月2日(金)15:00〜17:30
場所:広島大学高等教育研究開発センター 授業開発室
趣旨:近年関心が高まっている統計分析の手法に関する研究会を開催いたします。講師として、心理学でご活躍の清水裕士先生(関西学院大学)をお招きします。
先生は主として心理統計に造詣が深く、最近では『M-plusとRによる構造方程式モデリング入門』という著書を出版されている気鋭の研究者です。今回の 内容は、高等教育でも応用されつつあるマルチレベル・モデリングを解説していただき、併せて先生が開発を手がけているフリーソフト”HAD”のご紹介もし ていただく予定です。