21~25回

21回

日時:2015年7月25日(土) 14:00~17:00

場所:広島大学(東広島キャンパス)総合科学部事務棟3階 第一会議室

発表者

川上 直秋 (日本学術振興会 愛知淑徳大学)

発表題目

社会的認知を支える意識と無意識の処理過程

発表概要

人間は認知処理過程の多くを意識的な気づきを伴 わない潜在的な次元に依存することによって、膨大な情報を瞬間的・自動的に処理することができると考えられています。情報過多とも呼ばれる現代社会では、 無限の情報に効率的に対処するためにも、この「無意識」の認知過程が重要になっていると言えます。

ところが、この領域に関する研究は、これまで「意識か無意識か」という文脈で多く語られてきました。例えば、意識的に行われていると考えられてきた処理が 無意識にもできるのか、という具合です。しかし、発表者の最近の研究では、両者にオリジナルな処理特性があり、それらが個人内で相補的に機能することで、 複雑かつ多様な社会的な認知を達成している可能性が示唆されます。

そこで、この度は単純接触やプライミングの枠組みにおいて、閾上呈示/閾下呈示、顕在指標/潜在指標を組み合わせた発表者のここ数年の研究を報告します。これを通して、意識的処理と無意識的処理の特徴、両者の関係性、そして無意識的処理の可能性に言及できればと考えています。参加者の皆様から様々なご意見を頂ければ幸いです。

22回


日時:2015年11月28日(土) 14時~16時

場所:広島大学東千田キャンパス 総合校舎207教室

発表者:

古里由香里(東北大学大学院文学研究科・日本学術振興会特別研究員)

発表題目:

「マジックワード:社会関係資本」を考える ―社会学が心理学に提供できること―

発表概要:

社会関係資本が注目されて久しく、関連する研究がいまだ増え続けていることからも、その関心は依然として高いことがうかがえます。しかし一方 で、その魅力がゆえに社会関係資本がマジックワード化し、様々なものが「社会関係資本」として扱われ、統合的な視点で研究を捉えることができないのが現状 です。社会学と心理学においてもその傾向は顕著で、その研究目的・対象の親和性にも関わらず、相互の知見を単純に比較できないという問題が生じています。 よって、今回の研究会では、社会関係資本の成り立ちから最新の実証研究までを自分の研究も含め概観したうえで、まずは先行研究を整理し、社会学と心理学に おける社会関係資本の相違性を考えていきます。そのうえで、社会学が心理学に提供できうることを、融合的および相互補完的な観点から議論をしていきたいと思います。

23回


日時:2016年2月27日(土) 15時~18時

場所:広島大学東広島キャンパス 総合科学部 事務棟 3階 第一会議室

発表者:塚本早織(名古屋大学)

発表題目:「血筋」か「イデオロギー」か:集団間態度を規定する内集団認知の影響

発表概要:

内集団の価値観や規範に関する認知傾向は、内集団に迎え入れたり排除したりする対象を規定する上で重要な枠組みを提供する。

例えば、「文化」や「同族性」「わびさびの精神」などに民族的内集団の価値を見出す人々と、「自由意志」や「愛国心」などによって内集団の特徴を説明 しやすい人々では、

脅威を感じやすい外集団と、その理由が異なる可能性がある。

本発表では、集団間態度を規定する要因として内集団認知の文化的特徴に着目 することで、葛藤を解決するために適切なアプローチを考察したい。

また、人が重視する内集団の価値観や規範を明らかにすることで、「内集団の本質とは何 か?」についての素人理論に関する示唆を得たいと考えている。


24回

日時:2016年6月25日(土) 15時~18時

場所:広島大学東広島キャンパス 総合科学部 事務棟 3階 第一会議室

発表者:中西大輔(広島修道大学)

発表題目:文化を適応の観点から考える

発表概要:

文化を表現型がそのまま伝達される遺伝によらない伝達であると考えたとき (Boyd & Richerson, 1985)、それはヒトにどんなメリットあるいはデメリットをもたらしてきたと考えられるだろうか。個人にとって情報の不確実性を低減するという意味で文 化伝達の果たす役割は大きい (Kameda & Nakanishi, 2002)。また、文化伝達が行われる社会ではそうでない社会に比べて平均的な適応度が高くなることも示されている (Kameda & Nakanishi, 2003)。ヒト以外の動物には文化的伝統が存在しないという議論 (Galef, 1992) を踏まえるなら、ヒトの繁栄はこうした文化伝達の能力、心理学的に言うなら他者から学ぶという社会的学習の能力に支えられてきたのかもしれない。

こ のように、社会的学習の能力は、何が正しい情報かを判断する上で有益とされてきた。一方、人類学者たちはこうした能力が情報獲得だけではなく、協力の文脈 でもポジティブな効果――つまり協力を促進するという意味での効果――をもたらすと主張している (Boyd & Richerson, 2005)。文化的群淘汰の議論である。集団内の他者の行動を模倣する傾向が支配的になれば集団内の行動分散は減少し、逆に集団間の行動分散は拡大する。 このことは、協力的な集団ほど所属する成員の適応度が高くなるという集団淘汰の効果が文化 (正確にはそれをささえる社会的学習能力) の存在により支えられるということを意味する。

本報告では発表者がこれまで行ってきた社会的学習及び文化的群淘汰に関する一連の研究を紹介し、文化の存在はヒトの適応とどのような関係にあるのか、考えてみたい。

発表資料はこちらで公開されています

25回


日時:2016年8月20日(土) 15時~18時

場所:広島大学東広島キャンパス 総合科学部 事務棟 3階 第一会議室

発表者:浦 光博(追手門学院大学)

発表題目:織りなす布はいつか誰かを暖めうるのか

発表概要:

本発表では、人の感じる体感としての寒さ-温かさと対人的な冷たさ-温かさとの関連を検討した2つの研究を報告する。第1に、結婚状況が孤独感と冷たさの評価といかに関連するかについての検討である。この検討では、結婚することが孤独感を抑制し、それが冷たさ評価を抑制するという媒介過程が見いだされている。第2に、居住地の寒さと体温の制御機能が孤独感に及ぼす影響の検討である。年間の最低気温の高低が孤独感の強さと関連すること、そしてこの関連が、自らの感じる寒さを積極的に制御しようとする程度によって調整されることが明らかにされている。