第1回
日時:2012年 3月10日(土) 15:00~17:30
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部 第一会議室
発表者:縄田健悟(九州大学大学院人間環境学研究院)
発表題目:集団間紛争における集団内力学:報復,賞賛,英雄
発表概要:
戦争,民族紛争,派閥間抗争,不良集団間のいさかいなど,集団間紛争は人間社会の様々な場面で見られる現象であり,解決が求められる重大な社会問題でもあ ります。集団間紛争の原因は様々なものが指摘されてきましたが,この発表では内集団の中での成員どうしの相互作用の中で生まれる「集団内力学」から集団間 紛争のメカニズムにアプローチしていきます。
発表では,私がこれまで研究を行なってきた集団間代理報復(当初の危害の非当事者間で生じる集団間 報復)に関する実験室実験の研究をご紹介いたします。特に,内集団から見られることや,協力を期待されるという集団内過程によって集団間報復が激化する可能性を議論いたします。
それとともに,集団内賞賛や英雄視と集団間攻撃との関連に関する現在進行中の研究もご報告する予定です。特にこちらの研究は始めたばかりで,今後の展開を模索中です。参加者の皆様にデータを見ていただき,ご意見をいただければと思います。
第2回
日時:2012年 4月14日(土) 15:00~17:30
場所:広島大学(東千田キャンパス) 東千田総合校舎 S205教室
発表者:浅野良輔(日本学術振興会・名古屋大学)
発表題目:親密な関係研究におけるダイアドレベルの視座 ―関係効力性が幸福感に及ぼす影響―
発表概要:
親密な関係は個人の健康や幸福の源になります。これまでの研究では、その理由が愛着スタイルや特性自尊心といった個人差のみに求められてきました。しか し、本当にそれだけで十分なのでしょうか。本発表では、ダイアドレベルの概念である「関係効力性」が、恋愛カップルや同性友人ペアの幸福感を促すかどうか について、マルチレベル分析を用いた結果をご報告いたします。また、現在計画中の研究についても触れる予定です。忌憚のないご意見を頂戴できればと思って います。
第3回
日時:2012年 5月19日(土) 15:00~17:30
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部事務棟3階 第一会議室
発表者:橋本博文(日本学術振興会・東京大学大学院)
発表題目:「心と文化の相互構成」再考
発表概要:
1990年代以降、急速な発展を遂げてきた文化心理学研究は、「相互独立・協調」という概念を理論的なベースに据えるかたちで、人々の心の性質(思考・感 情・認知・動機づけ・脳内情報処理過程など)に見られる文化差を体系的に示してきました。しかし、これまでのところ、文化心理学の理論的中核をなすとされ る「心と文化の相互構成」の具体的な過程については、十分な分析がなされていないように思われます。そこで、本研究会において発表者は、(1)文化心理学 のアプローチを中心に、心と文化の相互構成関係を扱ってきた従来の理論、およびそれらの理論に基づく研究知見を概観すると同時に、(2)心と文化のマイク ロ-マクロ関係、とくに文化特定的な心の性質がマクロとしての文化そのものを形成する過程を分析するにあたって、考えざるを得ないいくつかの論点を整理し てみたいと思います。そのうえで、(3)文化的に共有された信念の自己維持性について検討した発表者自身による研究知見を紹介させていただき、皆様方から のご意見、ご批判を仰ぎながら、「心と文化の相互構成」を再考してみたいと考えています。
第4回
日時:2012年 7月14日(土) 15:00~17:30
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部事務棟3階 第一会議室
発表者:上出寛子(大阪大学大学院基礎工学研究科)
発表題目:ヒューマノイドロボットと人間の関係
発表概要:
日本のロボット技術の高さは世界でも注目されている.特に国内においては,労働人口の低下に伴い,人間共存型ロボットの活躍がますます期待されている.本 研究では,潜在的な一般ユーザの視点から,ヒューマノイドに対する評価基準の検討や,一般的なロボットとのインタラクション,また,さらに具体的な社会活 動の場に注目した実証実験の結果などを紹介する.人間とロボットにおける適応概念として安心感に注目し,単なるメディアとしての道具性を超えたロボットと 人間との関係性の可能性について議論する.
第5回
日時:2012年 10月20日(土) 15:00~17:30
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部事務棟3階 第一会議室
発表者:横田晋大(広島修道大学人間関係学科)
発表題目:血液型性格判断と病原体回避傾向
発表概要:
日本人であれば、他人を血液型で判断したり、他人から血液型で判断されたりした経験は、一度ならず体験したことがあるだろう。血液型は、他者とのコミュニ ケーションを取る際に重要なツールとして使われてきた。その背後には、血液型と性格が深く関連するとの信念が存在する。しかし、多くの社会心理学者によ り、血液型と性格との関連には科学的な根拠はないことが示されている。このような功績があるにも関わらず、日本社会には“血液型で人が分かる”と の信念が払拭されてはいない。これまで、バーナム効果をはじめとして、血液型性格判断が起こる心理メカニズムについての仮説はいくつか提出されてきた。だ が、なぜ日本社会において血液型で性格を判断する傾向が無くならないのか、との問いを扱った知見は数少ない。本研究では、適応論の観点から、血液型性格判 断が病原体回避傾向の表れであるとの仮説を提唱する。
第6回
日時:2012年 12月15日(土) 15:00~17:30
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部事務棟3階 第一会議室
発表者:小宮あすか(神戸大学大学院人文学研究科)
発表題目:後悔とその機能の社会文化的基盤
発表概要:
私 たちは日常的に後悔を経験する.いくら思い悩んでも過去の選択を変えるこ とはできないのに,なぜ私たちは後悔するのだろうか.この問いに対する答えとして,近年では「後悔経験が痛みを伴う教訓となり,過去の失敗を将来の選択に 活かすことができる」という,後悔が行動を調整する機能を持つ可能性が指摘されている.しかし後悔が意思決定に影響する個人内プロセスが明らかにされてき た一方で,どのように社会的な文脈や要因が後悔に関わるのかは明らかにされていない.本発表では,発表者が今までに行ってきた研究を通して,後悔が社会に 対する適応を促進する可能性について論じる.具体的には,(1)後悔経験に対する社会文化的な影響,(2)後悔の機能に対する社会文化的な影響,および (3)後悔の促進する適応プロセスに対する社会文化的な影響,の3点について,社会的ネットワークの観点から考察する.
第7回
日時:2013年 3月16日(土) 15:00~17:30
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部A棟3階 A312
発表者:中島健一郎(長崎女子短期大学幼児教育学科)
発表題目:被排斥者への共感プロセスにおける心理的痛みの伝染と制御
発表概要:
保育者養成では,保育者が子どもの存在を受け止め,子どもの心持ちを感じ取ることが重要視されています。しかし,子どものさまざまな心のありようを共感す ることが,結果として保育者自身を苦しめることにつながるかもしれません。具体的には,人とのかかわりの中で傷ついた子どもに共感を示すことによって,保 育者もまた心に傷を負っている可能性があります。このような心の傷の“連鎖”は実際に存在するのでしょうか。発表者は,この問いを出発点とした上で, (1)被排斥者に共感を示すことによって,被排斥者の心理的痛みが共感する側の個人に伝染するかどうか,そして仮に心理的痛みが伝染する場合,(2)その 痛みをどのように制御すれば良いのか明らかにするために,女子短期大学生を対象とした実験を行いました。本発表では,その内容について報告させていただき ます。そして,皆様方からのご意見,ご批判を仰ぎながら,共感に伴う心理的痛みの伝染と制御について再考したいと考えています。よろしくお願いいたします。
第8回
今回は番外編として、フリーの統計ソフトRの初級者に向けての講習会を行いました。
当日のレジュメやサンプルデータは、こちら から
発表に出てきた各種HP等リンクのご紹介は こちら から
日時:2013年 5月11日(土) 14:00~17:30
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部事務棟3階 第一会議室
発表題目:心理学者のためのR講習会
発表者:
清水裕士(広島大学大学院総合科学研究科)
「これだけ覚えておけば、とりあえずRで分析結果までたどり着ける!」
データハンドリングの基礎
基礎的な分析(記述統計量、t検定、相関分析)
初級の多変量解析(重回帰分析、因子分析)
山根嵩史(広島大学大学院教育学研究科)
「anovakunを使った分散分析」
分散分析と多重比較
井川純一(広島大学大学院総合科学研究科)
「初心者が陥りやすいRの落とし穴」
前田和寛(比治山大学短期大学部)
「Rについての情報をどうやって手に入れるか」
発表概要:
今回はHSP番外編ということで、心理学者のためのRの講習会を行います。
清水は、Rやパッケージのインストールからはじまり、データハンドリングと基礎的な分析方法について解説します。山根氏にはanovakunという関数
を用いた分散分析の方法について解説していただきます。井川氏には、Rを使っているうえで初心者が陥りやすいいくつかの落とし穴とその解決法
についてお話しいただきます。最後に前田氏には、初心者がRについてわからないことが出てきたときに、どうやって情報を収集したらいいのかにつ
いてお話しいただきます。
Rwiki Rのインストール http://bit.ly/102l2KM
第9回
日時:2013年 8月3日(土) 15:00~17:30
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部事務棟3階 第一会議室
発表者:鬼頭美江(日本学術振興会 特別研究員PD、北海道大学)
発表題目:対人関係に関する文化差とその原因:社会生態学的アプローチを用いた検討
発表概要:
友人関係や恋愛関係などの対人関係は、私たち人間にとって文化普遍的に重要であると考えられてきました。しかしその一方で、これらの関係における心理・行動傾向に文化差が存在することも指摘されています。特に興味深い知見の一つは、相互協調的とされる東アジア人に比べ、相互独立的とされる北米人の方が、対人関係において、パートナーに対して親密性や情熱をより高く感じるということです。この一見矛盾するように見える知見を論理的に解き明かすために、私は、社会生態学的アプローチの視点から、それぞれの文化の下に暮らす人々がどのような社会生態学的環境に組み込まれており、そこではどのような適応行動が求められるのか、そしてそれを生み出す心理傾向とは何であるのかを明らかにしようとしています。
そこで、今回の発表では、関係流動性および対人関係市場における競争性という、相互に関連する2つの社会生態学的要因に着目し、その差異によって親密性や情熱に関する文化差を再解釈しようという研究プロジェクトをご紹介します。基本的な発表内容は、本年5月の関西社会心理学研究会におけるものと同じですが、それ以降収集した、恋人をめぐる競争に関する日本の現状についてのデータについても報告できる予定です。
対人関係・文化・適応、などにご関心をお持ちの皆様と多方面からの議論を展開できれば幸いです。
第10回
日時:2013年 10月26日(土) 15:00~17:30
場所:広島大学(東広島キャンパス) 総合科学部事務棟3階 第一会議室
タイトル: “愛”は集団を救う?-社会的アイデンティティの適応価を探る-
発表者: 横田晋大(広島修道大学), 三船恒裕(高知工科大学)
発表内容:
社会的アイデンティティとは、ある社会集団へ所属するとの知識およびそれに伴うその集団成員性への感情価や価値の重要性によって生じる自己の一側面 (Tajfel, 1978) である。社会的アイデンティティは、差別・偏見のみならず人間の集団行動全般を説明する心理変数とみなされ、社会的アイデンティティを説明原理の中心と据える社会的アイデンティティ理論 (Tajfel & Turner, 1979; 以下SITと略) に基づき、数多くの知見が積み重ねられてきた。しかし、SITを批判する形で、この社会的アイデンティティは、あくまで個人が集団で適応するための行動の際に生じる副産物であるとみなす立場がある。閉ざされた一般互酬仮説 (e.g., Yamagishi, & Kiyonari, 2000; 以下BGRと略) で は、差別・偏見の究極因は集団内の互酬性にあり、社会的アイデンティティという心理要因を差別・偏見の説明原理の中心に据えるのは同義反復であると主張さ れる。では、社会的アイデンティティは、本当に人間の集団行動にとって意味のない概念なのだろうか。本研究の回答は否である。本研究では、結束の誇示仮説 (Gould, 1999, 2000; Yamagishi & Mifune, 2009) に 基づき、社会的アイデンティティの適応価を明らかにすることを目的とする。具体的には、社会的アイデンティティ、特に集団への愛着の側面は、集団間葛藤を 回避するため、日常的に内集団協力にコミットさせる役割を果たす、との仮説を立てた。本発表では、この仮説の妥当性を検証した予備的実験の結果を紹介す る。