3か月に満たない短期留学であれば不要ですが、それを超える長期留学で必要となる「滞在許可証」の発行に纏わるお話を記します。
「スイス留学」でネット検索してみると、入国にビザは要らない代わりに「滞在許可発行確認書」なるものを事前に申請して入手する必要があると書いてあります。そしてそれにはスイス大使館は関与しないらしい。このウラを取るためにスイス大使館のホームページを覗いてみます。探し当てた表記を読むと
スイス・日本間で締結された条約により、日本国籍の方は、スイス入国の査証は必要ありません。
なるほど確かにビザは要らないですね。
ただし、スイス入国前に、将来の居住地を管轄するカントン当局に滞在許可発行確認書を直接申請しなければなりません。
直接現地に申請しろという事は、滞在許可申請には日本のスイス大使館は関与しないという意味ですよね。
ハードル高いですよね。ビザが必要な国ではその国の日本にある大使館や領事館に申請となりますから日本語で問い合わせが出来る場合もありますが、スイスでは最初から現地と日本語以外でやりとりしなければいけません。
そしてもう一つ厄介なのがその手続きがスイスのカントン(州)ごとに異なること。他の州のホームページには英語の資料がある場合もありますが、フリブール州のホームページはフランス語かドイツ語のみ。これは辛いです。留学先の学校によっては滞在許可証の申請についてサポートしてくれる所もある様ですが、娘の場合はそれは叶わず。結局独力で調べるしかなくフリブール州の滞在許可申請の情報をなんとか追って辿り着いた表記がこれです。
Vous devez déposer votre demande d’autorisation de séjour pour études auprès de la représentation suisse compétente en raison de votre lieu de domicile avant d’entrer en Suisse et cela au moins 2 mois avant le début des cours.
要するに留学生は入国の2か月前までに滞在許可申請を出さなきゃいけないらしい。スイス大使館の言っていることと合ってそうだし、必要な提出物も書いてあるし、ん?la représentation suisse compétente って日本のスイス大使館の事?そこへ提出しろと言っている?なんか合ってないぞ???
これはもう質問してみるしか無いです。そこで娘にフリブール州のホームページにある問い合わせフォームからフランス語で聞いてもらいました。得られた答えは
提出物の送付先はフリブール州(日本人は大使館へのビザ申請不要なのが理由らしい)
ホームページ記載の提出物リストにある履修科目等の情報はフリーの書式でOK
上記リストの項目以外に「言語能力を証明する書類」も必要(2019年から法律が変わったらしい)
提出物に添える定型の申請書は特に無し
やはり問い合わせてみる事は大切ですね。結局下記の物を準備することになりました。
入学許可証(合格時に学校が出してくれたもの)
履修科目、履修期間、卒業時に得る学位(学校の資料等、フリーの書式でOK)
志望動機書(Lettre de motivation、略称LM)
履歴書(Curriculum Vitae、略称CV)
卒業証明書(最終学歴のものがあれば充分)
履修期間終了後にスイスを離れることを約束する書類
留学費用が十分にあることを証明する書類
パスポートの写し
言語能力の証明書(今回の問い合わせで追加)
カバーレター(申請事項と提出物一覧を記したものを作成)
提出物を準備する上でフリブール州のやっかいな点は「書類はフランス語かドイツ語で書く」と指示があること。そこで上記2, 3, 4, は受験時の資料を活用し娘がフランス語で作り、5は翻訳会社にフランス語訳を作ってもらいました。6はどう書けば良いか分からなかったのですが、ネット検索してみた結果チューリッヒ大学のホームページに英語の文例が有るのを見つけ、それを参考に娘がフランス語で作成しました。
7は具体的には本人名義の預金残高証明書か保証人の署名入り支払証明書を準備する事になりますが、後者では保証人はスイス在住でなければならず無理です。すると前者の預金残高証明書となりますが、これにもハードルがあります。
スイス公認銀行の残高証明書であること
年あたりの費用として21,900CHF以上の残高があること
残高はかき集めてなんとかするとしてもスイス公認銀行が問題。他の州ではスイス外の銀行でも認められている場合もあるのですが。スイス公認銀行とは簡単に言えばスイスに支店のある銀行のことで、正確にはスイス金融市場監査局(finma)のリストで確認できるのですが、娘が在スイスの日本人から聞いた話だと「今はみずほ銀行くらいしか日本には無い」とのこと。実際にそのリストを見ると確かにみずほ銀行(Mizuho Bank)くらいしか使えるのが無さそうです。仕方ないので残高証明書の為だけにみずほ銀行の口座を開設してお金を振り込み、残高証明書を発行してもらいました。英語の残高証明書ですが、重要なのは数字なのでフランス語訳は付けませんでした。
9は娘が前年に受験していたDELFの証明書を取り寄せてそれを充てました。そして10のカバーレターを作成し準備完了です。このカバーレターもチューリッヒ大学のホームページにあったビザ申請用のものを参考にさせてもらいました。州は違うのですがチューリッヒ大学やチューリッヒ工科大学の情報は外国人に親切で参考になります。
フリブール州へ事務手数料95CHFを送金した後、提出物をフリブール州へ郵便局のEMS便で発送しました。9月初めにスイス渡航予定なのでその2か月以上前の6月中に発送しました。EMS便が届くのにかかった日数は資料を参照下さい。
但しここで驚くべき事が判明。みずほ銀行が6月末のfinmaのリストから消えているではありませんか!みずほ銀行のホームページにあったスイス支店の情報も消えています。2019年5月初旬は確かにリストにあったのにこのタイミングで無くなるのは何故?フリブール州から何と言ってくるかドキドキです。
心配で確認のE-mailを送ったらその返信が来ました。内容は「留学費用が十分にあることを証明する書類が欠けているのでなるべく早く提出するように」との連絡でした。「みずほ銀行の残高証明書を提出したけど、日本円なのがまずかった?それともfinmaに登録されていないから?」と聞いてみたらfinmaだとの回答。あぁ、やっぱり。「スイスに行ってから口座開設して残高証明書を出させて下さい」と返信しましたが、こんな状態で滞在許可発行確認書を出してくれるのか分かりません。「滞在許可発行確認書を9月の渡航前に出してくれますか?」と追加で聞いてみたら「残高証明書が要ります。finma登録銀行の残高証明書を出して下さい。HSBCは?」と逆に催促されてしまいました。
ちなみにこのE-mailのやりとり、質問を英語で送ったら「フランス語かドイツ語で送ってね」とフランス語で返事が来ました。ここでもかよ...
フリブール州から「HSBCは?」と提案されてしまったものですから、finmaのリストに本当に使える銀行が日本に無いのか私なりに調べてみました。その結果が以下の表です。
finma登録銀行の日本での取扱業務(2019年)
HSBC(香港上海銀行)は日本では2013年に個人向け業務から撤退しており、個人が口座を開くことが出来ません。シティバンクも同様で日本の個人向け業務は2015年にSMBC信託銀行に引き継がれ、今は個人がシティバンクとしての口座を開くことが出来ません。このように殆どが法人顧客業務だけの銀行なのですが、中には個人顧客業務もやっている銀行があります(表中の色付き行)。
クレディ・スイスとUBSの個人顧客業務は富裕層向けプライベートバンクであり2億円以上の預金が必要です。そんな額は用意できないので「スイス渡航を前提に現地の小口口座を渡航前から開設できないか?」と聞いてみたのですが、両行から断られました。
中国建設銀行と中国工商銀行は1000円から普通預金口座を開設することが出来ます。じゃあ使えるのかと言うとこれまたハードルがあって、私が8月に入ってから相談した中国建設銀行からは断られました。9月から日本に居なくなる人の口座はその後利用される見込みが無いというのが理由です。中国工商銀行は審査期間に2週間と複数回の来店が必要とのことで、上手くいっても間に合わないと思い、具体的な相談もせず諦めました。つまり
ということになりました。数万円払えばスイス現地銀行の口座開設をしてくれる会社もあるみたいですが、そこまでする必要はないです。スイス移民局の文書(2.3.3.2 Assurance d’une autorisation de séjour)を読む限りは滞在許可発行確認書無しに入国後に滞在許可申請してもスイスの法律により受け付けてくれるそうですので。しかし入国してから手続きを始めていると問い合わせないと分からなかった必要提出物の準備が遅れてしまったかもしれないので、入国前から手続きを始めて正解だったと思います。
なおスイス渡航時に国境で揉めないように、スイスの学校の入学許可証やフリブール州とのこの一連のメールのやりとりをエビデンスとして持っていくことにします。
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