大卒就職率の世代格差

学校基本調査で大卒就職率の推移を見る。

世代による運不運が大きい。

団塊世代の就職率は80%弱だけど、オイルショックがあと5年早かったら、彼らもうひと暴れしたんじゃないかな。

新人類世代は、直前がひのえうまで、足りない分を企業が翌年以降に多めに採ろうとして、そこにバブルがやってきたので、就職率は80%を超えている。就職戦線異状なし。

で、団塊ジュニアはバブル崩壊に当たって、70%を切り散々な目に。

1994~2004年卒のロストジェネレーションの就職率は悲惨なことになっている。

学校基本調査で大学進学率の推移も見てみる。

(医学部などは6年制だけど、)就職の4年前の大学進学率を重ねてみると、1994年まで20年近く大学進学率は横ばいだったのに、1995年以降増加し続けている。

ここは、団塊ジュニアが受験して、あまりに合格率が低くなって、三大予備校が文部省に陳情に行ったとかで、入学定員が最大2割増やされた。

その後、少子化にもかかわらず、増やした定員は元に戻っていない。大学の既得権益だもんね。

その結果、後続の世代がどんどん大学へ行く。競争率下がって、入りやすくなったから。

率から実数を(細かいことは考えずに)逆算してみる。

大卒就職率=大卒就職者数/4年前の大学進学者数

=大卒就職者数/(23年前の出生数×4年前の大学進学率)

就職率・進学率:学校基本調査

出生数:厚生労働省

就職者数の推移を見ると・・・大卒新卒採用の「定員」は、だいたい35万人ぐらいで変わっていない。

2007年ごろから就職者数は急増しているけど、これは団塊世代の60歳定年の補充だから、一時的なものだろう。

大卒者数(≒4年前の大学進学者数)と比べると、やっぱり、バブル崩壊後から大きく変わっている。

それ以前は、大卒者数の動きと大卒就職者数の動きは、ほぼ一致していた。

とくに、ひのえうまのところなんか、大卒者数が少ないから、企業は採りたい人数を採れなかったんじゃないかな。

一方、バブル崩壊後は大卒就職者数が減っているのに、大卒者数が増えている。

世代の出生数や大学進学率と、就職時点の景気の組み合わせで決まっちゃうみたい。

ロストジェネレーションの前半の団塊ジュニアは、受験競争が大変だった割りに、就職が良くなかった。

何のために大学に受かったんだろう? ということ。

朝から行列してたけど、順番がきたら売り切れだったぞ、みたいな。

一方、後半の団塊ジュニア後の世代は、また違う意味で悲惨だ。

生き残りを賭ける大学の派手な宣伝に乗せられて進学を決意。

大学にはわりと簡単に入れたけど、4年後、就職のできなさにびっくり。

何のために大学に通ったんだろう? ということ。

健康食品毎日食べたけど、痩せなかったぞ、みたいな。

つまり、

団塊ジュニアの就職難は、景気が悪い+生まれすぎ

団塊ジュニア後の就職難は、景気が悪い+大学に行きすぎ

という違いがある。

景気が悪い、だけで大騒ぎしているマスコミは、怪しからん。

生まれすぎは、わりと天災だけど、大学に行きすぎの方は、団塊ジュニア用に増やした大学定員を元に戻さなかったのが原因だから、文科省と大学による、人災だ。

大学行ったら、就職できますよ~、って宣伝してたなら、詐欺だな。

その意味では、今後大学が潰れても、あまり同情されないかも。

団塊ジュニア後の就職率が悪いのは、以前なら高卒だった人が大学にたくさん来るようになったのに、大卒新卒採用の「定員」が増えなかったからだったみたい。

大学に行けば就職できるわけではなかったのね。

逆に言うと、団塊ジュニア以前のレベルの大卒者は、足りなくなりつつあるということ。

団塊ジュニア以前は26%だった進学率が、いま42%まで上がっている。1.6倍。

ということは、いまの大卒者のうち、団塊ジュニア以前のレベルの大卒者は62%しかいないということだ。

いま、就活で苦労しているみなさん、面接する側のロストジェネレーションのおじさんたちは、きみたちと同じくらい就職率が悪かった上に、受験が大変だったわけから、まだまだきみたちの方が恵まれていると思っているよ。

きみたちは受験で落とされなかった分、就活で落とされてるだけのことだよ。

でも、世代間の運不運があるのは事実。

無常感を感じるね。

そういうときこそ、徒然草のような中世の隠遁文学に親しもう。

どんなに悲惨な時代でも、どんなにみっともない姿になっても、しぶとく生きるんだ。