シャント結紮・閉塞について

肝臓への門脈血流がある場合(Ⅱ型)は、シャントを結紮(血管を結ぶこと)したり、シャントをコイルで塞栓することを試みますが、閉塞時の門脈圧が鍵になります。

成人の場合は15mmHg程度が門脈圧の境界値とされており、(*1乳幼児の場合も10mmHg以下が平均的なようです。

結紮・閉塞後も30mmHgを超える場合や血圧が変化した場合はこの方法での治療は難しくなります。

(門脈圧亢進症、肺高血圧症などを発症するリスク、発生する腹水のコントロールが出来なくなるため。)

肝臓への血流が存在し、門脈圧が30mmHg未満の場合でも術後は血流が安定するまで多少の腹水が発生するようです。

腹水が発生した場合は抗生物質などを投与して細菌の増殖を抑えます。

術後は門脈の発達や新たなシャントの発生の有無を確認するため、定期的に診断が必要になります。

計測、撮影の仕方によっては閉塞への判断が異なるため、慎重な判断が求められます。

結紮術・コイル閉塞術の選択は血管の形状や門脈圧により判断されるようです。

手術目的は「シャント血管をふさぐ」という意味で、どちらも同じです。

近年では「アンプラッツアー(Amplatzer)」という器具を用いて、閉塞する事例も報告されています。


■コイル塞栓術

・開腹しないため傷が残りません。

(門脈は体内の奥のほうにあるため、結紮の場合大きく開く必要があります)

・生涯体内にコイルは留置されます。コイル部分は血がたまり血栓が出来るため、影響はないようです。コイル留置自体も歴史のある手技で他の疾病でもよく使われています。

参考文献

*1)

『成人の肝移植術における至適門脈圧に関する検討』

日本門脈圧亢進症学会雑誌 2010年 Vol.16 号1 13-18頁