先天性門脈欠損症

※下記サイトに疾病に関するページが出来ました。こちらをご参照ください。

小児慢性特定疾病情報センター - 先天性門脈欠損症


概要

先天性門脈欠損症は,本来肝臓へ向かう門脈が、すべて、または一部が、体循環(下大静脈)など他の血管にシャント(短絡、バイパス)している状態をさします。

門脈血流のすべてが体循環(下大静脈)へ流れるケースをⅠ型

門脈血流が肝臓へも流れているケースをⅡ型と分類します。

先天性門脈体循環シャント(Congenital extrahepatic portosystemic shunt)とは同義的に使われます。

体循環シャント=門脈欠損ではないですが、

「門脈がない、または細い状態で、本来つながらない血管にシャント(短絡)している」

という状態がどちらの症状も含むことからだと思います。

肝臓への門脈血管(肝内門脈)が完全に欠損しているケース(Ⅰ型)を

「先天性門脈欠損症」としている文献もあります。

発見

日本では新生児マス・スクリーニング検査でガラクトースを調べるため、諸外国より早期に発見されるケースが多いようです。

高ガラクトース血症の疑いがありながら、酵素異常を伴わない場合門脈体循環シャントが疑われます。

次に3歳以降に行われる尿検査により、他の疾患の疑いから見つかるケースもあります。発見が成人期になったケースもあるようです。

※補足

新生児マス・スクリーニング検査の対象疾患ではありません。新生児マス・スクリーニング検査で見つからない場合もあります。


診断

診断にはエコー、CT検査、血管造影などを利用します。

エコーではシャント血管の有無は確認できますが、肝内門脈の確認(Ⅰ型かⅡ型かの区別)は難しいようです。

CT検査の場合でも細い(血流量が少ない)門脈の確認は難しいようです。

最終的にはシャント血管をカテーテルを利用してバルーンで閉塞し、肝内への血流(血管)の有無や門脈圧の測定を行うことが望ましいとされます。

シャント血管閉塞後、一定時間(10~15分程度)門脈圧を計測をしますが、肝内門脈が存在しない場合は門脈圧は上昇し、高い数値を維持し続けます。

肝内門脈が存在し、血流が変化する場合は、一度は門脈圧の数値が上昇するものの、一定時間経つと門脈圧の数値が降下することがあります。

※画像診断が難しい理由がいろいろあるようです。

(管理人ブログ)

放射線科医の不足

治療

肝内門脈が存在するⅡ型の場合は、シャントを結紮(結ぶ)する、またはシャントをコイルなどで閉塞することで、門脈の再形成を試みることができます。

※詳細は「シャント結紮・閉塞について」をご覧ください。

しかし上記のような外科的手術を行った場合も、新たに他のシャント血管(側副血行路)が形成され、肺高血圧症や門脈圧亢進症など突然病態が悪化することもあるため、確定的な治療方針はまだ確立されていません。

無症状で経過する症例もあり、その原因はわかっていないため、長期経過観察される場合もあります。

いくつかの合併症が存在しているケースで手術を行った場合はその症状が改善される報告が多くみられます。

Ⅰ型の場合は肝臓移植が適応されます。

またⅡ型の場合でも、シャント血管が太く(門脈圧が高く)、肝臓への血流が少ないと、上記のような方法で外科的に血流を変える事が困難になりますので、

肝臓移植での対処が検討されます。


合併症

・肺高血圧症、肺内シャント(肝肺症候群)

肝性脳症 ・門脈圧亢進症

・高アンモニア血症

・低血糖症

その他、軽度の発達遅延、若年での肝細胞癌発症リスクの上昇も指摘されております。


原因

「この病気の原因についてはわかっていません」

門脈の発生は通常6週から9-10週の間に形成されます。

新生児期には生理的な門脈体循環短絡があり、生後2週間程度で閉鎖していくものが、何らかの理由で閉鎖せず、開存している。

このことが一つの原因ともされています。

遺伝(兄弟間等)に関しては否定的な意見を聞きますが、きょうだい間(家族性静脈管開存)の報告もあります。