Twilight Steel Mill 

私の街の港湾部に広大な敷地を持った製鉄所がある。私の街は“鉄の街”なのだ。私も地元の高校を卒業して、この製鉄所で働く従業員として40年になろうとしている。

あと2年足らずで、鉄の男としての人生を卒業しようとしている。そして。。。

この第5高炉もあと2年で火が消えようとしているのだ。

夕闇に包まれた高炉は、休むことなく24時間火が燃えている場所だった。日本の経済成長を支えた鉄を私たちが担っているという自信と誇りに満ちた仕事をさせてもらっていた。

しかし、グローバル化の波のなか、世界最高品質を誇った日本の鉄の需要は少なくなり、私の愛した、この第5高炉の火も消えようとしている。

私は、製鉄所内で溶けた鉄を運ぶ鉄道の運行を任されている。製鉄所内で働く車両には高炉から出た溶けた鉄を運ぶトピードカーと溶けた鉄から不純物を廃棄するためのスラグカーになるだろう。

トピードカーは魚雷からきている言葉で、スラグカーは通称お鍋と言われている。

鉄の作り方は、ばら積み船で世界から鉄鉱石、石灰石、石炭が運ばれてきて、ガントリークレーンで降ろされた後、原料ヤードに積み上げられれていく。

高炉に入れる前に、コークス炉や焼結炉で事前処理を行い、ミキシングして長いベルトコンベアで高炉の上から投入し、高炉から落ちた原料は熱風炉からの高温の空気で燃え上がり、鉄が溶けていくのだ。

鉄の高炉がなぜ溶けないかって?

大量の冷却水が高炉を冷やして守っているんですよ。

なんといっても高い高炉は製鉄所のシンボルだろう。

なぜ赤茶けているかというと、鉄鉱石を扱っているために、鉄鉱石の粉塵がサビとして製鉄所を赤い世界にしていくのだ。それに粉塵が舞わないように巻く水もあるからね。

高炉の下の出銑口を開けると、さらっとした銑鉄が出てくるが、それを受け取り、運ぶのが我々とトピードカーの仕事というわけだ。

不純物を含む銑鉄を鋼に変える工場へ、ゆっくりと重いトピードカーを運転していく。

私とこの高炉はあと2年で役目を終わることはさみしい。しかし時代は流れており、次の時代に変化していくことが大切であり、若い世代が作り上げる新しい時代に期待しようじゃないか。

私は自分の働きに誇りを持ち、時代を築いてきた。

そしてこの高炉も時代を築いてきたのだ。


ありがとう高炉、そして私。。

ああ夜が明けてきた。

明るい新し時代に幸あれ!

Title:Twilight Steel Mill  

Number: 16

製作期間:Apr 2020 - Dec 2020

--- NOTE ---

モデルは私の地元である、旧川崎製鉄JFE千葉地区第5高炉です。この高炉は2010年に解体されました。高度成長を支えた日本の鉄鋼業が弱くなっていくのはさみしい限りです。これをテーマにTwilightとして夕闇をイメージするとともに、工場夜景を意識した作品にしました。

ここ以外にも、ほかの製鉄所も参考にしながら、できるだけ製鉄所の設備を網羅できるようにしましたが、本来であれば広大な敷地ですので、今回もかなりのデフォルメを施したジオラマになりました。

駆動はターンテーブルの往復運転です。

これが参考にした製鉄所の施設イメージになります。多分子供の科学的な資料でしょう。

でも、こんな資料を見ているとわくわくさせられますね。

高炉は下から1階ずつ作成し、LEDをつけていきました。いつもは後からLEDをつけるのですが、構造が複雑なので、後からでは無理なので、このような手順にしました。それはよかったのですが、全部で70球になると、さすがにかなりしんどかったです。