3年生の夏休み

母親が「今年の夏休みは一人でおばあちゃん家行ってみる?」と。冗談半分で言ったとき、「大丈夫だよ」と言ってしまった。大きな駅まで、おばあちゃんが迎えにきてくれて、ローカル線に乗り、無人駅で降りた夏休み。私が小学校3年生の時だった。

スーパーもゲームセンターも何にもない、ヒマワリがいっぱいあるだけの田舎で最初は何をしたらいいかわからず、おばあちゃんの作業場でずっといるだけだった。でも、都会の子供が珍しいのか、近所のケンちゃんとかっちゃんが虫取りに誘ってくれた。

二人は、自分たちより背の高い、ひまわり畑の中に入っていった。目印は虫取り網だ。

「ねー、どこに行くの?」

ひまわり畑の奥に大きな一本の木があった。「俺たちだけの秘密の木だよ」 その木には、見たことのない大きなカブトムシやクワガタがいた。

それから毎日のように、網を持って泥だらけで遊んだ。みっちゃんやかなちゃんも一緒に遊んだ。

こうして何にもないはずのひまわり畑の田舎で、あっという間の3年生の夏休みが終わってしまった。

帰りはみんなが駅まで見送りに来てくれる。「来年の夏も待ってるからな!」 日に8本しかないディーゼルカーに乗って、見えなくなるまで、みんなは手を振ってくれた。

僕はひとりで列車を乗り継ぎ、都会まで帰ってやった。少し大人に、いや男になった気分だった。

「ただいま!!」

びっくりするくらい大きな声が出た。

3年生の夏休みだった。


Title:「3年生の夏休み」

Number: 9

製作期間:June 2014 - August 2015

動画はこちら


--- NOTE ---

ひまわりは、花びらや花弁や葉っぱを合わせると、11のパーツでできており、ジオラマに100本が咲いています。つまり1100パーツを一つずつ切り出して、ワイヤーに取り付けて植えています。一つ一つ手で切り出して貼り付けているので、それぞれに表情が違うひまわりができました。(そのため作業時間の4分の3はひまわりに費やされています)

ひまわり畑を抜ける列車を表現したくて、手前と真ん中と奥にひまわり畑を配置しています。ちなみに、ひまわりに時間がかかるので、いつもよりもっと小径の6cm直径の線路になっています。ところで、走る列車はやはりキハ10系でしょうか。どこの田舎でも走っていたディーゼルカーはとても親しみがあります。最後にこのジオラマには大人は出てきません。100本のひまわりを駆け抜けるローカル線と子供たちだけの夏休みを楽しんでください。

※ひまわり畑の裏側も私は結構好きなんです。