香港電車旅情

人々の群れ、活気、息遣い・・・

どれをとってもパワフルでどことなく猥雑な街、香港。亜熱帯の気候の熱にほだされる様に、私は香港をさまよっている。知っての通り、香港はイギリスの統治を経て中国に返還されたが、一国二制度の政策があり、中国であって何か違う国だ。法治国家なんだが、アウトローな不思議な香港が何とも言えない。

私が香港に来て以来、愛用しているイギリス統治時代からの路面電車を、こちらの人は敬意をこめて「電車」と言うみたいだ。もちろんイギリスから導入した車両は2階建てだ。電車は狭い香港の通りをぎりぎりにすり抜けていく。下手なジェットコースターよりよっぽどスリリングで香港の活気を知るにはもってこいだ。

まず目に飛び込むのは、工事中の現場だ。香港は土地が狭く実質的な人口密度は東京より高い。おかげで家賃は異常に高く、古い建物を修理しながら使っているのだ。湿気の多い香港では金属の足場は使わない。なんと竹の足場を器用に組み立てていくのだ。こわそうだが、こちらのほうが組み立てやすいとか。

香港は看板に規制というのはなかったのだろうか。看板が我が物顔に道路の上にせり出してきている。電飾は派手だが、この地区はまだおとなしいほうだ。

しかし、何の店か、会社かわからない看板や、まともな治療が受けられそうにない医者の看板が多く、ますます私のテンションは高まるばかりだ。

電車は人の歩く、ぎりぎりのところをすり抜けていく。新鮮な野菜や魚貝類がビルの前で販売されている市場だろうか。

ビルのそれぞれの家には洗濯物が、通りに突き出して干されており、

屋上には無数のTVアンテナが乱立し、トタン小屋に人が住んでいる。建築基準法や消防法などという法律は無縁の世界。なんと隣のビルから堂々と電気を引いている。人々の生きるパワーを感じてしまう。

シャッターが閉まるビルの前には怪しげな人が集まり、取引が行われている。何が起きていても香港なのだ。

いよいよ、メインストリートに差し掛かってきた。いっそう多くなる看板。電車の上で手を伸ばせば届くところに看板がかすめていく。また電飾が派手だ!

赤、黄、緑、青、白。。

目がちかちかするような光が電車を照らしていく。

単に「活気がある」では表現ができない、人間としての生命力を“熱”として感じるのだ。表も裏もあるのだが、何故か微妙なバランスが私を襲ってくる。私は阿片を吸ったかのように、ディープな香港の街から足が抜けられないでいる。


Title:「香港電車旅情」

Number: 13

March 2017 - June 2017

動画はこちら


--- NOTE ---

電気に弱い私が、小さなジオラマにLED何個付けられるか! そんなチャレンジのジオラマになりました。80球近いLEDを入れたので中は蜘蛛の巣のように電線が張っています。

香港の特徴ある風景を、、7面の壁に表現して一つのジオラマに仕上げました。香港の雰囲気を感じていただけましたでしょうか。