お稲荷さんのお正月

お稲荷さんのお正月

ごーん、ごーん、ごーん、どっかで除夜の鐘が鳴って,新しい年がやってきはったで。家族みんなで、「あけましておめでとうございます!」と言うて、大晦日だけ夜更かししとった僕はあくびをしてしもた。

僕の家はもち山稲荷神社の近くにあるんや。近くの電停から市電が隣の電停まで、初詣のお客さんを運んではる。今日は終夜運転なんやって。今朝は早起きして初日の出を拝んで、さっそくお雑煮のお餅を食べたら、えらいお正月気分や。それに、それに! お年玉をもろたからね。早く外で遊びたいねん

そやけど、その前に家族でお稲荷さんに初詣に行かなあかん。とろとろ走る市電に乗って行くんが我が家のルールなんやって.

駅に着くと、参道は初詣の幟が出迎えとって、なんかウキウキやん。なんでやって、屋台が出てるからや。軍資金はさっきもろたからなー。ここのお稲荷さんはあんまりデカないけど結構有名なんや。山に登る参道には千本鳥居言うて、ごっつきれいなんやで。そやから初詣では結構人が来はんねん。

やったー、屋台やっとんでー 人もぎょーさんおる。綿菓子は弟に任せて、僕はお面にしよっ。「オッチャン上のウルトラマンのお面おくれ!」

わー、隣は射的や!オッサンへたやなー。よっしゃやったんで!ほらココアシガレット落としたったで.おなかも減ったし、焼きそば食って、リンゴ飴こうたら、千本鳥居に入って初詣や!

この千本鳥居はきっつい坂で有名なんやけど、中に入って歩いてると、なんや不思議な気分になりおんねん。明りに照らされたあっかい鳥居はほんまきれいやで。大人はしんどい言うとるけど僕はへっちゃらや。はよ行くで!

山頂の大鳥居は正月だけはしめ縄を飾っとる。そこをお辞儀して通ると、大きな狐様がおんねん。しっかりご挨拶させてもうて、小さいお社にお参りや。何をお祈りしたかは内緒に決まっとるやんか。

隣ではおねえちゃんが絵馬をかけてはる。やっぱり一年の始まりなんやなー

下を見たら上ってきた千本鳥居とちいそうなってしもた屋台がみえるんやな。さあ、お参りも終わったし、はよ帰ろーや。おさむ君さそって凧揚げすんねん。

ゆかちゃん達は、もう羽根つきしとるやん。僕たちも新しい凧あげるでー!。

ぼくのは青い凧や!おさむの赤いのより高くあがっとる。頂上のお稲荷さんまで届くほどや。今年も絶好調で

「あけましておめでとうございます」

今年もよろしくや!



Title:「お稲荷さんのお正月」

Number: 12

September 2016 - March 2017


--- NOTE ---

お正月に飾るジオラマが作りたくて、初詣をテーマに制作しました。どこの設定でいこうか悩んだですが、京都出身の私はジオラマ映えがしそうな伏見稲荷の千本鳥居を作りました。小さい鳥居の量産化はうまくいったのですが、

デフォルメした山に参道を作って鳥居を配置するのは思いのほか苦労しました。特に曲がり角)。もちろん電車は京都市電。昔は稲荷線が走っていたんですよ。今は市電は走っていませんが、市電最後の日はカメラを持って自転車に乗って夜遅くまで最後の雄姿を写真に記録しました。懐かしい時代です。でも路面電車は京都には残しておくべきでした。観光資源としても、京都にマッチしていると思いますから。

(土台の獅子舞と臼杵はスタイロフォームの彫刻です)