箱根八里

私は安藤広重の浮世絵が好きだ。

特に東海道五十三次は傑作だろう。

小さいころ永谷園のお茶漬けのりに1枚付いてきて、20枚だっただろうか。。集めて送れば、五十三次のセットを送ってきてもらえた。子供心に必死で20枚集めて、セットを貰ったのを覚えている。


私は会社から帰宅した夜に、彼の作品集から箱根宿の絵を見たとき、どうしても行きたいという衝動に駆られた。明日は金曜日なのだが青空が広がりそうだ。

風邪をひいた?

ということにして休んで行ってみたくなった

こうして金曜日の朝一番のロマンスカーに乗るため、新宿駅に向かった。プリントしたこの絵をに丸めて。

都内からの箱根へのルートはやはりこれだろう。時折見える富士山を眺めながら列車は小田原を過ぎて、ロマンスカーにはしんどい勾配を登って箱根湯本についた。

私は一気に箱根登山鉄道には向かわない。一旦改札を出て箱根の旅には欠かせない「旅のお供」を買いに行くからだ。それは「湯もち」というお菓子だ。ふわふわの餅の中に柚子羊羹が細かく入っている和菓子がとっても好きなのだ。これを旅のお供にして、ロマンスカーからの接続を外して箱根登山鉄道に向かった。

とってもかわいい電車の箱根登山鉄道は 実は80‰(パーミル)もある日本一の急勾配をノーマルで走ってくれるパワフルな鉄道だ。この列車でしか見れない景色を見ながら、そしてスイッチバックでの乗務員の入れ替えを楽しみながら、少しずつ上っていく列車がいとおしい。

終点についた列車の次はケーブルカーに乗り換える。より急勾配を登るケーブルカーに乗り、上から降りてくる離合ポイントですれ違うのを楽しみながら、登り下りの列車が一本のケーブルで結ばれて、バランスをとっているのを感じながら小さくなる下の風景を楽しんでいる。

次は大きな谷を渡るロープウェイだ。東京近郊に登山を楽しめる観光ルートが古くから開発されたことに、感謝しなければならないだろう。しかし、実際の私は、ロープウェイにに乗って、黒たまごを食べたい衝動に駆られていた。

黒たまごも温泉井戸群も楽しんだところで、安藤広重の舞台である箱根を目指して出発だ

箱根の関所についた。。

私が見たい世界は安藤広重が見た、あの浮世絵の風景をどうしても見たかった。ここじゃないかといわれる山の展望台を目指して上ってきた。ああ、これが安藤広重が見た箱根だったんだろう。険しい山を表現している大胆な色彩が実際の風景を見ても、伝わってくるような景色だ!

目の錯覚だろうか。。箱根八里の天下の嶮を歩く、藁傘を被った人が見えるような気がする。人のいないこの辺りは、江戸時代にタイムスリップしているのだろうか。。

私は、「湯もち」を食べながら、200年前の江戸時代に気持ちを寄せながら、昭和の時を生きていることを実感していた。

サボって箱根に来たんだけどね。。

Title:「箱根八里」"Hakone Hachiri"

Number: 14

製作期間:Sep 2017 - Aug 2018

--- NOTE ---

テーマとして箱根登山鉄道を選びたかったが、多くの人が取り上げたテーマなので、何か遊びを入れたかった。私のジオラマはイメージデフォルメのジオラマなのだが、安藤広重の東海道五十三次の箱根はまさにイメージをデフォルメした浮世絵じゃないかと。彼の描きたかった風景を立体にするとどうなるのか挑戦してみたかったのだ。